8月14日(土) 2004 J2リーグ戦 第28節
仙台 1 - 1 水戸 (19:04/仙台/17,214人)
得点者:'17 磯山和司(水戸)、'89 セドロスキー(仙台)
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3−4−3を敷いていた仙台にとって、攻守の生命線が「サイド」であることに疑いはない。サイドが完全に機能すれば、24節の甲府戦前半に財前の右と梁の左という両サイドハーフが見せたようなワイドな攻撃が生まれ、ゲームを支配できる。しかしこの試合、仙台が活かすべきサイドのスペースは、常に水戸の白いシャツで埋められていた。
水戸は人数をしっかりとかけて、DFライン後方のスペースを消すとともに、サイドでもサイドハーフがしっかりと戻ることで、仙台の選手につけ入る隙を与えなかった。さらにDFとMFの計8人が半ば二層のDFラインを、それもかなり低い位置で重ねるような水戸の布陣は、仙台のFW陣にスペースを作らせる(もしくは見つけさせる)ことをも困難にしていた。
そこに来て、早い時間の先制点である。前半17分、「ファーストタッチで前を向けた」と話す磯山の眼前には、ハーフウェーライン付近からゴールまで一直線のコースが開いていた。ボールの奪われ方も危険なものであった上に、疲労の影響もあってFWへのタイトなマークができなかった仙台の守備のまずさもあって、ドリブルでゴール前までスルスルと持ち込んだ磯山は、訪れたチャンスを確実にものにする。水戸にしてみれば、自らの期待するとおりのゲーム展開。
一方、仙台にとってこの先制点の献上は「最悪のシナリオ」の第一歩だった。水戸先制点を守るべく、さらに自陣に引いてきた。サイドでスペースが作れないため、財前も梁も高い位置で仕事ができない。左サイドの梁は、前半の残り15分あたりから水戸の右サイドハーフ関の戻りが遅れ始めたこともあり、時折深い位置でボールを受けることも可能だった。だが、右サイドの財前にとっては本当に苦しい45分だったに違いない。彼がこのポジションを務めて以来、ここまでプレーゾーンが低かったことは初めてではないだろうか。サイドという生命線失ったまま、前半は水戸の1点リードで終了する。
後半は仙台も、ただ手をこまねいていたわけではなかった。ベルデニック監督伝家の宝刀というべき3−3−3−1へとシフトチェンジ。サイドしか攻め手がなかった仙台は、前半から「使いたくても使えなかった」相手CBとボランチの間のスペースに人員を配したことでリズムを掴み始める。システム変更は、確かに効果を発揮しつつあった。
ところが、スコアは動かない。理由は2つ考えられる。1つはこの日仙台の選手は疲労の蓄積が明らかで、総じて身体が重かったこと。押し切りたい局面でのパスミスや判断ミスが続き、勝負の場面でのドリブル突破も精彩を欠いた。さらに象徴的だったのが、後半20分の佐藤のPK失敗。今シーズン一度もPKを外さなかった男が放ったシュートは、勢いなくゴール右を逸れて行った。
もう1つの理由はいささか結果論にもなるが、前田監督の勝負師ぶり。「サイド」から「中央」へと仙台が攻撃の比重を変える中で、守りの破綻はないと判断した監督は前半からのやり方をあえて変えなかった。監督会見で自らが語ったとおり、それによって後半、水戸もカウンターの切れ味を増すことに成功しているし、なによりあの場面で守備に手を加えては、対するベルデニック監督に戦術変更によるさらなる揺さぶりの余地を与えてしまっただろう。実際にその後の仙台は、選手交代以外に打開策を見出せなかった。
とはいえ、水戸にも課題がないわけではない。チャンスを多く作っていた時間帯での追加点は、チームとして試合を勝ち切れるようになる上で不可欠なもの。この試合でも、追加点を奪えなかったことと終了間際の失点は、1点差という状況が仙台に望みを捨てさせず試合終盤の猛攻に繋がったという意味でも、決して無関係ではない。
後半ロスタイム、セットプレーで上がっていたセドロスキーのシュートが枠に向かったところを手で防いだ柴小屋が一発退場。そのPKをセドロスキーが自ら決め、仙台が土壇場で同点に追いついた後で試合は終了するが、両チームに勝ち点1という結果は、この試合だけを見れば水戸にとって、シーズン全体を通して見れば激しい昇格争いをする仙台にとって、納得のいくものではなかったのだろう。その意味で、この試合は文字通り「勝者なきゲーム」であった。
以上
2004.08.14 Reported by 佐々木 聡
J’s GOALニュース
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