第84回全国高校サッカー選手権大会 2回戦
多々良学園(山口) 2-1 流通経済大柏(千葉)(12:10キックオフ/6,500人)
得点者:1分 山田竜司(多々良学園)、14分 楢崎佑馬(多々良学園)、19分 竹村龍人(流通経済大柏)
青森山田(青森) 2-1 佐賀東(佐賀)(14:10キックオフ/5,000人)
得点者:19分 伊藤陵(佐賀東)、31分 澤本将弘(青森山田)、77分 松本怜(青森山田)
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勝利した多々良学園の菅田恭介は「今日は2回握りました」と記者を笑わせた。白井三津雄監督からは、「苦しいときにユニフォームの多々良の文字を握れ」と指示が出ていたという。
多々良といえば山口県代表として高校選手権の常連校だが、その運営母体が昨年経営破綻を発表していた。白井監督の中には、この校名での出場は最後になるかもしれない、という思いがあったという。だから選手には「最後まで走ってくれ」と伝えたという。その思いを受けた選手たちはピッチを思う存分に躍動した。
立ち上がりの1分の先制ゴールに続き、前半14分には楢崎佑馬が平間直道からのラストパスを豪快に蹴り込んで追加点を決める。
地元となる流通経済大学付属柏は、発表された6500人の観衆のほとんどの声援を受けていたが、その思いに応えるべく本田裕一郎監督は矢継ぎ早に交代のカードを切った。まずは突破されていた左サイドの選手を2枚。18分と29分に交代させると、36分にも3人目の交代に踏み切った。「高校サッカーは早いですからね」とその采配を振り返ったが、勝利に向けたどん欲な姿勢は、19分の竹村龍人の1ゴールを生み出すにとどまる。
「点を取られたのが早すぎた。それだけ入り方が悪かった。固さがあった」と本田監督は悔やんだ。それだけ、1分という時間帯の先制点は大きい意味を持っていた。後半の中頃から、「スタミナの問題」(白井監督・多々良学園)によって流経柏が攻勢を見せるが、結果的にそれが実を結ぶことはなかった。
「天皇杯を見たときに浦和のサポーターが多い中、清水ががんばっていた。それを見て、心強さを感じた。同じようにやろうと思った。流経柏が勝つといわれていたので、勝ちたかった」と菅田は振り返ったが、多々良学園がアウェイとも言える雰囲気の中、2回戦を突破している。
佐賀県立佐賀東の選手たちは長らくロッカールームに閉じこもり、そして号泣していた。漏れ伝わってくる泣き声は、彼らの無念さを端的に表していた。佐賀東の試合展開は悪くなかった。
勝利した試合後。青森山田の黒田剛監督は、冬の雨上がりの寒々しいグラウンドに選手たちを集め、そして厳しい表情で諭すように「負け試合だぞ」と告げていた。それだけ苦しい試合だった。
前半19分の先制ゴールの場面は「まさに予定通りだった」と佐賀東の蒲原晶昭監督。黒田監督も「苦しい試合でした。終わってみれば佐賀のプラン通りだった」と同じニュアンスの印象を述べている。試合自体は佐賀東のものだった。ただ、青森山田にすごさがあるとすれば、苦しい試合で崩れない精神力を持っていたという事だろう。
青森山田は、前半の31分に澤本将弘が同点ゴールを決めて試合を振り出しに戻すと、試合は持久戦へと突入する。ともに体力を消耗する苦しい戦いになったが、両者とも集中を維持し続けていた。青森山田は、ボランチの馬見塚光が中盤と左サイドのスペースを常に警戒。危険な芽を未然につぶし続けた。一方の佐賀東もボランチの吉村広之が中盤でアクセントを付けて試合を落ち着かせる。ともに中盤でハードワークする選手を抱えた両チームは、バイタルエリアからゴールに至るエリアで苦戦した。
PK戦が見えてきた試合終了間際に悲劇が起きる。佐賀東は、ゴール前でのマイボールをセーフティーにGKに返そうとした。緩いボールは出足鋭く狙っていた松本怜に奪われた。「決勝点の場面は(佐賀東の)キーパーが呼んでいて、それを松本が先読みした。DFの心理として強いパスは出せない、という心理を読んだ」(黒田監督・青森山田)
GKへのバックパスを奪った松本は、角度のない所からゴールに流し込むとそれが決勝点となった。青森山田の小澤竜己に試合後に笑顔はなかった。難しい試合だという事を自覚した、厳しい表情でバスに乗り込んでいた。
涙で充血した瞳の吉村は「自分たちのサッカーができた」と胸を張った。だから、悔しさで涙が止まらなかった。1回戦の丸岡とのPK戦で2本を止め(丸岡が外した3本のうち1本は枠の外)チームメイトからの絶大な信頼を得ていたGK川原隆広につなげなかった、という思いが、涙になっていた。
「佐賀のサッカーを立て直そうとがんばってきた」(蒲原監督)という佐賀東は、優勝候補の青森山田を追いつめながら、2回戦で姿を消している。
以上
2005.01.02 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
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