F東京 2 - 2 市原(19:04:味スタ)入場者数20,436人
「ジェフは死んだところから蘇った。人生では蘇ることはないが、サッカーではあることだ」。数々の名言を残してきたオシム監督のこの言葉が、この日の市原のすべてを物語っている。
前節の鹿島戦を落とし首位から陥落した2位の市原にとって、3位・F東京とのアウェイでの一戦は、今後の優勝争いを占う上で、さらにファーストステージ3位という好成績がフロックかどうか、本当に強いチームなのかどうかを見極める上で、重要なゲーム。
しかし、タフネスが自慢のはずのチームが厳しい残暑に参ったわけではないだろうが、全体的に動きが重く、攻守の切り替えが遅い。その分だけ中盤のパスコースはつぶされ、最終ラインから前線にロングボールを放り込むだけの単調な攻め。エース、崔龍洙を出場停止で欠いたこともあって、攻撃に迫力を感じられない。
すると18分、F東京の宮沢にクリアボールを拾われてミドルシュートを打たれると、クリアを図った中西の頭に当たったボールは“絶妙な”コースを描いて自陣ゴールに吸い込まれる。その後も中盤を思うようにコントロールできず、逆にケリーを軸に石川と戸田の両サイドからスピーディな攻撃を仕掛けられ、流れは明らかに東京にあった。39分には、ショートコーナーから戸田に2点目を献上。点差以上に重苦しい空気が、市原ベンチに垂れ込めた。
前半を終えて2−0。市原は2001年4月29日以来、2年以上も東京に勝っていない。しかも今季のF東京は7勝2分けと、ホームで絶対的な自信を持つ。崔龍洙不在で攻めあぐねる市原に、こうしたデータを重ね合わせると、どう見ても勝ち目はないと感じられた。“死んだ”のである。
オシム監督は後半開始とともに、前半ほとんど“消えていた”トップ下の羽生を下げて、184センチの長身フォワード巻を、さらに後半22分には最終ラインの茶野に代えて、フォワードの林を入れて必死の攻撃を仕掛ける。
しかし、それは原監督も織り込み済み。19分に疲れの見えたベテラン三浦を下げて浅利を、その7分後には石川を下げて守備の強い藤山を投入して、逃げ切りを図った。
原監督が「後半15〜20分をしのげば勝てる」と話していた時間帯。市原は敵陣ゴール前にひたすらクロスを放り込むが、“東京タワー”ジャーンがことごとくはじき返す。リーグ最少失点と鉄壁の守備を誇るF東京に、隙は見られなかった。
ところが、市原の「これでもか!」というほどの粘り強い攻撃が、F東京ディフェンス陣に一針の穴を開ける。36分、「自分の持ち味が出たプレーと」佐藤が自賛するドリブルでペナルティエリア内に切れ込むと、F東京は堪えきれずに倒してPK。これをサンドロが冷静に決めて1点を返すと、この日最大の見せ場は終了2分前に訪れた。
山岸が右サイドから上げたクロスを坂本が折り返し、林が「思い切っていくことだけを考えて振り抜いた」という左足のシュートで、F東京のネットを揺らして市原が土壇場で同点に追いついた。
「前線からプレッシャーをかけ続ければ、相手のミスが出る。これはやることがないときの動きだが、それを『カミカゼ』というんじゃないですか」と、試合を振り返ったオシム監督。最後までしぶとく粘った市原が、“蘇って”貴重な勝ち点1を手にした。
以上
2003.9.14 取材・文 スポマガWORLD SOCCER
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