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【2006シーズン 戦力分析レポート:草津編】昇格2年目、覚悟のリスタート。植木監督の復帰で新たな一歩を踏み出す。(06.02.17)

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【今季の見どころ】

チーム始動日となった1月9日。J2昇格を決めた04年以来2年ぶりに草津の指揮を執ることになった植木繁晴監督は、全選手を集めて所信表明を行った。「昨年は、外から見ていて非常に悔しかった。正直、2年前に退任しなければよかったと後悔もした。今回は自分としても覚悟を決めて監督を引き受けさせてもらうので、この1年間、選手のみんなも覚悟してほしい」。一つひとつの言葉には決意が込められていた。 
そして、昨年まで主将を務めたベテラン・鳥居塚伸人がコーチ兼任選手(登録上は選手)となることが発表された。鳥居塚は03年の関東リーグ、04年のJFL時代にも植木監督の下でコーチを務め、大きな役割を果たした。今季の草津はヘッドコーチを置かずに、信頼関係で結ばれた「植木−鳥居塚体制」の復活でチーム再生を図ることになる。植木監督は鳥居塚を「ピッチ上の監督」と位置付けており、欠かすことが出来ないチームのキーマンになりそうだ。  

昨季、5勝8分31敗の勝ち点23でダントツの最下位に沈んだ草津。不甲斐ない成績に終わったチームにとって、今季はその二の舞だけは避けなければならない。植木監督は「ノルマは10勝」としながらも、上積みを虎視眈々と狙う。「10勝までは選手の力。そこから上は監督の力だと思っている」(植木監督)。下位グループから抜け出し、中位そして上位を目指すため、日々のミーティングで選手たちに戦術を授けている。  

今季の戦いのベースとなるのは3-5-2のシステム。1月下旬からのフォーメーション練習では、チーム全体の連動性を重視した頻繁なポジションチェンジが見られ、高いレベルの戦術理解とそれを着実にこなす運動量が求められていた。ただ、この動きはチームの将来的な完成型であって、現段階ではそのすべてが求められているわけではない。「理想」を選手たちに提示することで、到達点を自覚させるという狙いがある。今季は、一途に「理想」だけを追求するのではなく、臨機応変に「理想」と「現実」を使い分けていくという。  

昨季、リーグワーストの26得点だった得点力は、湘南から高田保則、福岡から196cmの大型FW太田恵介が加入したことで変化が見られそうだ。特に植木監督を慕って草津に移籍した高田は、新天地でハツラツとしたパフォーマンスを見せており、01年以来の2ケタ得点も十分に期待できる。 
守備面でのポイントは、DFチカをボランチに、166cmのMF鳥居塚をセンターバックにコンバートしたこと。チカは、2月12日のテストマッチ・JFLホンダロック戦で、ゴールを決めるなど早くも威力を発揮している。鳥居塚は、カバーリングのほかに、最後尾から指示を与える役割を課せられる。前線への正確なロングフィードもチームの大きな武器となる。しかし、このコンバートは大きなリスクがあることも否定できない。昨年のような失敗が許されない状況ながらも危険を伴う配置転換を行う理由は、植木監督がよりエキサイティングなサッカーを目指しているからにほかならない。「J2のサッカーは変わりつつある。守ってカウンターだけのサッカーでは、もうサポーターはついて来ない。勝点を挙げなければいけないという現実もあるが、シーズンを通じて魅力的なサッカーを追求していきたい」と植木監督。チームは新たな方向への一歩を踏み出している。  

今オフ、クラブは大幅に選手を入れ替え、若手中心のチームへと切り替えを図った。昨季、J2のレベルそしてプロの厳しさを肌で感じた選手たちは、屈辱を胸に再起を誓う。J昇格2年目となる今年は、クラブの真価が問われている。  

