「まあ、こんなもんかな」
横浜F・マリノス(以下、横浜FM)岡田監督の試合後の第一声は簡潔だった。A代表を落選した選手と五輪代表選手たちが漸く合流。プロチームと試合するのが今年初めてなら、代表から帰ってきた選手達を交えての試合も今年初めて。そんな状況で迎えた練習試合の相手は宮崎キャンプから帰ってきたばかりの三浦新監督率いる大宮アルディージャだった。
横浜FMのスタメンはGK榎本(達)、DFが右から波戸、栗原、那須、ドゥトラ。MFは右に佐藤(由)、左に奥、中央で中西と遠藤が組み、2トップには阿部と清水。
対する大宮は不動の4-4-2システム。GK安藤、DFは右から若松、木谷、奥野、冨田、MFは右から安藤、金沢、斉藤、久永で、FWはバレーと高橋が組んだ。期待の新戦力であるダニエルは風邪でリタイアしており、この試合は出場せず。
35分×3本の変則形式で行われた試合の1本目は両チーム揃って拙攻が目立つ展開となる。「コンディションは悪くなかった」という岡田監督の言葉通り、MF奥、DFドゥトラら横浜FMの選手のプレー振りは決して悪いものではなかった。しかし、それがチームとしてなかなか噛み合うことがなく、個々のクオリティーの高さが得点機の創出という形で表れることは殆ど見られず。逆に各選手がサボることなくポジションを守って戦う大宮が、横浜FMの攻撃を効率的に潰すことに成功していた。頻繁に繰り出されたロングボールに対しても4枚のDF、4枚のMFが適切な距離を保ってクリアとカバーを徹底しており、相手の2トップが機能していなかったこともあって大きな破綻に至ることはなかった。三浦監督が「ディフェンス面は確実に向上している」と自信を深めたのも納得のパフォーマンスだったが、同時に「奪った後、簡単にボールを失ってしまう」と嘆いた拙攻が目に付いたのも事実。横浜FMの中盤はJリーグを代表するプレイヤーが揃っているので仕方ない面もあるが、効率的にパスを繋ぐシーンは殆ど見ることができなかった。左サイドの新戦力・久永辰徳も「徐々に馴染んできてる」と語ってくれたものの、まだまだベストパフォーマンスには遠いようで、チャンスに絡むシーンは皆無に近かった。結局、0-0で1本目は終了する。
2本目、横浜FMのスタメンはGK下川、DF右から田中、栗原、那須、ドゥトラ、MFは右に大橋、左に奥、中央が上野と遠藤。2トップは阿部に代わって安永が入った。対する大宮は木谷に代わってトニーニョ、冨田に代わり尾亦。中盤は右から安藤、喜名、氏家、盛田。2トップをバレーと横山で組んだ。
この2本目に入っても大宮・横浜FM共に拙攻が続く。これといったシュートチャンスもないまま、時間は推移していった。攻撃面では物足りなさが残ったが、メンバーが入れ替わっても大きな問題がないまま機能していた大宮の守備は興味深い。三浦監督が「11人のベストメンバーというのはない。17〜18人がベストメンバー」と語ってくれたように、少々メンバーを入れ替えても守備の組織が変わらずに機能するというのは、J2の長丁場を考えると大宮が持つ大きな強みと言えるかもしれない。
1本目以上に攻撃が機能していなかった横浜FMは20分に計5名の大量交代を敢行。ここで注目されたのは栗原に代わってCBへ入った松田直樹だった。一昨日に復帰したばかりという彼の帰還は、岡田監督にとってもサポーターにとっても、頼もしい限りだろう。もっとも、本格的なプレーとなると「A3は無理」で「開幕ギリギリ」ということだそうで、この日は15分間の試運転にとどまった。松田以外では、坂田、尾本、金子、山崎が投入された。
試合は2本目の28分に至ってようやく動く。金子→山崎と繋いだボールを右サイドで受けた田中が折り返し、坂田がヘッドで叩くという2本目最初の決定機はGK安藤が阻止。が、直後のCKで大橋が蹴ったボールを尾本が頭で合わせる形で先制点が生まれることとなった。新規投入組が巧く絡み合って生まれたゴールだったが、大宮のCK時の守備に問題があったことが主要因。大宮ベンチも2本目と3本目の間にこの点を強く注意していた。2本目はそのまま終了。大宮のチャンスらしいチャンスは氏家のミドルシュートをGK下川が横っ飛びで止めたシーンくらいだった。
3本目。スタメンは横浜FMがGK榎本(哲)、DFが右から加藤、金子、尾本。MFは右に田中、左に山瀬(ユースWボランチを大橋と天野(ユース)で組み、トップ下に山崎。2トップには坂田と北野を配した。この布陣はACLを想定してのもの。金子のCBは意外な印象を受けるが、岡田監督に言わせれば「他に誰もいないから」ということになる。「原と河合の負傷は痛い」という言葉通りにやや苦しい布陣であることは否めない。大宮の3本目はバレーを下げて、高橋を戻し、右MFに久永、その隣りに金澤を配置。右DFに斉藤を起用した以外は2本目と同じ。20分に尾亦が下がって、冨田が再投入されている。
この3本目で横浜FMの攻撃はもっとも停滞感があった。22分に、その2分前に投入された坂井(ユース)が北野からのパスを得意の左足でゴールへと蹴り込んだのだが、これが最初にして最後から2番目のシュートであった。3本目の大宮は盛田の左クロス、金澤のFKなどからチャンスも作っていたが、結局いずれも決めきれず。3本目は1-0で終了となり、トータルスコアは2-0。
敗れはしたものの、大宮にとってはまずまずの試合だったと言えるのではないだろうか。一方の岡田監督にとってこの試合はあくまでも本格的なチーム作りに向けた手始めに過ぎないようだ。目前に控えたA3に関しても、もちろんタイトルには拘るとしながらも「あくまでチーム作りの一環」と位置づけ、様々なバリエーションをテストする機会にすることを示唆。「世界規格」の「常勝集団」を目指すという王者横浜F・マリノスの熟成作業はまだまだ道半ばのようである。
2004.2.19 Reported by 川端暁彦
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