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【第83回全国高校サッカー選手権大会 準々決勝レポート(2)】盛岡商業の猛追を退け、国見が5年連続国立へ(05.01.06)

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第83回全国高校サッカー選手権大会 準々決勝
2005年1月5日
第一試合:国見 3 - 2 盛岡商
得点者:12分渡邉千(国見)、17分渡邉千(国見)、36分出崎(国見)、47分福士(盛岡商)、65分斉藤(盛岡商)
第二試合:鵬翔 0 - 3 市立船橋
得点者:24分鈴木(市船)、62分オウンゴール、78分壽(市船)
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 夢の聖地、国立競技場をかけた準々決勝が駒沢競技場と三ツ沢球技場で行われた。平日にもかかわらず三ツ沢には11,000人の大観衆が詰めかけた。

 第1試合で登場したのは5年連続ベスト4がかかる国見(長崎)と、初の国立へ勢いに乗る盛岡商業(岩手)。サッカー専用スタジアムにはバックスタンドの大きな声援が選手たちに直接届いていく。

 試合序盤、ペースの握ったのは王者、国見。前半12分、左サイドから渡邉三城(2年)がペナルティライン付近のほぼ中央にいた兄、渡邉千真(3年)に柔らかく丁寧なパスを送ると、ドリブルでDFをかわして先制点。これで波にのった国見は、5分後の前半17分に、右コーナーキックから、またも渡邉千が技ありのヘディングシュートで追加点。一気につき放しにかかる。中盤での早いチェック、運動量で盛岡
商業を圧倒する。そして、前半36分、中央でこぼれたボールを出崎升浩(3年)が巧みなコントロールでボールをキープし冷静に決め、3-0と試合を決定したかに思われた。

 しかし、あくまで選手権ベスト4をかけた戦いである。「毎回言ってるが、簡単なものじゃない。どんなドラマがあるか分からない」(小嶺忠敏国見総監督)。
 
 盛岡商業にはチームの全幅の信頼を得るエース福士徳文(3年)がいる。福士が点を取ってくれれば波に乗れる。その気持ちが、後半7分、福士に届いた。 

 やや混戦となったペナルティエリア手前で中野翼(3年)がボールを受けた瞬間、国見DFが中野に集中、そのスキを逃さずに福士がゴールライン際へ侵入し、そこへ強めのパスが送られた。福士は迷わず左足を振りぬいた。「点を取って、みんなが前を向いてプレーできるようになった。これはいけるなと思いました」(福士)。
 
 反撃の準備が整った。「相手は前半で3点取った。後半だけでも取れる」(福士)とハーフタイムに齋藤重信監督が選手達に伝えた言葉が真実となっていく。
 
 エースの4試合連続ゴールで国見に流れていたリズムを取り返した盛岡商業の気迫に、試合が決定したと立ち上がる観客が、階段付近で足を止め始めた。スタンドからの声援を背に受け、国見ゴールに果敢に挑んでいく。跳ね返されても、奪われても必死に足を動かし、福士へボールを託し続ける。それまで、圧倒されていた中盤でのボール支配を、高橋佑彰(3年)や山崎良介(3年)が素早く反応し奪い返す。そして後半25分。盛岡商業に待望の2点目が入る。FKからのこぼれ球を右サイドに走りこんでいた村上大心(3年)が回転のかかったクロスをあげると、それをGKがファンブル。こぼれたところを斉藤知志(3年)がつめて1点差に追い上げた。国見ベンチから激しく声をかける小嶺総監督の指示も選手たちに届かないようだった。流れは盛岡商業のまま、王者は追い込まれていく。後半35分、福士が起点となり中盤で流れるようなダイレクトパスがつながり、最後は、途中出場の13番田中大介がシュートを放つがGK正面。完全に息を吹き返した盛岡商業。しかし残り時間はもう、なかった。

「勝負の世界はこんなもの。楽勝はできない。それが人生」と小嶺総監督は5年連続の国立へ足を進めても、笑顔はなかった。それでも「点を取られたことは悔しいけど(マークしてた福士との)駆け引きとか、勉強になった」(藤田優人、3年)と苦しい勝利の中にも見出すあくなき向上心。いよいよ連覇が射程圏内に入ってきた。

 続いての第2試合は、攻撃の鵬翔対守備の市立船橋。
 
 優勝候補同士の戦いだったが、80分を通して、市立船橋が優位に展開するゲームとなった。

 これまで得点を奪えずに苦しんできた市立船橋。彼らを救ったのは昨年のOBのある言葉だった。「練習に来てくれて、お前らなら普通にやれば勝てるからって言ってくれて楽になった」。主将の渡邊広大(3年)はそう言って笑顔を見せた。
 
 試合序盤は、互いにディフェンスラインを高く保ちコンパクトに中盤を形成して激しいプレスをかけ合う激しい攻防が繰り広げられた。攻守の切り替えが早くスキのない展開にスタンドの観客も息を呑む。「いい感じでつなげていた」と鵬翔、松崎博美監督は手応えを手にしていた。しかし中盤での一進一退の攻防で、バランスを崩したのは鵬翔だった。

 前半24分、鵬翔のディフェンスラインが崩れたスキから市立船橋の榎本健太郎がゴール前で混戦。ドリブルで抜け出した鈴木智博(3年)が、市立船橋のファーストシュートを先制点につなげた。1点を取れば、ここからが『守りの市船』の真骨頂。高くなっていたディフェンスラインを下げ、トップに榎本を残して、鵬翔の攻撃のカギを握る興梠慎三(3年)を徹底に押さえ込んだ。「DFのバランスがよく、前でプレーできなかった」と興梠は振り返る。
 
 優勝候補筆頭に上げられていた昨年、市立船橋はベスト8でPKに散った。追加点が奪えていたら・・・。その思いはスタンドで応援していた選手たちの胸に残った。ここを乗り越えれば国立が待っている。強い思いが実ったのは、後半22分。右サイドをスピードに乗ったドリブルで駆け上がった森野徹(2年)が鵬翔DFを翻弄、そのままシュートに持ち込むとオウンゴールで待望の追加点。さらに、試合終了2分前にも右サイドから森野がドリブル突破。左サイドに上がっていた壽透(3年)が押し込んで3-0。
 
「最後の崩すところまでいけなかった。さすが守りの市船ですね。同じマンマークでも違うのかな。興梠が前を向いて自由にプレーできなかった。でも全国8位は十分じゃないですか」と試合後。松崎監督は静かにそう語った。「興梠だけじゃないけど、スター選手を止めることができるのが、強いときの市船。昨年を超えたことで自信になる」と渡邊広大は満足げな表情でファンの中へ消えていった。

 タレントが揃っていた昨年のチームと比べられ、悔しい思いをしてきたに違いない今年の市船が『市船』らしく昨年を超えて、2年ぶりの国立に帰ってくる。奪われた王座を取り戻すために、夏のインターハイ決勝での借りを返すために。今日の1試合目を辛勝した王者を横目に、お立ち台に上がった鈴木は強く言い切った。「倒さなければいけない相手がいるので」。『市船』が追い続けた青と黄色の縦じまの背中が、はっきりと見えてきた。

以上

2005.1.5 Reported by 青柳舞子

[ 第83回全国高校サッカー選手権大会 準々決勝 試合結果]
駒沢開催分試合結果
三ツ沢開催分試合結果
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