【注目の新戦力】

●MF 10 島田裕介 
●MF 15 中井義樹 
今季の新加入選手は新卒を含めて9人。その中でも、J1から移籍した2人の左利きMF・島田裕介(大宮)と中井義樹(C大阪)はテクニックを持っており、面白い存在になっている。ともにJ1では出場機会に恵まれなかったが潜在能力は高く、J2の舞台でその力を存分に発揮してくれそうだ。 
クラブ側が背番号「10」とトップ下のポジションを用意して獲得した島田は、足元の技術に優れたMFで、正確なFKも大きな武器。一部では「大宮のマラドーナ」と呼ばれていたとか。昨季、直接FKでゴールネットを揺らしたことが一度もなかったチームにとっては頼もしい存在だ。「ボールを持ったときの動きを見てほしい」という島田の言葉からも自信がうかがえる。 
ボランチでの起用が予想される中井は、滑らかなボールタッチと、非凡なパスセンスが特徴だ。テストマッチなどでは、中盤の底から絶妙なパスを展開しており、攻撃の起点として期待は高まる。「ボールにいちばん触れるポジションでゲームを組み立てたい。練習では無理そうな場所にもどんどんボールを出していって、周囲の選手とパス感覚を合わせたい」と中井。今季の草津は、2人のレフティーが織り成すファンタスティックなプレーに注目だ。  

【日本代表へイチオシ】

●MF 19 後藤涼 
草津からのイチオシ・プレーヤーとしては、MF後藤涼の名前を挙げたい。地元・前橋育英高から加入した2年目の選手で、昨季はルーキーながら16試合に出場(12試合先発)した。もちろん、今すぐに日本代表入りというわけにはいかないが、可能性は秘めている。 
前橋育英高では、浦和・細貝萌、清水・青山直晃と同期。後藤の草津入りの際、会見に同席した同校の山田監督が「地味だが、どんな状況でもあきらめずに戦う非常にいい選手。細貝や青山と比べても将来性では引けをとらない」と語っていたことが印象に残っている。171cmと小柄ながら、ずば抜けた体力の持ち主で長距離走は常にチーム1位。豊富な運動量を活かしてピッチを駆け回り、勝負どころではドリブルで切り込むアタッカーだ。植木監督も大きな期待を寄せており、使いながら育てていくと見られる。今年は、右サイドのほかにトップ下でも出番がありそうだ。本人も将来の日本代表入りを夢見ていて、目標に向かって努力を続けている。難点があるとすれば「怠け癖」。昨年末から運転免許を取るため教習所に通っているが、オフの間は全く行かなかった様子で、今年中の取得が危ぶまれている。 
最後に、「マッスル」というニックネームが付けられている主将・佐藤正美の鋼鉄の筋肉と、196cmという脅威の高さを誇る太田恵介の身長も「代表クラス」であることを付け加えておきたい。  

【開幕時の布陣予想】

今季のフォーメーションは3-5-2。昨季はシーズン終盤まで試行錯誤を続けフォーメーションが定まらなかったが、今季は2年ぶりの再登板となった植木監督に迷いはない。一昨年にJ2昇格を成し遂げた時と同じ布陣に戻して、巻き返しを狙う。ただ、JFL時代とは選手が大幅に入れ替わっており、各選手の特徴を組み込んだ新しいサッカーが見られそうだ。  

注目は、昨年まで3バックの一角だったDFチカの中盤起用と、MF鳥居塚のセンターバックへのコンバート。チカのボランチ策は、中盤の底でロングボールを跳ね返し、起点にする狙いがある。鳥居塚は、身長166cmというJリーグでも稀にみるセンターバックとなるが、チカが前で壁となるため実際にはスイーパーやリベロのイメージに近い。キャンプのテストマッチでは昨年同様に齋藤のセンターバックも試していて、鳥居塚がフィットしない場合には齋藤をその位置に戻すと見られる。 
植木監督は「戦力差があるチームには対処法で勝点を奪いにいく」と不敵な笑みを浮かべており、J1からの降格クラブには、3-5-2にとらわれない奇策で勝負に出る可能性は十分にある。  


Reported by 伊藤寿学


2006開幕直前 クラブ別キャンプ・戦力分析レポート
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