2005年2月9日(水)
日本代表 2-1(1-0) 朝鮮民主主義人民共和国代表
<得点者>
4分:小笠原 満男(日本)
61分:南成哲(北朝鮮)
91+分:大黒 将志(日本)
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前半4分に小笠原満男のFKが決まったとき、思わず笑ってしまった。
「ずいぶんと簡単に決まったなぁ」
立ち上がりの時間帯。北朝鮮の動きはおかしかった。大事なワールドカップ最終予選の初戦であり、宿敵日本とのアウェイゲーム。足が萎縮してしまう心境も分からないではなかった。そんな中での失点であり、そのままズルズルと行くのかとも思われた立ち上がりだった。ところがその後、日本は北朝鮮を攻めあぐねた。
ボール支配率では日本が圧倒していたが、北朝鮮の守備の意識も高い。日本ボールになると、まずは自分のポジションに帰って陣形を整える。攻撃のことを考えれば非効率なサッカーだが、それ以上の失点を防ぐという意味では合理性を持つ戦い方だった。北朝鮮は失点後の前半の41分間を、とにかく無失点で乗り切ろうとしていた。そしてその北朝鮮を、日本は切り崩すことができなかった。
田中誠が振り返る。
「技術的にもしっかりしているし、当たりも激しいですね。日本と同じようなサッカーでした。前半は様子を見ているという感じでした」
北朝鮮が前半の中で様子を見ていたという事実は、前半のうちに2名の選手を入れ替えたユン・ジョンス監督の采配からもうかがえる。ユン監督は早い時間帯での交代について聞かれ、選手のコンディションを理由の一つとしてあげているが、それよりは「戦術的な理由」、つまり日本の出方に合わせた部分が大きかったのではないかと考える。
まずはじっくりと日本の出方を見るという前半の北朝鮮に対して、露呈したというよりも改めて感じさせた問題点の一つは、日本がバランスを維持した状態で攻めきれないという事実だった。
北朝鮮は、各ポジションで厳しいプレスを見せた。特にゴール前では、規律正しい動きによって日本選手の動きを制限した。例えばセンターバックの5番チャン・ソクチョルや、ボランチの15番キム・ヨンジュン、17番のアン・ヨンハッといった選手たちだ。そんな厳しい守備によってタイトになった局面を突破するには、正確でシンプルなパス回しが必要となる。ところがこの試合の日本には、そうしたプレーに正確性が欠けていた。
試合が劇的に変わったのは後半に入ってから。我慢の前半を終え、北朝鮮が前に出てきたのである。
「相手が前に出始めましたね。今まではわりと引いてじっくり構えていたんですが、攻めの意識が出てきて、前へ前へと変わってきた。自分の意識とすれば我慢の時間かなと思っていました」(小笠原)
「相手の流れになる時間もありますし、うちの流れになる時間帯もある。それでどこまで我慢できるのかということ。特に混乱することはなかった」(福西崇史)
50分にはクイックリスタートから7番ムン・イングクに決定的なヘディングシュートを放たれるが、川口能活がファインセーブでしのぐ。そのまま日本が波に乗れれば良かったのだが、状況は悪い方向に進んでしまう。くさびを打ち込んだボールを奪われて、そこからの逆襲だった。61分のことだった。
「(北朝鮮は)コンビネーションがしっかりした。ビデオでもワンツーとか見たんですが、それを正確でいいタイミングでやってました。分かっていたんですが、そこをやられてしまいました」(田中)
小気味よくパスをつながれ、右サイドから左サイドへと展開。左サイドバックの16番ナム・ソンチョルが1人余った状態でパスを受けると、ミドルレンジから川口のニアサイドを破られてしまった。
「(相手に)ポジションチェンジがあったので、ズレが出てきましたね。それが失点につながったということはあります」(福西)
失点前から用意していたという64分の高原直泰を筆頭に、66分には田中に代えて中村俊輔を投入。日本は4バックにシステムを変えて勝負に出た。引き分けでいい北朝鮮は、同点ゴールの後、無理をすることがなくなった。日本の交代もあってペースは日本に。しかし、ゴールは決まらない。時間ばかりが過ぎていき、最終予選のあの緊迫感がスタジアムを満たしはじめる。
試合前、あるG大阪付きの記者がこんな話をしていた。
「18人のメンバーに入った大黒がキープレーヤーになるかもね」
長い合宿中に調子を落とした時期もあったが、一貫して彼は「らしさ」を出していた。強引にシュートを打つ姿勢。練習の随所でそれが見られ、ジーコ監督もそれを評価したと明言している。
「キャンプの間、大黒はずっと彼らしさを見せてくれた。彼はFWの選手が持っていなくてはならないもの、つまりボールを持ったらゴールに向かうという姿勢を持っている。昨年のJリーグでも得点を重ね、キャンプ中の練習試合でも彼らしいプレーを見せて得点もしていた。FWとしての才能豊かな選手だと思う」(ジーコ監督)
刻一刻と時間が過ぎていく中、79分にピッチに姿を現した大黒将志はジーコ監督から「前に張って、ゴールを狙ってくれ」と言われていた。大黒もその時の心境を「前回(カザフスタン戦)打てなかったということもありましたし、入った時間が終わり頃だったので、とにかくシュートを打とうと思っていました」と振り返った。そんなロスタイムの91+分(+はロスタイムの意味)に試合は動いた。
「ごちゃごちゃしてたんで、裏に速いボールを入れようと思っていれました。ゴール前に人がいれば、ああいうこともありますしね」(小笠原)
右サイドに張り出した小笠原からのクロスはGKシム・スンチョルの手元へ。しかしパンチングが弱い。こぼれ球は福西の足元へ転がった。
「大黒は見えてました。ダイレクトでパスして、あいつはシュートを選びましたが、(福西に)落として(福西が)シュート、ということもできましたね」(福西)
「福西さんが落としてくれたときにゴールが後ろにあるのが分かっていたので、ターンしてシュートを打ちました」(大黒)
ゴールへの強い意識がそこにはあった。そしてその大黒が日本を救った。ファイナルスコアは2−1。薄氷を踏む思いの勝利。評価は非常に難しい。しかし勝ち点3は手にした。不安はあるが、まずは結果は出せた。
次戦は3月25日、アウェイのイラン戦。時間はある。噴出した課題はさておき、しばし勝利の余韻に浸りたい心境だ。
2005.2.10 Reported by 江藤高志
以上
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