水戸といえばリーグ戦の定位置は常に下位だった。伸び悩む順位に観客動員は上向かず、解散がうわさされることもあった。厳しい経営環境ゆえに自前の練習場などは望むべくもなく、時には野球場すら利用した。そんな厳しい状況にありながら、昨年の水戸の成績はJ2に驚きをもたらした。特に福岡、甲府、札幌という地力のあるチームとの開幕からの3試合で7得点を挙げて3連勝したのは衝撃的ですらあった。それ以降、常に上位に名前を連ね、長年辛酸をなめ続けてきた水戸サポーターを喜ばせている。躍進の原動力は新任の前田秀樹監督と、守備の要として入団してきた闘莉王だった。
前田監督は現実をよく見極めて、チームのスタイルを作った。前から出て行ってトップチームに真正面から勝負を挑んでもなかなか通用しない。それがわかっていたから闘莉王が統率する守備に磨きをかけて失点を防ぎ、鋭いカウンターから得点を積み重ねていった。それは決して華やかなやり方ではなかったが、水戸というクラブチームにとっては有効なやり方だった。
前田監督就任2年目の今季。闘莉王の退団もあって、水戸躍進の大きな武器となった「堅守速攻」というスタイルからの脱却を図っているところだ。キーワードは「ムービングフットボール」。連携を取り合い、ボールの動きを止めないように試合を展開することを意識するという。
プロである以上、結果は重要だ。しかしより多くの観客に喜んでもらうためには、結果とともに内容も必要となる。昨年のサッカーからさらに一歩進んだスタイルを模索し、チーム作りを進めている。もちろんそれは簡単なことではない。しかしむずかしい仕事に取り組み、それを達成する過程で得られる経験は、チームとしても選手個人としても貴重なものだろう。
闘莉王が昨シーズン中に強調していたことがある。それは前田監督と選手の間にできた信頼関係の話だった。
「とにかくよく話を聞いてくれるし、選手の意見を尊重してくれるんです」
それは決して珍しいことではなく、指導者としては当たり前のことではある。ただし、そうしたコミュニケーションに裏打ちされた一体感がチームを精神面から強くするのである。まだ新チームは成長過程にあるが、開幕時にどのようなサッカーを見せてくれるのか楽しみにしたい。
【新戦力・注目のキープレーヤー】
水戸にとって攻守にわたって活躍した闘莉王の存在感はとてつもなく大きかった。
するするっと前線に走りこんで浮きだまの競り合いに参加していたかと思うと、次の局面ではゴール前でラインを統率する。まさに攻守にわたってチームを支える大黒柱だった。その闘莉王がチームを離れた。チーム内に生まれた穴は大きいが、その穴を埋める活躍が期待されるのが、鳥栖から移籍の川前力也だ。鳥栖時代にも精力的なプレー振りで守備の中心となり、セットプレーでは虎視眈々ゴールを狙っていた。プレーそのものはもちろんだが、ベテランとして積んできた様々な経験を水戸に還元し、選手たちの成長を促すという効果も期待できる。プレー面もそうだが、選手としての経験の面でも注目する価値がある。
どうしても守備的にならざるを得なかった昨シーズンのスタイルから脱却するために、今期は磯山和司と小林康剛という上背のある選手を獲得している。昨年の水戸がカウンターに偏ってしまったのは、ひとつには守備を重視しなければならないというチーム事情があったが、攻撃面に目を転じると、カウンタースタイルをとらざるを得ないという事情もあった。つまり厳しいプレッシャーの中でボールを保持し、2列目以降の選手の攻撃参加を促せるだけの選手がいなかったのだ。またFWの選手にヘディングでの強さがなかったため、せっかくクロスが入ってもそれを生かすことができなかった。そういう弱点がこの両選手の加入によって払拭できれば水戸の攻撃パターンは広がる。また高さのある彼らに、スピードのある樹森といった選手を組み合わせた攻撃は観客を楽しませる躍動感を生み出すはずだ。
高さのあるトップの選手の加入を生かすという意味で言うと、C大阪から加入の左サイドバック伊藤にも注目しておきたい。いいクロスさえ入ればゴール前に高さはある。中央の高さを生かすためにも、彼の攻撃センスには期待したい。
【開幕時の布陣予想】
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基本となるシステムは4-4-2になりそうだが、試合相手によっては3バックでの布陣もありうる。2トップには小林と磯山が入りそうだが、この一角に樹森を絡ませた布陣も興味がある。左右のサイドハーフには磯崎、秦が入ることになりそうだが、磯崎のポジションを虎視眈々と狙っているのが修徳高校から入団のルーキー眞行寺。若さを生かしてアピールしたい。
ボランチは栗田はほぼ確定と見ていいが、谷川、関、小椋の3人を加えた4名で、2つのポジションを争っているところだ。
ディフェンスラインは左サイドバックの伊藤はほぼ確定。右サイドバックは木澤に新加入の須田が挑んでいる。
センターバックの2枚は、川前、吉本、柴小屋の3名にケガでリハビリ中の森が絡んだ4人の争い。経験を買えば川前は押さえておきたいが、この時点ではまだレギュラー争いは混沌としている。
GKはケガがなければ本間で間違いないだろう。
2004.2.26 Reported by 江藤高志
以上
2004シーズン 開幕直前・クラブ別戦力分析レポート
















