5月8日(日) 2005 J1リーグ戦 第11節
広島 0 - 1 横浜FM (15:04/広島ビ/22,607人)
得点者:'60 塩川岳人(横浜FM)
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60分、攻め込んでいたのは広島だった。ベットがペナルティエリアの近くまで攻め上がり、ガウボンの構えるその裏に浮き球のパスを出して、相手DFを裏返して飛び出そう、という意図。しかし、それは横浜FMの高さのあるDF陣に通じず、相手にボールがわたってしまう。
ロングパス一閃。右サイドのスペースにボールが出て、そこに坂田大輔が走り込む。が、そこにはジニーニョがしっかりとカバーし、突破を許さない。仕方なく、坂田はバックパスを選択した。そこにいたのは、熊林親吾。今季3試合目の出場となる熊林は、本来はボランチの選手。しかし、今日は右サイドに位置し、広島の服部をケアして奮闘していた。熊林は、ダイレクトにそのボールを逆サイドに振る。もともと高校時代はパッサーとしてならし、年代別代表の経験も持つ男だ。正確なロングパスがペナルティエリアを横切るように飛ぶ。
広島の右MFとして攻守に激闘していた茂原岳人は、運動量をいかして前線から最終ラインまで戻り、熊林のパスコースに入った。ジャンプしてヘッドでクリアできるか、とも思われた。が、茂原はなぜかそのボールに触らず、ボールをやりすごしてしまった。しかし次の瞬間、茂原の背後から横浜FMの左ウイングバック・塩川岳人が長い距離を走って飛び込んできた。角度のない場所から放ったヘッドは、逆サイドのネットにふわりと収まった。茂原はその瞬間、ガックリと膝をついた。
熊林は湘南、塩川は川崎F。共にJ2で奮闘してきた苦労人である。特に塩川は、川崎Fを解雇された後、トライアウトで認められて横浜FMに加入してきた男だ。今季はここまで共に試合出場機会に恵まれず、塩川は今季初のリーグ戦出場となる。が、これまで辛酸をなめてきたからこそ、彼らはモチベーションを切らさず、ただ自分を磨きつつ、このチャンスに賭けていた。
彼らだけではない。「今のトップチームのコンディションでは、広島に勝てない。勝つために走れる選手を選んだ」という岡田監督の判断のもと、思わぬ形でチャンスを得た山瀬幸宏・後藤裕司のリーグ戦初出場コンビも、経験のなさをハードワークでカバーしようと、走って走って走りまくった。技術で遅れをとり、何度もボールを奪われ、広島のパス回しに翻弄された。しかし、それでも彼らは走り続けた。決して、やめはしなかった。
横浜FMの勝利は、中澤・中西・栗原で形成された強固な3バック抜きにしては、もちろん語れない。しかし、「誰かのために頑張るという気持ちが強かった」と中澤が絶賛した、中盤のいわゆる「レギュラー外」の選手たちの強い気持ちなくして、この勝利はありえなかった。もし彼らの誰か一人でもあきらめていたならば、塩川のゴールはもちろんなかっただろうし、中澤が君臨していた最終ラインも広島の攻勢を支え切れずに決壊したことだろう。岡田監督が上気した表情で「一人一人の頑張りが素晴らしい。選手に感謝したい」と語っていたが、その言葉にふさわしい働きを、この日の横浜F・マリノスは見せつけたのだ。
一方の広島は、確かに小野監督の言うとおり、ゲームは支配していた。中盤の主導権を握り、最終ラインは清水と坂田というスピードスターを実にうまく、狡猾にコントロールしていた。服部と駒野はサイドを制圧し、何度も素晴らしいクロスを入れていた。しかし、チャンスのわりには、本当の意味での決定的なシーンというのは、少なかった。
横浜FMがしっかりとブロックをつくり、スペースをなくすサッカーをしてくることは、わかっていた。が、特に前半、簡単にパスを回せること、容易にボールを奪えることから、チーム全体に「点はいつでもとれる」というムードが、果たして出てこなかっただろうか。「いいことをしようとして、ボールを奪われる」(小野監督)ことはもちろん、ここはシュート、という場面でも切り返しを入れ、ドリブルやパスを選択して、崩してからシュート、を狙い過ぎてはチャンスを逃しているように見えた。そこが、小野監督の言う「甘さ」につながり、結果として横浜FMの術中にはまったのである。もちろん、失点シーンの甘さもあるが、それよりも攻撃のところに「厳しさ」があと一歩、足りなかった。
「あまり褒められた内容の試合ではない」と岡田監督は語ったが、しかし、今日の横浜FMはこういうプレイを徹底することが、唯一の勝利への道だった。それを徹底して90分やりとげた選手たちのことについて語る岡田監督のまなざしは、自分が託した選手たちの頑張りへの感激と誇りがかいま見えた。チャンスが少なくても決して腐らず、試合に出たらチームのために100%以上の力を発揮しようと全力を尽くす。そういう選手たちの存在こそ、横浜F・マリノスが2年連続王者として君臨している理由なのだろう。
以上
2005.05.08 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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