95年のJリーグ昇格以来、柏レイソルに注目し、チームの成長を見守ってきたが、この2年間はなぜか興味が失せていた。指揮を採ったマルコ・アウレリオ監督が、ニカノール、西野朗両監督の積み上げてきた「土台」を全く生かさず、あまりにも「独自性」にこだわったからだ。その結果として、チームは2年連続12位という憂き目に遭った。「強いレイソル」を目の当たりにしてきた者として、この不甲斐ない戦いぶりはショックだった。
実際、96年頃から始まった「強化5年計画」の中心だった酒井直樹(現柏育成部コーチ)、大野敏隆(名古屋)、北嶋秀朗(清水)らが次々とチームを離れた。昨シーズン末には右サイドのスペシャリスト・渡辺光輝(G大阪)も放出された。西野監督のもと、99年ナビスコカップ優勝をピッチで経験したのは、もはや明神智和、平山智規、渡辺毅くらいだ。
アウレリオ監督の「若手重視策」によって、永田充や近藤直也、谷澤達也ら20歳そこそこの選手たちは大きく伸びた。が、急激な若返りがチームバランスを崩したのは紛れもない事実。外国人にしても、かつてはカレカ、ミューレル、ストイチコフ、洪明甫と知名度と実力を兼ね備えた選手が揃ったが、近年の助っ人たちは芳しい結果を出せなかった。
そんなレイソルが、2004年シーズンを迎え、ようやく「原点」を取り戻しつつある。原動力となるのは、日立の生え抜きで「走るサッカー」を選手として自ら体現し、西野監督時代にコーチを務めた池谷友良監督。「やるからには優勝を目指す。だが12位だったチームを一気に強くするには、並大抵の努力ではダメだ。全員がピッチを走り回って、高い位置から激しいプレスをかけ、速い攻撃でゴールを狙うサッカーを実践したい」と、新指揮官は意気込みを新たにする。成長しつつある若手とベテラン、そして山下芳輝ら中堅をうまく融合し、バランスの取れたチームを作るのが今年のテーマだ。
鹿児島キャンプでも「ファイティングスピリッツ」「コミュニケーション」「アラート(神経を研ぎ澄ますの意)」の3つを掲げ、1年間戦い抜けるフィジカル強化に務めた。1ポジションに複数の選手を置いて競争意識を高めるなど、サバイバルも強いた。DF陣はベテランの渡辺毅、薩川、急成長する永田、近藤らに加え、ケガで長期離脱を強いられた中澤聡太、新加入の小峯隆幸らがしのぎを削っている。ボランチも明神に下平、昨年末のワールドユース(UAE)でブラジルの優勝に貢献した新戦力のドゥドゥ、そして若い永井俊太、落合正幸らがおり、層は厚い。FW陣も進境著しい玉田圭司、矢野貴章、宇野澤祐次らと、新加入の山下、ゼ・ロベルトが絡む格好になっている。
逆にやや人材不足なのが、両アウトサイドとトップ下。サイドに関しては、左に平山がいるが、右はスペシャリストがいない状況。池谷監督は今、明神を右サイドで試しており、メドがつけば起用する可能性は高い。増田忠俊も両方のサイドで使われそうだ。トップ下に関しては、リカルジーニョと谷澤がいるが、1年間通じて計算できるかというと微妙。新たな選手を育てる必要があるだろう。
キャンプではJ2京都パープルサンガに敗れ、コンサドーレ札幌に辛勝するなど、まだ6割の出来といったところ。あと3週間でいかに個々のレベルアップを図り、チーム完成度を高めるかがカギになる。いずれにせよ、過去2年間より面白く、ワクワク感の持てるチームになってほしい。それなりの期待は持てそうだ。
【新戦力・注目のキープレーヤー】
今季のレイソルは10人の新戦力を補強した。なかでも最大の注目はワールドユース得点王のドゥドゥだろう。私は現地で彼のパフォーマンスを見たが、攻守の要としてスケールの大きなプレーを随所に披露していた。伊達倫央コーチも「展開力と守備力を併せ持っている。ワールドユースでも実証しているが、セットプレー時の得点力の高さも魅力だ。課題は日本のサッカーにいかに慣れていくかということ。幸いなのは、彼はまだ20歳と若い。ワールドユースで対戦した谷澤のことも覚えていた。そういう意味でも早くチームに適応できると思う」と前向きに話す。
