10月31日(日) 2004 J1リーグ戦 2ndステージ 第11節
広島 1 - 1 F東京 (14:04/広島ビ/10,556人)
得点者:'15 森崎和幸(広島)、'52 ルーカス(F東京)
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「引き分けではダメなんです」
絞るような声で、服部公太は言葉にした。4試合連続ドローはJリーグ新記録らしい。しかし、そんな新記録など、誰も欲してなどいない。広島の選手たちは、沈んでいた。まるで負けた後の試合のように、取材記者が集まった広島側のミックスゾーンは、静まり返っていた。
広島が勝てた試合だった。いや、勝たねばならない試合だった。それほど、前半の内容はF東京を圧していた。
そのきっかけは、セットプレイ。8分、森崎浩司がボールをプレイスするとみせかけてチョンとボールを浮かし、そのボールを森崎和幸がポンと蹴り上げて裏に出す。そこに走り込んだ小村が振り向きざまのボレーで合わせた。シュートはわずかに外れたが、これでF東京の選手たちは動揺してしまった。
その1分後、今度は森崎和がCKを大きくファーサイドに蹴り込む。ああ、ミスキックか、と一瞬思った矢先、そこに服部が猛然と走り込んでボレーシュート!完全に裏をとられたF東京DF陣は為す術がない。服部が放ったボールはポストを直撃、ゴールにならない。しかしこの2つのプレイで、F東京の守備陣は混乱してしまい、ミスを連発。14分、森崎浩のCKに対してもボールウオッチャーとなっている選手が多く、ファーサイドで森崎和をフリーにしてしまう。森崎和は落ち着きはらってボールをトラップ、逆サイドのネットに叩き込んだ。
広島は、この時間帯に、さらにたたみかけてゴールを狙いたい。先制し、中押しし、駄目押しする。勝負の原則である。まして、この時のF東京は、ピッチ内で混乱状態。パスミスは続くし、ポジションもバラバラ。ゾーンは伸び切り、それを修正できるリーダーも不在。苛立った石川が周囲に声を荒げるシーンなどもあり、F東京は内部から崩壊しかけていた。ここで2点目を広島が奪えば、水曜日のナビスコカップ決勝が念頭から離れないF東京の選手たちのモチベーションが一気に低下し、修正不能となっていただろう。
実際、ベットと森崎和を中心に中盤を支配した広島は、一気の攻勢をしかける。しかし、F東京の最後の砦・ジャーンと茂庭が広島の前に大きくたちはだかり、盛田やベットに対し強烈なプレスを敢行。深めのラインを敷いて粘り強く守り切った。この最終ラインの強さがF東京の頼りの綱であり、彼らはこの綱1本を必死でたぐって、圧倒された45分間を何とか1点でしのぎきった。しかし、雰囲気は悪い。ハーフタイムには声を荒げて議論する選手たちの姿があった。
一方の広島は、ここで思い掛けないアクシデントが起きていた。前半、相手と接触した森崎浩が目に異常を訴えた。周囲が白くなり視界がとれない、という。ハーフタイムの間に回復することを期待した小野監督だっだが、メディカルスタッフと相談の上、森崎浩の交代を決断。前節2得点でチームを救った大木を、急きょピッチに送り出した。
しかし、この交代が裏目に出る。もともと今週の練習でヒザを痛めて、コンディションに不安のある大木。しかも、森崎浩のアクシデントは突然のことであったために、当然、アップが不十分な状態でピッチに出ざるをえなくなった。フィジカルが決して強くない大木にとって、この準備不足は厳しい。
戦術理解度の高い大木は、さすがにいいポジションをとってボールを引き出す。しかしそこを狙ってF東京の守備陣がプレスをかけると、ことこどくボールを失ってしまう。何とか奪い返そうと大木は追いすがるが、F東京はそのあたりはよく訓練されており、スピーディな切り替えから長いパスを使って広島の最終ラインを脅かし、チャンスをつくる。その連続によって、F東京はすっかりと元気を取り戻した。その流れの中で生まれたのが、ルーカスの同点ゴール。この日、吉弘と服部によって石川と共にほぼ完全に抑え込まれていた加地のクロスも、確かに悪くない。しかし、ペナルティエリアの中でルーカスをフリーにしてしまったのは、守備陣がF東京の圧力に押され、冷静さを失っていた証拠だ。
前半45分間、広島はほぼ狙い通りのサッカーができた。しかし、たった一つのアクシデントが、広島のリズムを狂わし、F東京を蘇生させた。左サイドの鈴木が生き生きと走り回り、広島のゴール前を襲う。交代で入った馬場が、同じF東京U-18出身の梶山とのコンビネーションで、広島の最終ラインを引き裂きにかかった。
一方の広島は、吉弘を右サイドに回して鈴木を抑えにかかり、さらに「ユース世代最強のストライカー」と評価の高い前田俊介を投入し、3トップにして勝負を賭ける。しかし、F東京は前田のプレイを研究ずみ。「わざとスペースをあけてドリブルで誘いこみ、ボールを奪われてしまいました。ドリブルで勝負しているように見えて、ドリブルさせられている感じがしました」と、前田も脱帽の頭脳的な守備を見せ、広島に決定機を与えない。森崎和と服部を中心とした左サイドからは、何度かゴールの匂いを感じさせるプレイが続いたが、それも最後のフィニッシュに至る前に潰されていた。
結果は1-1。しかし、F東京の選手たちが口々に「負けないでよかった」と語り、原監督も「本当に危なかった」と語るなど、引き分けにある程度の満足を得ていた。F東京は、もしこの試合を落としていれば、水曜日に控えたナビスコカップ決勝に、精神的に大きなダメージをひきずってしまうところだった。だから、選手も監督も胸をなでおろしたのである。
一方の広島の選手たちは唇を真一文字に結び、悔しさを隠すことができなかった。それが、この試合における勝ち点1の意味の違いを物語っていた。広島にとって、勝てるチャンスは大きく広がっているのに、それを自分たちのミスでみすみす失っている試合が、ここまでどれほどあることか。
確かに負けなくなったのは成長の証と言えなくもない。しかし、勝てそうにない試合を引き分けに持ち込むのと、勝てたはずの試合を引き分けにするのとでは、まったく意味が違う。
選手も監督も、そしてサポーターも、ひたすら勝ち点3を願っている。共に喜びを分かち合いたいのにそれができない現実に、苛立ち、怒り、嘆いている。この袋小路を打破するために、一体何が必要なのか。ベットが出場停止となる次の名古屋戦までに、答えを見つけ出さねばならない。それができなければ、次のステップへチームは進めない。
以上
2004.10.31 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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