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【J1:第26節 広島 vs 名古屋 レポート】自らのミスで自滅した広島。苦しい試合を戦い抜き、新体制初勝利を果たした名古屋(05.10.01)

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10月1日(土) 2005 J1リーグ戦 第26節
広島 1 - 2 名古屋 (15:00/広島ビ/10,879人)
得点者:'13 オウンゴ−ル(名古屋)、'64 佐藤寿人(広島)、'77 豊田陽平(名古屋)
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 64分、広島・小野監督はギャンブルに出た。攻撃の切り札・ガウボンを呼ぶ。この場合、交代選手として指名されるのは、ディフェンスに難のある前田俊介であることが多い。しかし、小野監督の選択は中盤の李だった。これはつまり、前線にガウボン・佐藤寿人・前田の3人を配し、守備のリスクを冒して攻撃に行くぞ、というメッセージだったのだ。
 ガウボンがピッチに立った直後、縦パスが彼に送られる。安定したポストプレーでガウボンがボールを落とすと、その近くにいた前田がダイレクトで浮き球のパスを出した。
「(前田)シュンとイメージがシンクロした」と佐藤寿は語る。その言葉を証明するかのごとく、佐藤寿は一気に前に飛び出した。名古屋の守護神・楢崎正剛が前に飛び出す。が、その鼻先で佐藤寿はボールの方向を変え、そのまま無人のゴールにシュートを流し込んだ。

 広島、同点。割れる歓声。ここまで広島が圧倒的にゲームを支配していただけに、この同点の勢いのまま逆転してくれるだろう、とホームのサポーターは信じた。
 実際、広島は攻めた。茂原岳人が、前田が、逆転を狙ってシュートを放つ。絶好調の佐藤寿が、またも楢崎をかわしてループシュートを放つ。駒野友一が右サイドを突破し、絶妙のクロスに佐藤寿が飛び込む。しかし、シュートが枠に飛ばず、ゴールマウスをとらえても楢崎の正面だ。
 
 それにしても、サッカーとは本当に不思議だ。一方のチームが流れをつかんでいても、「得点」という結果を勝ち得ないでいると、「流れ」はいつの間にか手のうちからスルリと抜け出し、相手の方に走っていく。
 77分、名古屋の杉本がクロス。ただ、そこまで何度か杉本のクロスを広島DFは跳ね返していた。ここも同じか、と思った瞬間、そこに藤田俊哉がスルスルと走ってきたのだ。広島DFの前に飛び込んだ藤田は、杉本のクロスをヘッドですらせるように流す。この動きによってDFの動きは一瞬止まり、ボールが落ちてくるところに居た豊田陽平が、完璧にフリーとなった。ダイレクトで見事なシュートを決めた豊田もすばらしいが、ここぞという時に決定的な仕事をした藤田に対しては、さすが、と言う賛辞を送る以外にない。
 
 確かにこの失点は、広島にとっては痛い。しかし、まだロスタイムを含めれば15分も時間は残っている。同点に追いつくことはもちろん、逆転することも十分に可能だった。実際、広島はロスタイムで何度もドラマを起こしていたのだから。しかしこの日の広島の選手は、そこから下を向いてしまい、そのまま敗れた。
 
 この試合、一言で言えば、広島の自滅である。先制のオウンゴールにしても、杉本のなんでもないクロスボールを、下田とジニーニョのコミュニケーション不足のため、みすみす献上してしまったもの。だが、広島の本当の問題はその後にあった。そこまでの10分間、完璧にゲームを支配し、圧倒していたのは広島の方だった。それなのに、たった一つのミスで失点したからといって、その後はパスミスの連続。せっかくつかんだ流れを、そのまま相手に渡してしまったのだ。
 そして、同点に追いついた後の流れも、広島はチャンスを外し続け、失点して敗北。名古屋が自分たちから能動的に動いて流れを引き寄せたというより、広島が自分で崩れて失った試合だった。今季、もっとも大きなブーイングがサポーターから選手に浴びせられたが、この流れを受けては、それも仕方がないものだった。
 
 広島はこれで8位に後退。現実問題として、優勝を狙うにはかなり厳しくなった。しかし、まだ完全に可能性が潰えたわけではない。もし、彼らに奇跡が訪れるとするならば、今回の自滅を反省の糧とし、かすかな可能性を選手たちが信じてガムシャラに闘うことができるか、にかかっているだろう。
 一方の名古屋。「とにかくうれしいの一言につきる」と中田監督代行が語ったこの言葉が、この試合の意味を物語っている。チームとして、決して機能したわけではない。むしろ、うまくいかなかったことの方が多かった。しかし、押しこまれても、支配されても、「この試合を勝つんだ」という意思だけは、途切れることがなかった。どうしても結果が欲しいという選手たちの気持ちが、8月の再開以来2度目の勝利を、そして中田体制初の勝利をもたらした。これで名古屋を覆っていた暗雲の一部は振り払われたはず。この勝利を、さらに上位を狙うきっかけとしたいところだろう。


以上

2005.10.01 Reported by 中野和也
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