早い時間に横浜FMが先制して、それを最後まで守り切った1-0。形だけ見れば、前回の対戦(昨年の第26節/ニッパ球)と同じパターンだが、その中身に関しては印象がかなり異なる清水のホーム開幕戦だった。
横浜FMは前節の開幕戦とまったく同じスタメン。清水のほうは、攻撃陣に変化はないが、ボランチに出場停止明けの村松大輔が入り、センターバックには新加入のヤコヴィッチが初先発。そしてカルフィン ヨン ア ピンが左サイドバックに移るという形で、守備陣にマイナーチェンジを加えた布陣。ただ、今季初先発が2人いた影響か、ホーム初ゲームという緊張感からか、立ち上がりから清水のほうは攻守にミスが目立ち、横浜FMのほうは落ち着き払って試合に入ったという差が目立ち、横浜FMのペースでスタートした。
清水としては、その時間帯を耐えて、徐々に自分たちのリズムを作っていきたいところだったが、13分にボランチ富澤清太郎のロングキック1本で左の齋藤学に裏に抜け出され、簡単に先制点を与えてしまう。この場面、齋藤を大いに警戒していた右サイドバックの吉田豊が、ボールの目測を誤って易々と突破を許してしまった、非常にもったいない失点だった。
一方、横浜FMの側から見れば、「スカウティング担当がしっかりと分析して、相手のDFラインのギャップをどう突くかというところをチームとして狙っていた」(樋口監督)という意識から、立ち上がりから清水の高いDFラインの裏を狙うという姿勢が明確に表われていた。その狙いが先制点につながったわけで、まさに思惑通りというところ。
そのため、横浜FMのほうにはさらに余裕が出て、無理せずゲームをスローダウンさせながらボールをつなぎ、ポゼッション時間を長くしていく。プレーメイカーの中村俊輔も、ボランチの位置まで下がってボールを受けることが多く、球際に強い清水の2ボランチのプレスを避けつつ、前線に効果的なボールを入れるスキをじっくりとうかがっていった。また、藤本淳吾が加わってボールを確実にキープできる選手がまた1人増え、そうした選手たちが無理せず精神的な余裕も持ってキープすれば、当然ミスも少なく、清水のほうは思うようにボールが奪えない状況に陥ってしまう。
逆に清水としては、狙い通りにボールが奪えなければ、なかなか自分たちのリズムが出てこない。また、うまく奪えた場面があっても、無理をしていない横浜FMのほうはバランスを崩していないため、奪い返しに来る切り替えも早く、なかなか前にボールをつなげない状況が続いた。そうなると、パス回しのリズムもなかなか向上せず、攻略の糸口が見出せないまま、前半45分が過ぎ去っていった。
後半に入っても、その流れは変わらない。清水サポーターから見れば憎らしいほど余裕綽々で試合を進めていく横浜FMに対して、清水は早い時間(後半12分)に村田和哉と河井陽介の2人を同時投入しても流れを変えられず、自分たちの形を作れないまま時計の針だけが進んでいった。そして後半32分には、キャプテンの杉山浩太が2枚目のイエローカードを受けて10人になってしまい、ますます苦しい立場となった。
そんな清水だったが、最後の数分間だけはホームの意地を見せる。10人になっても終盤の運動量では横浜FMに勝り、ロングボールも交えてなりふり構わず前へ前へと攻め込んでいったアディショナルタイムに、ロングスローとカウンターで2つのビッグチャンスを迎えた。そこでシュートを放ったのは、どちらもエースの大前元紀だったが、1本目はGK榎本哲也のビッグセーブに阻まれ、2本目はポストをかすめて右に外れた。
そして、その後のCKがクリアされたところで無念のタイムアップ。前回の対戦では、同じ1-0でも内容では清水が完全に上回っていたが、今回は横浜FMに試合を完全にコントロールされ、スコア以上の完敗で横浜FMに対して4連敗を喫した。
これで開幕2連勝となった横浜FMは、「相手のサイド攻撃にもうまく対応できたし、1-0だけど狙い通りのゲームができたと思う」(藤本)と手応えも十分。その藤本と伊藤翔という元清水の新加入コンビも、開幕したばかりとは思えないほどよく機能している。この良い流れを、水曜日(12日)のACLの試合(広州恒大戦)に生かせるかどうかが注目される。
一方、清水のほうは、今年は期待も大きくスタンドも大入りだった分、内容と結果に対するショックが大きかった。ただ、自分たちのサッカーができなかった中でも、それほど多くの決定機を作られたわけではなく、カウンターで追加点を奪われることもなかったのは、ヤコヴィッチが最終ラインに加わった中でポジティブな要素と言える。そのうえで最後の最後に強い気持ちを見せたことも収穫のひとつ。ラスト2本の決定機のうち1本でも決まっていれば、価値ある引き分けとなっていたはずだ。
ただし、清水サポーターとして冷静に見守らなければならないのは、攻撃のリズムが出なかったことが、この試合だけの問題かどうかという部分だろう。「1人1人の距離感が遠かったし、パスコースも少なかった」(平岡康裕)というのは、清水が良くないときによく見られる現象だ。勇気を持ってボールを受けに動く選手が少なく、パスを出す側も思い切りが良くない。チーム全体として横浜FMのような自信を持ったパス回しが見られず、ミスを恐れて、逆にミスが多くなってしまうという悪循環に陥っていた。そうした問題点を早期に改善できるのか、次のC大阪戦での要注目ポイントとなる。
以上
2014.03.09 Reported by 前島芳雄













