J2昇格後の3シーズンは9位、12位、11位と辛酸をなめ続けている横浜FC。
チーム立ち上げの苦労を共にしたサポーターの目も現実を見据えいよいよ厳しいものとなってきている。練習グラウンドの確保などチーム創設時から続く環境面でのハンディは否めない事実であるが、水戸、甲府のような同じ境遇にあるJ2クラブの躍進は横浜FCにとって励みとなると同時に上位進出が無理ではない現実であることを教えてくれている。
その中でJ2での指揮は2シーズン目となるリトバルスキー監督は、昨シーズン夏場の連戦で体力的に苦しんだ経験を踏まえ始動日から激しいフィジカルトレーニングを選手に課している。ある新加入選手が「こんなに走るチームだと思わなかった」とこぼしたように、徹底的なフィジカル強化は44試合を戦う長いリーグ戦で必ずや活かされるはずである。熱海、新居浜と続いた国内キャンプではトレーニングの激しさのあまり怪我人も相次いだが、シーズンインを控えそれぞれコンディションも回復。3次キャンプとなったタイでは効果的な戦術練習と同時に、レベルの高い相手との練習試合をこなしたことでチーム内の意識も高まってきている。
昨シーズンは退場(リーグワースト)・警告(リーグ2位)の多さによりメンバーが固定できず、試合によって戦い方を変えることで選手に迷いが生じるという悪循環を招いたが、今シーズンは昨年から急激に成長を重ねてきた内田、北村、吉武、菅野ら若い選手たちに年齢的には中堅どころの選手たちがポジション争いを繰り広げるといった「競争」の概念がチームに生まれつつあり、全体的なチーム力の底上げに繋がっている。特に昨年88失点とリーグワースト2位となってしまった守備面において、リトバルスキー監督は大幅なてこ入れを敢行。状況に応じたラインの上げ下げなど失点を減らす方策はシーズン前の練習試合で確実に効果を上げ始めている。またドイツ・デュイスブルクで監督を務めた際に師弟関係にあったスコットランド人のベテラン大型DFトゥイードの加入は守備面の強化のみならず、戦う気持ちを注入するチームの精神的な柱として大きな期待が寄せられている。
攻撃陣は昨年から加入した、元日本代表でもある城彰二が中心であることは言うまでもない。昨年はJ2特有の粗いチャージに苦しみ怪我も多く12ゴールに終わったが、キャプテンを任された今季は20ゴール以上の量産を狙う。自ら積極的に若手と
コミュニケーションを図り、首脳陣との橋渡し役を買ってでるなどチームの顔として高い意識を持った行動が目立っている。その城と2トップを組むことが予想される、鳥栖から新加入のジェフェルソンが攻撃ではキーマンか。爆発的な走力をベースにした献身的かつ効果的な動きは城のみならず得点能力が高い2列目の選手たちの活躍を呼び込みであろう。
今年のチームスローガンは「PLAYER'S POWER 〜勝利をつかめ〜 YOKOHAMA FC SPIRITS」。ここ3年間の苦しみでチーム関係者、及びサポーターは勝利の味を忘れつつある。しかし、W杯決勝を3度経験したリトバルスキー監督が昨年味わった屈辱を再び繰り返すとも思えない。現役時代同様、緻密な計算をもとにより現実を見据えたチームの不足を補いつつも、熱く逞しいサッカーを完成させることで勝利の喜びを感じさせてくれるであろう。勝利を追求した激しいサッカーが三ツ沢で爆発することを強く期待しよう。
【新戦力・注目のキープレーヤー】
今年の新加入選手は9名。昨年の城のようないわゆる「ビックネーム」の補強はない
ものの、弱点を補いさらに昨年までのレギュラー陣を脅かす効果的な補強で新シーズンへ臨むことになりそうである。
前述の通り、新外国人選手のトゥイードとジェフェルソンは即戦力として期待が高まっている。トゥイードは192cmの体格を活かし対人プレーには絶対的な自信を持っている。心配されたコミュニケーションの部分も日本語の習得を積極的に行うなど、練習試合を重ねる毎に周囲との連係が深まっている。チーム初のブラジル人選手となるジェフェルソンは昨年在籍したサガン鳥栖では30試合に出場し6得点を挙げている。体力的な面での不安からサブでの起用が多かった昨シーズンから今年は一変、厳しいトレーニングでフィジカル面の強化に成功し城と組む2トップで昨年のゴール数からの倍増を狙っている。J2屈指のディフェンスの裏に飛び出すスピード溢れる動きで、昨年は城に集中した相手のマークも分散させる効果も期待できる。
