大分の地でサポーターとともに夢を追い続けた元指揮官が川崎を率いて再び大分の地に立つ。

石崎信弘監督。大分の挑戦はこの指揮官によってスタートした。志半ばにしてチームを去ったが、いまも大分サポーターはこの指揮官に感謝の気持ちを忘れない。この大会を最後に川崎から身を引くことが決まっている石崎監督にとっては最後のビッグアイ。監督もサポーターも様々な思いを胸に抱いていることだろう。

　また、石崎監督の後を受け、クラブの、サポーターの夢を実現させた小林監督も、最後のビッグアイになる。どうしても乗り越えられなかった勝ち点１の壁を堅守速攻で打ち破り最高峰のリーグにチームを押し上げた手腕にサポーターは感謝の気持ちを忘れない。2001年の柿落としでの対京都戦、J1初勝利となった対G大阪戦、J1残留をかけて激しい戦いを繰り広げた対仙台戦等々、ビッグアイで数々の名勝負を残した。そして、この試合を最も記憶に残る試合にしたいのは誰もが同じ気持ちだろう。

　川崎の選手たちも特別な思いを抱いているはずだ。石崎監督と過ごした３年目、チームは最もJ1に近いところまでたどり着いた。わずかに夢には届かなかったが、やり通したサッカーに間違いはない。それを証明するためにも天皇杯では上位へ勝ち進まなければならない。そして、勝ち進むことが、チームを去る指揮官や１年間に渡って支えてくれたサポーターたちへの恩返しもになる。いつものように高い位置からのプレッシングサッカーと攻守の切り替えの速い攻撃で大分トリニータに挑む。

　迎え撃つ大分も一歩も引けない。今シーズン最後のビッグアイでの公式戦。小林監督が指揮をとる最後の大会。苦しい戦いを続ける中、どこにも負けない大声援を送ってくれたサポーターたち。勝たなければならない理由は山ほどあるが、負けてもいい理由などどこにもない。勝ち進んでこそ、来シーズンへの課題が整理されていく。

　それぞれの思いを乗せた戦いは14日13:00キックオフ。ビッグアイは、いつも以上の熱気で包まれることだろう。好ゲームを期待したい。

2003.12.13 reported by 中倉一志

以上