10月15日(土) 2005 J2リーグ戦 第36節
湘南 0 - 0 札幌 (14:00/平塚/5,510人)
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「前半はOKです」開口一番、柳下監督が及第点を与えたとおり、最初の45分間は完全に札幌が主導権を握っていた。数字が弾き出すデータ云々ではなく印象だけでいえば、およそ8割方の攻防が湘南陣内で繰り広げられたといってもいい。
3−5−2の札幌の中盤はトップ下に鈴木智樹を据え、右に金子勇樹、左に砂川誠、ボランチには岡田佑樹と田畑昭宏が並んだ。まずはトップに当て、2列目の飛び出しを狙う。一方の湘南は懸念された相手トップ下のスペース、特に鈴木に対し吉野智行が終始目を光らせ、ボールが入っても厳しくチェックした。前を向いてチャンスメイクさせる時間を与えない。
中央の自由を奪われるや、札幌は砂川が絞りながら下がって受け、逆サイドの金子を押し上げる、あるいは金子が絞って中央を厚くした。同時に田畑が中盤の底、3バックの前にストッパーのような格好でひとり残り、岡田が右サイドに開き、前に人数を割く。しかし金子が絞ったぶん空いた右サイドのスペースに、岡田がなかなか上がれない。「相手の背後へ出て行く動きが岡田は少なかった」と指揮官も振り返ったが、これはマッチアップした湘南の坂本紘司の効力も大きいだろう。押されながらもマイボールに転じたときの坂本の素早い動き出しに、岡田が堪らず交錯するシーンも見られた。
25分を過ぎたころには、それまで裏を狙う動きを見せていたFWが下がって受けてシュートを狙うなど、札幌は豊富なバリエーションで攻撃の手を緩めない。だがサイドネットを揺らす相川進也のシュート、砂川の直接フリーキックなどフィニッシュまで持っていくものの、枠を捉え切れないシュートが多かったのも事実である。逆に湘南は、出場停止の加藤望に代わった佐野裕哉がトップ下のスペースを広く使い、左、あるいは右サイドと連携し数少ないチャンスを演出するが、なかなかフィニッシュまでは至らない。ともにスコアの動かぬまま、後半を待つことになった。
最後まで札幌優勢のまま終った前半だが、この45分間には両者の特徴と現状が滲んでいた。札幌については『決定力不足』である。良い内容でありながら結果に結びつかない戦いは、特に最近叫ばれているチームとしての課題であり、不名誉な特徴ともいえる。一方、苦しい時間を耐え抜いて少ないチャンスをものにしようとする戦いは、湘南がシーズン当初から譲らないスタイルのひとつである。もちろんクリアミスなど見過ごせない点もあったが、チームディフェンスによって土壇場でピンチを凌いだ。つまり、札幌が押しに押しながらスコアレスに留まった前半は、ある意味、湘南の掌中ともいえたわけだ。果たして後半は、ひとつのプレーを契機に湘南に流れが傾いていく。
50分、佐藤悠介とのワンツーから、左サイドを坂本がドリブルで抜け出す。ここで坂本はゴール前に走り込む柿本倫明には送らず、フリーで一列後ろに飛び出してきたゴーランを狙った。これは惜しくも合わなかったが、疲れとともに生じてきた札幌陣内のスペースを見つけ出したとともに、反撃の第一手となる。55分前後には佐藤からのサイドチェンジに反応した佐野とゴーランの連携、楔を受けた坂本のシュート、吉野からの大きなサイドチェンジからのチャンスメイクなど、立て続けに畳み掛ける。
一方の札幌は攻撃の精彩を欠きだした鈴木をボランチに下げ、逆に田畑を上げる。また金子に代えて三原廣樹を投入、そのまま左に配し、砂川を中央に据えた。さらに石井謙伍、清野智秋と、相次いでFWを入れ、前線のリフレッシュを図った。前がかりに攻める湘南に対し、守から攻へ転じた際にゴール前で相川がヘッドで合わせるなどさらなる反撃も見せている。しかし――。
「勝てるところで勝たなければいけない」と、札幌の曽田雄志が苦い表情を見せれば、湘南の坂本も、「勝ち切れなかった。口惜しい」と、唇を噛む。双方ともに、良い部分を表現しながら、ゴールに結ぶことはできず、結果的に勝ち点を痛み分けることとなった。ただひとつ、このスコアレスドローは単なる『決定力不足の結果』と括り得るものではなく、両者の切れない集中力が導いた「拮抗の結末」だったと、添えておきたい。だからこそ、口惜しさが倍に募るのだ。残り8試合、濃密な戦いはまだまだ続く。
以上
2005.10.15 Reported by 隈元大吾
J’s GOALニュース
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