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【J2:第19節 甲府 vs 福岡 レポート】藤田のトリッキーなプレーが、福岡のゲームプランを打ち破る(05.07.03)

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7月2日(土) 2005 J2リーグ戦 第19節
甲府 2 - 1 福岡 (18:34/小瀬/7,061人)
得点者:'34 田中佑昌(福岡)、'51 藤田健(甲府)、'67 井上雄幾(甲府)
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無条件でJ1昇格となる「2位以上」を巡る争いは、京都の独走で事実上「2位」争いとなっている。その一つの順位を巡る争いは、第1クール下位に沈んだチームが第2クールで健闘しているために先が見えない。第18節終了時点で、2位の甲府から7位の仙台までは勝ち点3差、2位から5位までは同じ勝ち点(27点)と大接戦だ。1試合で2位と7位が入れ替わる可能性もある。

得失点差で2位の甲府と3位の福岡の対戦であるが、この1試合の結果で一喜一憂しても仕方がない状態である。しかし、勝つと負けるで、勝ち点3の差がつくと思えば、重い試合であることには違いない。勝ったチームの監督が「差がないのと同じ」という趣旨の言葉を残すことは容易に想像がつくが、負けたチームは勝ち点差での単独2位のチャンスを逃がして後退するだけにショックを受ける。

J2リーグの折り返しを迎えつつある2位・3位対決は様子見で始まった。お互いに4−4−2のフラット気味の中盤だけに、ポジションごとに選手が噛み合うので、どちらかが積極的にリスクを冒すか、大きなミスをしない限り、お互いに崩れないしチャンスは生まれにくいからだ。ただ、不確定要素はセットプレー。そして、甲府が13分にFKからチャンスを掴む。藤田が蹴ったボールは、ゴール前で攻守の選手が交錯する中、バレーが頭に合わせ損ねたものの直接ゴールネットを揺らした。小瀬陸上競技場の観客は先制点に大きく沸いた。しかし、線審はオフサイド判定を示す。オフサイドの新ルールでは、バレーの頭に当たっていない以上ゴールと思われたが、バレーが福岡のGKの動きを阻害したということでノーゴールとなった。その後は、甲府がツータッチ以下のパスを繋いで、チャンスを増やし始め、福岡はポゼッション率が徐々に下がる。しかし、攻撃力の高い甲府に対して、福岡はカウンターを狙うプランで前半を戦っていた。そして、34分にそのチャンスをモノにする。甲府のセンターバック(杉山)からサイドバック(秋本)へのショートパスを、第2節の水戸戦(3月12日)以来の先発出場を果たした田中がカット。そして、左サイドをそのまま高速ドリブルで駆け上がる。ボールを奪われた秋本がマークに付くが、間合いを開けたままズルズル下がってしまう。そして、ペナルティエリアまで下がったところで、田中が右足でゴールを決める。スピードのあるドリブルを仕掛けられると間合いを詰めることは難しいが、間合いを開けたまま下がれば、相手はフリーに近い状態でシュートを打つことができる。中を切っていても、間合いがあれば切っていないのと同じ。右利きの田中は、左サイドから楽に右足でシュートが打てた。甲府ディフェンスの課題である1対1の未熟さが先制点を許した結果だ。このとき、負傷が癒えて今季初先発のGK・松下は「ペナルティエリアの近くになれば、ディフェンダーが間合いを詰めると思っていた。相手がかわす為に切り返した瞬間に、ボールコントロールが大きくなる。そこを狙うつもりでポジションを前にしていた」という判断をしていた。そのために、ゴールを空けるリスクを冒した。GKとDFの連携ミスでもあった。また、躊躇せずにドリブルを仕掛けた田中の勝利でもあった。

1−0で折り返した福岡はゲームプラン通りで後半を迎える。後半は更に前に出てくる甲府に対して、カウンターを仕掛けやすい福岡。しかし、そのゲームプランをセットプレーに壊されてしまう。51分にFKのチャンスを掴んだ甲府。リードされて熱くなっていたバレーが蹴る気満々で助走距離を取りはじめると、いきなり藤田がボールを蹴ってしまい、ボールはそのままゴールネットを揺らす同点弾となった。福岡のGK・水谷は、壁の位置の修正に意識を奪われていた。また、他の選手は壁を作ることに意識を奪われており、ボールの前に立ってプレーを遅らせることを誰もしなかった。その隙を藤田は見事に突いた。福岡の松田監督は「藤田のトリッキーなプレーに気をつけろ」とミーティングで選手に指示していたが、選手はその指示を実行できなかった。甲府のプレーは松田監督の想定の範囲を超えていなかったが、選手が応えることができずに、ゲームプランは崩れてしまった。

同点に追いついたことで、奥手な小瀬の一般サポーターも高揚し、コア・サポーターの応援に合わせて手拍子を始める。観客席の気持ちが甲府の選手たちの背中を押し始めた。そして、甲府の前線から連動したチェイシングが福岡に中盤を作らせない。時間とともに中盤を省略したロングパスが増えて、福岡の攻撃からカウンターの要素が消え始める。勢いがついた甲府は、石原が2人に囲まれながらもキープしたボールを、左サイドから上がってきた井上に繋ぐ。井上はそのままドリブルで切れ込んで、右足でゴール(67分)。甲府はついにリードすることができた。藤田のトリッキーなFKで、福岡のゲームプランを打ち砕いた甲府は、短くはない残り時間に危ういプレーを見せることなく凌いで、3位の福岡を振り切った。

勝ち点で単独2位となった甲府だが、大木監督は記者会見で「何も変わらない。スタートラインから一歩踏み出しただけ」と戒めるコメントを残した。まさにその通りである。しかし、2位でホームに凱旋し、久しぶりのホームゲームで2位を守ったことには大きな意味がある。今シーズン2番目となる7061人の観客(サイドスタンド改修中のため、キャパは10500人)の前で、このような逆転勝利を見せたことは、スタジアムにサポーターの足を運ばせるモチベーションになるからだ。まだまだ折り返し地点だが、これからのホームゲームが満員のサポーターで埋まるようになれば、甲府の夢は実現に徐々に近づいていく。この日の勝利は、甲府にとって大きな一勝となったはずだ。

以上

2005.07.03 Reported by 松尾潤
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