日本人選手の新戦力ではU-21、U-22など年代別日本代表候補にも名前を連ねた杉本倫冶、大友慧のアタッカー陣に注目すべきであろう。ともに22歳とまだまだ将来を嘱望される逸材で、杉本は左サイドから、大友は右サイドから効果的なチャンスを生み出す役割を期待されている。残念ながら杉本は怪我で出遅れ気味ではあるが、大友は順調にキャンプをクリアしレギュラー獲得まであと一歩のところまで来ており、彼の強気な性格はややもするとおとなしいとされていた横浜FCのチームカラーを変えてくれるという効果も期待できる。これまでの所属チームでは、高い能力を持ちながらも充分なチャンスを得られなかった2人だけに今季にかける思いの強さがチームの結果にも反映されるであろう。
GK陣は2人が新加入。大分のクラブ創設時からのベテラン小山健二、そしてJ1・東京ヴェルディ1969から柴崎貴広の2人である。昨年のシーズン途中からレギュラーポジションを獲得した菅野に危機感を持たせるだけでなく、レギュラーポジションをも狙える実力を備えた補強でポジション全体の底上げに繋がった。田北GKコーチも開幕直前までレギュラーを誰にするのか、嬉しい悲鳴をあげそうな状況である。
練習生から正式契約を勝ち取った左サイドバックの中島崇典、OSA(奥寺スポーツアカデミー)から加入の岩倉一弥、森戸壮介も年齢的には若いものの光る技術を持っている。練習でもベテラン選手に交じって積極的なアピールを続けるなど首脳陣からの評価も高まってきており、早い段階でチャンスが与えられるかもしれない。
新加入選手ではないが、今年のチームのキープレーヤーは昨年からレギュラーポジションを不動のものとした3年目の内田智也であろう。四日市中央工業時代から確かな技術と戦術眼には定評があったが、昨年からは強さも兼ね備えチームの柱となるべく選手まで成長してきた。今年、チームから与えられた背番号はエースナンバーの10、背番号に関しては本人は謙遜するもののチームを引っ張る意識も芽生えきており、彼の出来がチームの浮沈を握っていると言っても過言ではない。また、臼井幸平、小野智吉といった昨年コンスタントに活躍した「計算できる」選手たちが今年も怪我なくシーズンを過ごすことができれば、チームの総合力の部分では他チームに比べても負けないものとなってきており、一気に上位進出も見えてくるはずだ。
【開幕時の布陣予想】
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リトバルスキー監督が昨年同様に4-4-2のフォーメーションを採用することは間違いなさそうである。
GKは菅野、小山、柴崎が横一線の争い。仕上がりが早い、小山が一歩リードか。
DF陣はセンターバックはトゥイードと山尾の2人が起用されそうだ。そこに怪我から復調してきた眞中、河野が追う展開。左サイドは昨年チーム最多出場の小野(智)の起用が濃厚。右サイドは守備力にも定評がある早川の信頼が厚い。
MF陣に目を移すとボランチは昨年から唯一チームに残った外国人選手であるマシューと内田が一歩リードしているが、ユーテリティープレーヤの臼井も実力的には遜色ない。攻撃的なポジションには小野(信)、大友、横山、北村、増田など人材が揃ってきており、リトバルスキー監督も頭を悩ますところであろう。
FWは城とジェフェルソンの2トップで開幕を迎えることが濃厚。そこに大久保、吉武がどこまで割り込めるのかがポイントとなる。
2004.3.1 Reported by 小島 耕
以上
横浜FC、愛媛県新居浜キャンプレポート
2004シーズン 開幕直前・クラブ別戦力分析レポート
















