12月25日(土)第84回天皇杯全日本サッカー選手権準決勝
浦和 1 - 2 磐田 (15:04KICK OFF/国立)
得点者:後半26分 田中達也(浦和)、後半27分 藤田俊哉(磐田)、後半38分 中山雅史
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私見ではあるが、サッカーにはラブソングが似合うと思う。嘆き、悲しみ、怒り、そして喜びが詰まったサッカーは、よく人生にたとえられる。その人生の中のビッグイベントたりうる恋愛を歌った歌が、サッカーにはよく似合っている。
サッカー界にもファンの多いある人気グループの歌の中にこんな内容のフレーズがある。
「ぼくはただ、愛している人に、愛していると、歌おう」
歌手として生活する自分は、愛している人に歌でしか愛情を伝えられない。それは不器用な生き方なのだろうが、それでも歌い続けるんだというこの歌が、この日の両ゴール裏の姿とだぶって見えた。試合の流れに合わせた応援コールで選手たちを鼓舞する姿は、けなげに見えた。
そしてそんなサポーターの気持ちは選手たちには十分に伝わっていた。例えば中山雅史(磐田)は「相手のサポーターだとはいえお客さんが入っていてあれだけ盛り上がって。ぼくらはブーイングを受ける側なのかもしれませんが、その中でやれるというのはすごく幸せな事だと思います。それに負けない声援を、少ないですが、うちのサポーターも大きい声で後押ししてくれてたんで、その人達にも、という気持ちでやってました」と述べている。
愛するものへの声援は続いたが、客観的に見て、前半のサッカーは両チームとも慎重だった。前半が停滞した理由について、ギド・ブッフバルト監督は「準決勝まで来ると、どちらも決勝まで進みたいというところで、『リードされたくない』という気持ちが強かったと思う」と振り返っている。
相手を崩して得点を奪う場面というのは、ほとんどの場合、本来のポジションを離れた選手の動きが必要となってくる。バランスを崩しての攻めは、相手に付け入る隙を与えかねない。その怖さから、前半は中盤でのプレッシャーのきつい、静的(static)な試合内容だった。
3点が決まり、流れが一変した後半の中で、試合の行方を決定づけたプレーがあった。それは「自分の判断で」右サイドに張り出した永井雄一郎(浦和)のドリブル突破でも、その永井の突破から生まれた田中達也(浦和)のゴールでも、永井のポジションチェンジに対して自律的に判断し、菊地直哉をマークにつけた磐田の適応力でもなかった。
ブッフバルト監督が振り返る。
「分岐点は同点にされた場面。あの場面での集中力の欠如は残念だった」
ごくシンプルなプレーだった。先制ゴールを許した直後の磐田がボールをつなぎ、福西崇史にボールが渡る。このボールに対し、田中達也が軽いフィジカルコンタクトを仕掛けた。田中達也にしてみればゴール直後の危険な時間帯に、ゴールの喜びから頭を切り換えて前戦からの守備を心がけていたのだろう。そのごく軽いプレーに対して上川主審がファウルの判定。思わずレフリーを振り返ったその瞬間にプレーは再開されていた。
前半から同じようなプレーは散見された。ファウルをもらった直後の素早いリスタート。平均年齢28.2歳(ベンチ入り16人。ちなみに浦和は25.6歳)の老獪な磐田らしさがにじみ出ていた。そしてそれが勝敗を分けた。
ボールは、堀之内聖を従えてペナルティエリアに侵入しようとする河村崇大に渡った。冷静にポジションを取っていた山岸範宏は「ぼくはシュートコースを全部消したので、打ってくれれば逆にぼくに当たったんですけどね。まあ、ああいう形で折り返されてしまって」と悔しさをにじませた。
河村が出したマイナスのパスは、67分に名波浩に代わってピッチに立っていた藤田俊哉の足元に転がった。浦和の先制ゴールからわずか1分後。磐田が試合を振り出しに戻した。
この得点が浦和を混乱させ、試合をダイナミックに動かした。
「同点になった後、あわてて2−1にしようとした為に、われわれのやっていたサッカーを崩してしまった。そこを磐田がうまくついて逆転してきた」(ブッフバルト監督)
一方の山本監督は「とにかく1点差のゲームになるだろうということだった。90分で勝負が決まらないことも考えていた」と厳しい戦いを想定して試合に臨んでいた。そして指揮官のその姿勢が選手たちにも浸透していたのか、磐田は落ちついて試合を続けた。その差が、結果として出た。
延長を見据えていた山本監督は、78分にグラウから川口信男へと3枚目のカードを切っている。その川口が、83分に右サイドで起点をつくり、西紀寛→中山雅史(60分に前田遼一に代わって出場)とつなぎ逆転ゴールが決まった。
逆転してしまえば、あとは無理をせずに時計を進めるだけ。焦ってバランスを崩した浦和に対し、磐田は最後まで落ちついて対処し続けた。
決勝に進出したのはディフェンディングチャンピオンの磐田。一方、涙をのんだ浦和にも感謝の気持ちを述べておきたい。今季取材した浦和の試合はどれもおもしろかった。
ブッフバルト監督自ら「今シーズンの浦和の見せてきたサッカーは、非常に楽しいサッカーだったと思う。サッカーを多くの人に慣れ親しんでもらう為には、Jリーグに対しても貢献したと思う。そういうサッカーをしてくれた選手に感謝したい」と述べているが、その通りだと思う。おもしろいサッカーは海外にしかないという風潮があるが、Jリーグも捨てたものではない。それを浦和は証明してくれた。率直に感謝したいと思う。そして来年もおもしろいサッカーを見せてくれる事を期待している。
以上
2004.12.25 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
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