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【日本代表−イラク代表戦レポート】二つの試合から見えてきた課題(04.02.13)

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 イラク代表との試合が始まって、二つのことに驚かされた。ひとつは、思いのほか組織されたイラクのサッカーだった。正直な話、試合が始まる前までは戦争を終えて、混乱が続く国であり、まともにサッカーができているはずがない、という予断を持っていた。個々の能力も、サッカーの内容もアマチュアレベルだろうと予想していた。その予想が当たったのは、個人能力で劣る選手が数名いたという事実に限定され、サッカーの内容としてはイラクはよく組織された立派なチームだった。

 驚かされたもうひとつの事実は、機能しなかった前半の日本の攻撃だった。ゴールラインから30m前後離れたエリア(ペナルティエリアから15m程度のエリア)にまではボールは持ち込めるのだが、代表はそこでリズムを失ってしまった。パスコースを探す間に無駄にドリブルをしてしまい、最後にはアプローチされてバックパス、という場面が頻発した。新潟の反町監督が使っていた用語を拝借すれば、ノッキングを起こしていた、という状態だった。

 たとえば宮本は前半を振り返って「相手のプレスをもろに受けてしまった。もう少し早くボールを放せばよかったが、うまくいかなかった。そういう中で、カウンターを受けた」と印象を述べている。ただ苦しんだ前半を終えたハーフタイムに「相手が前から来ているので、後半になれば落ちてくるだろう」という冷静に対応していたことを明かしている。そしてその読みはあたった。

 日本が均衡を破ったのは、前半には見られなかったパスでの連携と、相手のDFの裏に走りこむ動きが重なった直後だった。47分の柳沢のゴールは、小笠原からタテの三都主へと出た鋭いスルーパスが決め手だった。このゴールがプラスに働いたこともあるのだろうが、後半の日本代表は、前半にノッキングを起こしていたエリアでもパスができるようになり、リズムを取り返したように見えた。ただこれは、日本代表が修正能力を発揮した、と諸手をあげて喜べるものでもない。相対的に見てイラク代表の運動量は後半に入って落ちており、守備の出足が鈍くなった印象があった。プレッシャーが弱ければそれだけパスコースを探す余裕がでてくる。

 ただ、その一方でイラクの後半の攻撃は鋭さを増していた。特にトップの9番ラザク・モサの動きは脅威だった。高さと強さにドリブルで仕掛けられる器用さを併せ持ち、日本ゴールを脅かした。

 日本は攻めていたが、イラクの同点ゴールの可能性も内包していた試合を決定付けたのは、84分の三都主のゴールだった。流れるようなパス回しの始まりは、藤田に代わって72分からピッチに立った中村だった。中村から三都主へ大きなパスが出ると、ドリブルでゴール前に持ち込んで久保とのワンツーパスを決める。DFラインの裏に抜け出した三都主が久保からのリターンをもらうと、GKとの1対1を冷静に流し込んだ。

 数字上は2-0の快勝。しかし無得点に終わった前半の内容は、このチームの行方に警鐘を鳴らすものだった。日本は膿を出さざるを得なくなったが、このタイミングだったのは幸運だったといえるだろう。

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 マレーシア戦では、ゴール前を固めようとする相手をいかに崩すかが試された。スペースのない試合展開の中、パスコースがほとんどない状態で、ドリブルを多用せざるを得なかった。試合には勝てたが、内容的にはリズムを崩されてしまった。

 イラク戦では、プレスの早い組織されたチームとの戦いをシミュレートできた。アタッキングエリアに入る前の段階で、ノッキングしてしまい、攻撃は単発に終わってしまった。結局、その修正にはハーフタイムまで待たなければならなかった。

 二つの異なるスタイルのチームと戦い、そして図らずも同じ課題が浮き出てきた。つまりパスコースを作らせてもらえない相手に対して、いかにしてパスで崩すのか、という問題だ。それにはチームとしての連動性を高める必要があると考える。つまり攻撃時における決まりごととしてのオートマチックな動きを高度化させる必要があるということだ。

 ジーコ監督は日本人選手の能力を信頼しており、事態の推移を楽観的に見ている。ただ、代表チームに残された時間はあまり多くはない。ドイツに向けた日本の戦いは、いよいよ18日から始まる。

2004.2.13 Reported by 江藤高志

以上

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