9月17日(土) 2005 J2リーグ戦 第32節
甲府 2 - 2 水戸 (18:34/小瀬/6,362人)
得点者:'47 須藤大輔(甲府)、'75 長谷川太郎(甲府)、'84 ファビオ(水戸)、'89 永井俊太(水戸)
----------
4位の甲府が10位の水戸をホームに迎えた対戦の立ち上がりは、甲府ペースで始まったように見えた。ただ、甲府はボールポゼッションが出来るものの、ペナルティエリアに入ってシュートを打つまでには到らない。何本かのミドルシュートは厚く守る水戸の選手に当たって跳ね返されるか枠を捉えられない。得点に繋がりそうな場面は、43分に藤田が蹴ったフリーキックだけだった。攻撃力が自慢の甲府だが、ここ数試合は相手陣内に攻め込むものの、シュートに持ち込めない場面が少なくない。このゲームの前半も同じだった。
ただ、水戸の守備は引いて守るという消極的なものではなかった。4−5−1システムの水戸は、ボールの奪い方にチームとしての意図を感じることができた。個人の判断だけで前線からボール保持者に対してプレッシャーをかけない。ハーフウェイラインから自陣に入った段階で、複数の選手がプレスをかけ始め、サイドにボールを出させて後ろの選手が狙っていく。組織的にボールを奪うというプレーが見事に発揮されていた。水戸からすれば、甲府にポゼッションされたというよりも、させたのだ。もちろん、「殴り合いをすればやられる」という前田監督のコメントのように、甲府と同じように前からガツガツ行くサッカーは今の水戸には難しい。『出来ることを確実にやる守備』という意味では完成度が高かった。攻撃面では、最も効果的なカウンターに繋げることが出来る位置(甲府の中盤でのパスミス)からボールを奪うと、トップの岩舘、2シャドーの眞行寺、秋田、サイドハーフの秦、関が直ぐに切り替えて甲府陣内に電撃的に入り込む。このカウンターは、パスの精度悪さ、選手の能力の問題もあり甲府に大きな脅威を与えなかったが、攻撃面でもチームとしての意図をはっきりと感じることができた。この意味で、前田監督は水戸というチームを与えられた環境内で完成度を高く作り挙げていると言える。もっと能力の高い選手を与えればどんなチームが出来るのか、という興味を持たせる監督だ。
両チーム共に得点の匂いがほとんどしなかった前半だったが、後半の甲府は繋ぐだけではなくミドルパスを攻撃のアクセントに加えてきた。開始早々の47分、藤田が須藤に入れた浮き球が得点に繋がった。須藤が頭で合わせたボールをGK・本間が弾くものの、こぼれたボールをそのまま須藤が押し込んでゴール。バレーの負傷で3トップの頂点を任された須藤は、ポストプレーでフィジカルの強さを見せ、2試合目にして長谷川、石原とのコンビネーションもよくなり、ゴールという結果も出した。
リードされた水戸は57分、新加入のファビオを投入する。「まだ水戸の動き方を理解していない」と前田監督が言うファビオだが、個でボールをキープして攻め込むことができる能力は高く、今後は甲府のバレーのような存在になるだろう。ファビオにボールが収まり、ディフェンスを寄せ付けることで他の選手が活きてくる。ただ、現状では組織的にプレーすることが出来ておらず、線ではなく点として怖さを発揮するだけだ。しかし、75分に甲府・長谷川のゴールで2−0とされてからは、この「点」としてのファビオが決定的な仕事をする。84分、永井が左から入れたボールは、甲府のGK・阿部が楽にキャッチできるはずの浮き球だった。しかし、阿部がキャツチングの動作に入った瞬間にファビオが動き出し、視界の外から競ってきた。ファビオをブロックできなかった阿部は片腕を叩かれて、ボールは阿部の手ではなく下から伸び上がってきたファビオの頭に当たって甲府ゴールに流れ込んだ。甲府はまた失点ゼロで終われない勝ちゲームになるのかと思われたが、ゲームは2−1では終わらなかった。
中盤がボールウォッチャーになり運動量と組織力が極端に落ちた甲府は、ポゼッションの権利を水戸に譲り渡していた。3分間のロスタイムは更に消極性が強くなる。必死に守っているのはディフェンスラインの4枚だけで、中盤は攻守に渡って中途半端に漂っているだけ。倉貫を交代で下げたためにバランスを欠いたとも言えるが、組織力は消滅していた。右サイドでフリーになっていた水戸・関にプレッシャーをかける選手はおらず、関のクロスを中盤の底にいた永井がヘディングで同点ゴールを決めた。ゴール前では交錯したGK・阿部と水越が傷んで倒れ込んでいた。
レフリーが3回の笛ではなく1回の笛で試合終了を告げたため、当初は試合終了の意図がスタンドに伝わらなかった。センターサークルに選手を集め始めたことで、ようやく水戸の同点ゴールで試合が終わったことが伝わり、同時に倒れた選手を放置したままという状況と、2−0から2−2に追いつかれたという現実が怒りに油を注ぎ、スタンドからは怒号が飛んだ。
熾烈な3位争いをする甲府にとっては負けに等しい引き分けとなり、勝ち切れないという課題を改めて強烈に突きつけられた。アライールがセンターバックに入ってディフェンスラインは安定度を増したが、終盤追い上げられるとボールの出所にプレッシャーをかけるということができない。2失点のうちどちらかを阿部が防ぐことが出来たかもしれないという印象もあるが、苦しい時にチームを仕切ることができる選手がいないのは甲府の弱点だ。3位争いを勝ち抜くために、甲府は何かを変える時期かもしれない。
以上
2005.09.17 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
一覧へ【J2:第32節 甲府 vs 水戸 レポート】攻守にチームの意図を感じさせた水戸。新加入ファビオの活躍で、甲府の2点リードをはね返すドロー。(05.09.18)
- 終盤戦特集2025
- アウォーズ2025
- 明治安田J1昇格プレーオフ2025
- 明治安田J2昇格プレーオフ2025
- J3・JFL入れ替え戦
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- 明治安田Jリーグ百年構想リーグ
- 2025 月間表彰
- 2025 移籍情報
- 2025 大会概要
- J.LEAGUE FANTASY CARD
- 2025 Jリーグインターナショナルユースカップ
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE













