7月8日(金) 2005 J2リーグ戦 第20節
水戸 4 - 1 湘南 (19:00/笠松/1,371人)
得点者:'27 柿本倫明(湘南)、'55 須田興輔(水戸)、'60 デルリス(水戸)、'81 磯山和司(水戸)、'89 デルリス(水戸)
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公式発表では、気温17.2度。思いのほかに気温が上がらず『肌寒い』という言葉がピッタリとはまる笠松で、水戸と湘南の第2戦目が行われた。しっかり守る水戸とリスクマネジメントを命題に掲げる湘南。試合前では、様子見の時間を費やしていく、この日の天候のように『クール』なゲームになると予想していた。が、しかし、終わってみれば4−1。1戦目(第8節@平塚)とはまったく立場が入れ替わり、水戸が4得点で久々の連勝を飾った。
この日のゲームを総括する言葉を捜すなら、『新しい水戸のスタイルが確立した一戦』ということになるだろう。中盤の底に位置するゲームメーカー・永井の指揮のもと縦横無尽に動き回る攻撃陣に、積極的なオーバーラップを見せる両サイドバック。守備面では、吉本を中心に数的優位を保ちながら強固なラインを引き、前線からのプレスは相手の攻め手を明らかに削ぐものだった。湘南が先制し折り返した前半ではあったが、あたかも水戸が格上であるかのような『余裕』が、ハーフタイムのピッチの上には漂っていた。
ゲームは終始、水戸の流れのままに進んだ。
キックオフ早々、水戸は、右サイドバックの須田がオーバーラップ、外からペナルティエリア側に切れ込む上がりを見せ、シュートに持ち込む。まさに『新しい水戸のスタイル』を象徴するプレーだ。その後も、秦、関、デルリス、森田とシュートシーンを作り出す。明らかに今までとは異なる中盤のつなぎを見せ、右から左、そして右と湘南のディフェンス陣を撹乱していく。ビルドアップの中心として特に際立っていたマルキーニョは、明らかに今季最高のパフォーマンス。惜しむらくは、ラストパスの精度や最終局面での意思の疎通が今ひとつだったこと。その点さえ改善されれば、もっと容易に得点できるはずだ。
そんな中で生まれたのが湘南の先制ゴール。前半27分、湘南の最後列・鈴木からの縦1本のフィードを、柿本が水戸・吉本を背負いながら受ける。柿本は背負った吉本をパワーと一瞬のスピードで振り切り、そのまま右足でシュート。柿本の技量と執念を見せ付けた得点シーンだった。
この得点にもあるように、この日の湘南は、縦へのフィードを多用していた。柿本・梅田という強力な2トップにまずボールをいれ、相手ゴール前になるべく近い位置で起点を作る。その周辺では坂本・加藤がボールを拾い攻撃に厚みを加える。攻撃に人数をかけない湘南としては、柿本の得点シーンが理想的な展開だったのだろう。4人で攻め6人で守る。ノーリスクの時だけ一人攻撃参加する。これは、水戸が逆転するまで忠実に守られていた。
後半、水戸に流れを変えたポイントは2つ。1つ目は、須田のフリーキックによる同点ゴール。「練習ではやっていたんだけど、ゲームでなかなか(自分で蹴る)機会が無くて・・・。でも、いつもやっていることなのでリラックスして蹴れました。(水戸・須田)」というその弾道は強く、一閃湘南ゴールに突き刺さった。「須田のゴールがゲームを大きく左右した(水戸・前田監督)」「スーさん(須田)のゴールで助かった(水戸・永井)」というように値千金の一撃は、その後の大量得点を導く同点ゴールになった。
2点目は早いタイミングでの磯山投入だ。ワントップというシステム上、ベンチを温めることが多かった磯山。しかしながら、今日の主役は途中出場のこの磯山だった。後半8分に投入されると、その直後に須田の同点ゴールがあったこともあり、リラックスしてプレーができたと言う。
磯山という高さと強さがあり、前線で体を張ってポイントを作れるトップは、これから点を取っていこうというチームに一つの選択肢と安定感を与えた。「磯山なら必ずキープしていいボールを落としてくれる」と、チーム最年長で寡黙な彼への信頼感は絶大だ。しかも、この日の磯山はポストプレーだけではなかった。2点目は、右サイドに開き、吉本から縦パスを受けるとスピードでマーカーを振り切りゴール前へ速いクロス。つめていたデルリスの逆転ゴールを演出した。3点目はカウンターからデルリスが落としたボールに鋭く反応。GKとの1対1を決めて勝負を決定づけた。その後、89分には、湘南が前掛かりになっているところを、縦に抜けたデルリスが4点目を決めるわけだが、その前のプレーで、中盤の位置までしつこくチェイスしてボールを拾い、きっかけを作ったのもやはり磯山だった。
会見で、3点目・4点目について「前掛かりになってるとはいえ、数的優位を作らなければいけないということが反省材料」と湘南・上田監督がコメントしているが、湘南が大量失点をした理由はそれだけではない。ディフェンダーのミス、前線でのディフェンスとそれに起因する最終ラインの消耗などの要素も見直さなければいけないところだ。
もちろん、圧倒的に勝利した水戸にも課題は多く残る。リスクマネジメントを優先している前半での攻撃の仕方や、プレスポイントの高さなどがそうだ。「前半は前から行き過ぎて陣形が間延びし、湘南にスペースを与え2ndボールを支配された(水戸・前田監督)」というプレスポイントの点は、至急改善を施さなければ、開幕当初の様な大量失点につながる可能性も高い。特に、次節の京都は守備の意識が高いとはいえ攻撃力はJ2屈指。せっかくいい戦いを続けていても、一戦で全て水の泡なんてことにならないかという危惧も否定できない。
とにもかくにも、確実にステップアップしている水戸は、次節で圧倒的な首位の京都と相対するが、選手たちは一様に前向きなコメントだし、若いチームだけに「もしかしたら喰うことも・・・」という思いもある。「最初から真っ向勝負に出る(水戸・前田監督)」というチャレンジがどこまで通用するのか、そしてそのチャレンジで、どれだけ大きく成長してくるのか今から楽しみだ。こうして見る側が次の楽しみを探せる、水戸もそういうチームになったんだなとしみじみ感じる第20節だった。
以上
2005.07.09 Reported by 堀高介
J’s GOALニュース
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