今日の試合速報

チケット購入はこちら

J’s GOALニュース

一覧へ

【日本代表vsオマーン代表戦レポート】重なるアクシデントと冷静なシュート(04.02.19)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 前半の30分に中村がPKをはずした時も、それほど悲観したわけではなかった。逆に「もうしばらく緊張感を楽しめる」と微妙に喜びすらした。7年ぶりのワールドカップ予選だったとはいえ、まだまだ心には余裕があった。

 何しろ相手は若かった。先発の11名の平均年齢が20.3歳。そのうち19歳の選手は5名を数え、国際大会で言うところのユース代表(U-20)や五輪代表(U-23)のカテゴリーに属す選手しかいないチームだった。対する日本代表はヨーロッパで活躍する選手も含めて脂の乗り切った世代であり、数多くの実績を積んできた、まさに最強チームだった。さらには舞台も1次予選だったこともあり、どこかに「勝てるだろう」という空気が流れていた。ところが日本は苦戦した。オマーンの固い守備を前に、攻撃の糸口を見つけられなかった。

 オマーンは日本の2トップと中田、中村にきっちりマークをつけた。たったこれだけの対処で日本の攻撃は機能不全を起こした。時折ピッチの横幅をフルに使ったサイドチェンジからチャンスメイクしたり、稲本、遠藤の両ボランチの攻撃参加からシュートまで持ち込む場面もあった。しかしシュートの精度が悪く枠を捉えきれず、枠を捉えても勢いがないものばかりだった。

 前半を終えた直後に巻き起こったブーイングが、試合内容を象徴していた。

 ジーコは後半の頭から柳沢に代えて久保を投入してきた。これはヒットだった。久保のファーストタッチとなった後半46分(後半1分)のヘディングシュートは、完全にDFとの競り合いに勝って、頭ひとつ飛びぬけた状態で放たれた。久保はその後も精力的に動き続け、後半の45分間に数えたシュートは4本に上った。これはこの日の日本代表選手の誰よりも多い数字だった。

 久保の登場は日本にとっての希望となった。たとえば53分の高原のヘディングシュートや、70分の中村のシュートなど、久保が絡んだところにチャンスが生まれた。そうしたいくつかの決定機を逃しながらノーゴールで時間は進み、スタジアム内に焦りの空気が流れ始める。試合終盤の雰囲気について稲本は「最後の方は、時間がたつにつれて緊張感が出てきた」と回想している。緊張感は焦燥感を生み、日本は攻撃が空回りしていく。もちろんそれは、アウエイで勝ち点1を奪えればいいオマーンにとっては願ってもない試合展開だった。

 オマーンにとってある程度日本に攻められるのは想定の範囲内のことだったはず。攻め込ませておけばカウンターも効き目が上がる。特に20番のイマド・アル・ホスニは坪井を置き去りにするほどのスピードを持っており、彼へのロングボールを起点に日本は何度かピンチに追い込まれていた。サッカーでは起こりがちな、いわゆる「アクシデント」がいつおきてもおかしくはなかった。

 辛勝した試合後に山田は「サッカーは何があるかわからない。逆にやられたかもしれないですし。だからまずぼくら(守備陣)は失点しないことが大事だったと思います」と述べており、アクシデントの可能性についての認識と警戒は怠っていなかった。

 高原が奪ったPKも、高原本人が「PKではなかった」と述べており逆の意味でアクシデントである。蹴る人間が圧倒的に有利なPKが外れたのもアクシデントである。そして結果的に試合を決めることになった93+分(+はロスタイムの意)の久保のゴールもやはり想定外のことが起きた、という意味でアクシデントだった。

 久保のゴールにつながる場面では、選手本人にとってまったく無意識なボールの跳ね返りが続いた。まさに幸運なアクシデントそのものだった。しかし、絶好のシュートチャンスを得た久保は、その千載一遇のチャンスを目の前にして冷静だった。この試合、ファインセーブを見せてきたGKハブシはタイミングを外され、反応できないままボールを見送った。苦しみながらようやく手にできた1得点の味は、格別だった。

 70点。落第ではないが「優」でもない。しかし、勝ち点3を奪えたという意味で「可」ではなく「良」はつけられる。そういう試合だった。1次予選突破に向けて、大きな意味のある勝ち点3だったが、試合結果を見た時、今後の試合に対して安心感を持てないのも事実。せめて10月13日のアウエイでのオマーン戦までには、「優」のレベルにまで高めてほしいのだが…。

2004.2.19 Reported by 江藤高志

以上
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2025/12/21(日) 10:00 知られざる副審の日常とジャッジの裏側——Jリーグ プロフェッショナルレフェリー・西橋勲に密着