昨年10月のルーマニア戦(ブカレスト)以来の柳沢敦(サンプドリア)のゴールに、三都主アレサンドロ(浦和)の追加点、途中出場した中村俊輔(レッジーナ)の存在感……。彼らの活躍で何とか勝ったジーコジャパンだったが、1週間後のオマーン戦(埼玉)に向け、数々の不安材料を残した。
日本代表対イラク代表の国際親善試合が、「イラク復興事業」の一環として12日、夜19時20分から東京・国立競技場で行われ、日本が2−0で勝利した。だが、前半からイラクの激しいプレスに遭い、パス回しのミスを連発。チームが空回りし続けるなど、1週間後に迫った2006年ドイツワールドカップアジア1次予選を目前にして「完成度の低さ」を露呈してしまった。
欧州からいち早く帰国した柳沢や中村に対する人気と、10度近くまで上がった気温のせいか、国立には3万8622人の観衆が集結。大勢のサポーターに後押しされた日本代表は予選前最後の調整試合に挑んだ。必勝を期したジーコ監督は、GK楢崎正剛(名古屋)、DF(右から)山田暢久、坪井慶介(ともに浦和)、宮本恒靖(G大阪)、三都主、ボランチ・山田卓也(東京V)、遠藤保仁(G大阪)、攻撃的MF・藤田俊哉(磐田)、小笠原満男(鹿島)、FW・柳沢、久保竜彦(横浜)というイレブンを先発起用した。
一方のイラクは3−5−2。190cmのセンターバック・ジャシムら大柄な選手がズラリと並んだ。戦争が終結し、自由にサッカーができるようになった彼らからは、高いモチベーションが感じられた。
そんなイラクに日本は押されがちになる。攻撃のビルドアップが遅く、ミスも目立つ。効果的なパス回しも少なく、なかなかボールをペナルティエリア内へ運ぶことができなかった。柳沢と久保の2トップのコンビも今ひとつ。イライラする展開に追い討ちをかけたのが、山田卓の負傷。試合開始15分で福西崇史(磐田)と交代することになったが、ピッチには不穏な空気が広がった。その直後、堅守を誇る坪井が相手FWにボールをプレゼントするという信じられないミスを冒してしまう。これは楢崎の好セーブで事なきを得たが、坪井のプレーに象徴されるように、前半の日本は攻守がまるで噛み合わず、覇気も感じられなかった。
「立ち上がりの入り方が悪すぎた」と中盤の要・小笠原が言えば、「相手のプレッシャーが強く、受け身になってしまった」と宮本も反省しきり。不甲斐ない戦いぶりに、日本サッカー協会の川淵三郎キャプテンも激怒。「戦術どうのこうのより、戦う姿勢が感じられない。イラクの方が激しい闘志で戦っていた」と、ピッチ上の選手をバッサリ斬った。
0−0で迎えたハーフタイム。宮本を中心に「サッカーは戦いだ」と再確認した選手たちは、後半になってようやく調子を取り戻す。そして後半2分、左サイドを駆け上がった三都主のクロスに反応した柳沢がヘディングシュート。これが見事にゴールネットを突き刺し、日本は待望の先制点をモノにした。サンプドリアではアウトサイドで起用され、ここ最近は出場機会もほとんど与えられなかった柳沢だが、FWの意地とプライドをやっと見せることができた。
イラクの体力も落ち始め、先制後の日本は完全にゲームの主導権を握った。9分には右サイドの山田暢からのクロスに久保が頭で合わせ、ここに柳沢が飛び込むなど、不発だったFW陣も徐々に息を吹き返していった。
さらにチームを力づけたのが、後半27分からピッチに立った中村。この日朝、帰国したばかりの「超強行日程」にもかかわらず、確実に中盤を落ち着かせ、精度の高いクロスボールを何度か前線に送った。疲労性腰痛に苦しみ、セリエA公式戦から3ヶ月も遠ざかった彼は、つい先週末に復帰を果たしたばかり。代表ゲームに至っては、昨年10月のルーマニア戦以来という久々のプレーだったが、ブランクをほとんど感じさせなかった。
中村のプレーに触発されたのか、三都主のオーバーラップも目立ちはじめた。そして39分、中村からボールを受けた彼は、久保と巧みなワンツーからゴール前に侵入し、左足シュート。2点目をゲットした。本来の持ち味である攻撃センスを発揮できたことで、彼は嬉しそうな表情を浮かべた。
試合は2−0で終了。日本は何とか帳尻を合わせることに成功した。けれども、前半の戦いぶりを見ていると、オマーン戦は非常に心配だ。どんなに個人技が高く、クレバーな選手が揃っていても、戦う気持ちを出せずにミスばかり連発していては、勝利も逃げてしまうだろう。
マレーシア戦同様、「明確な攻撃の形」を見せることもできなかった。スピーディーなボール回しから攻撃を組み立てるのが現代サッカーの基本だが、イラク戦の日本は1人1人がボールを持ちすぎ、攻めに時間をかけすぎた。結果、カウンターを食らい、大きなピンチを招いていた。今一度、原点に戻ってシンプルにプレーすることに徹するべきだ。
守備陣のイージーミスも極力減らさなければならない。イラクに決定力がなく、GK楢崎の好セーブが光ったからよかったが、もう少し強力なFWがいたら2〜3点は奪われていただろう。この不甲斐ないチーム状態では、ドイツはおろか、最終予選進出も危ない。
この苦戦をいい教訓にして、オマーン戦では「心・技・体」の揃ったゲームを演じ、勝利を勝ち取ってもらいたい。
2004.2.13 Reported by 元川悦子
以上
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