ドゥドゥの加入は、同世代の永田、近藤、谷澤、矢野らに大きな刺激を与えるはずだ。手も足も出ないまま、1-5で惨敗したあのブラジル戦を彼らは今も忘れていない。近藤も「ブラジルと同じくらいできないと世界では勝てない」と痛感したようだった。ドゥドゥと日々同じピッチでプレーすることで、1対1の強さ、速さ、創造力を高めていくことが、チーム強化につながる。彼ら若い世代がどのくらい成長するかは、今後のレイソルを占うといっても過言ではない。
新戦力としては、日本代表経験のある山下にも大きな期待がかかる。高校サッカーの名門・東福岡高からアビスパ福岡、ベガルタ仙台と渡り歩き、各年代の代表も経験してきた男は、タフなメンタリティと勝負強さを持つ。ボールもしっかり収まるし、クサビもうまい。動き出しの速さ、スピード、シュートの正確さも備えている。ここまでの練習試合では、玉田とコンビを組み、徐々に連携を強化しつつある。京都戦では山下が鋭い動き出しからすペースを空け、そこに玉田が飛び込んできてシュートといった形も何度か見られたという。能力の高い2人だけに、新たな攻撃パターンを生み出してくれるはずだ。
この他、新戦力ではFC東京のJ1昇格に貢献したDF小峯、アテネ五輪代表候補にも抜擢された経験のあるボランチ・茂原岳人、U-19日本代表のMF小林祐三など、飛躍の可能性を秘めた選手たちがいる。彼らをどう使いこなすか、指揮官の采配も興味深い。
一方、既存選手では、ボランチと右サイドという2つのポジションにトライしている明神に注目したい。レイソル下部組織からの生え抜きで、柏では一貫してボランチを担ってきた彼だが、トルシエジャパン時代は主に右サイドで起用され、2002年ワールドカップのピッチにも立っている。池谷監督もその経験があるからこそ、あえて新たな役割を与えているのだろう。
ジーコ監督就任以来、日本代表からも遠ざかりつつある彼にとっても、新たな挑戦を起爆剤にしたいところ。ボールを奪う、相手の攻撃の芽を摘むといったプレーには定評があるが、攻撃面はやや物足りない印象があるだけに、スケールアップを望みたい。
【開幕時の布陣予想】
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鹿児島キャンプの練習試合などを踏まえ、開幕スタメンを占うと、GKは実績のある南。DFは3枚で、真ん中に永田、右に渡辺毅、左に近藤。ボランチは新戦力のドゥドゥと明神。両アウトサイドは右に増田、左に平山という日本代表経験者を揃える。トップ下はリカルジーニョ、そして2トップは今やエースに成長した玉田と新加入の山下になりそう。
池谷監督が最も頭を痛めているのが右サイドだろう。キャンプでは渡辺光の後釜に明神をテストしたが、本職のボランチでも彼の存在は大きい。しかもドゥドゥのコンディションが微妙だ。2月18日に来日した彼は、1月のアテネ五輪南米予選の後、3週間もオフを取り、鹿児島キャンプもまともに練習していない。それだけに開幕に合わせられるか疑問なのだ。やはり明神はボランチを務め、増田が右サイドに入る形が有力だろう。
いずれにせよ、開幕の大分トリニータ戦でいいスタートダッシュを切れるかどうかだ。アグレッシヴな機動力サッカーで我々のハートを揺さぶってもらいたい。
2004.2.24 Reported by 元川悦子
以上
柏レイソル鹿児島県薩摩町キャンプレポート
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