磐田の今年の目標は、もちろんただひとつ。3年間遠ざかっているJリーグ王座の奪回にある。ただし、「Jリーグ優勝にチャレンジするという新しい気持ちで、新しいチーム作りをする意識が大切」(山本昌邦監督)というように、過去にとらわれることなく、新たな磐田の強さを構築しながら優勝を狙っていくという考え方だ。
その新しいサッカーについて、山本監督は2004年11月の就任以来「ポゼッションとダイレクトプレーの融合」を口にしている。つまり磐田の伝統的なパスサッカーに、奪ってから素早くボールを相手ゴールまで運ぶというダイレクトプレーを取り入れ、状況に応じてバランス良く使い分けていくという考え方だ。また、その中でどちらにも共通するテーマは、「ボールも人もどんどんスペースへ動いていく」という部分。相手に引いて守られたときでも、ボールと人の活発な動きで相手を揺さぶり、スペースを作り出していくことを目指している。
クラブスローガンも3年続けて「羅針」と、世界への船出を強く意識しているだけに、サッカーの内容も世界レベルで通用するものを追求する。ただ、「むずかしい挑戦だというのはわかっているが、あえてチャレンジしている」と山本監督も語る通り、やはり完成には時間がかかる。大型補強で話題を呼んだ昨年は、ケガ人の多さもあって、結果を出すところまで至らなかったが、「イメージはみんな持てている」というようにベースはできつつある。2月19日のプレシーズンマッチ・清水戦でも、「中盤のポジションチェンジを激しくして、相手もなかなかつかまえきれなかったし、うまくボールが入ったときはチャンスになっていた」(名波浩)と手応えはつかめた。
さらに若手も急成長し、上下のレベル差がこれまでにないほど詰まっている。ひと頃の磐田であれば、高卒の新人選手は2〜3年は下積みという雰囲気があったが、今年2年目の岡本達也、藤井貴、森下俊らは昨年AFCチャンピオンズリーグなどですでに公式戦デビューを果たし、今年は本気で先輩からのポジション奪取を狙っている。これも、磐田の大きな変化と言える部分だ。また、ベテランもそれに触発されて集中力を高めるという相乗効果も表われている。
そんな流れの中で、今年はフィジカル強化の面でも開幕に向けて充実したトレーニングができたが、問題は日本代表組の不在。日本代表の川口能活、田中誠、福西崇史、村井慎二と、韓国代表の金珍圭の計5人がほとんど戦術練習に参加できないまま開幕を迎えることになる。そのため、「3月は我慢しながらチームを成熟させていく」と山本監督。ただ、昨年も序盤のつまずきが後々まで響いただけに、リーグ制覇という目標を考えると3月にどれだけ我慢強く結果を出し、上位に食らいついていけるかが大きなポイントになりそうだ。
そして4月以降、代表組がチームにフィットしてきた中で、目指すサッカーがどれだけ表現できるのか。大いに楽しみにしたい。
【注目の新戦力】
●MF 25 ファブリシオ
注目は、やはりブラジルの名門コリンチャンスから獲得したファブリシオ。まだ23歳ながらブラジルで数多くのタイトルを獲得しており、「勝ち方を知っている選手」と山本監督は紹介した。彼自身も「自分はタイトルにこだわる人間なので、ジュビロでタイトルを取るのが最大の目標」と、どんなゲームでも勝利に強くこだわっている。
技術の高さ、パスの正確さ、運動量豊富で献身的な攻守など、すでにプレシーズンマッチで多くのサポーターが確認している。「あれだけの能力があればどのポジションでもやれるけど、本人がいちばんやりやすいところで使いたい」(山本監督)ということで、ボランチでの起用(もちろん開幕スタメン)が濃厚だ。日本代表の福西とのコンビが成熟してくれば、どちらもダイナミックな攻め上がりができる選手なので、日本一攻撃力のあるドイス・ボランチとなりうるだろう。
「守備の連係については、まだこれから」(名波)という段階だが、攻撃時には周りの選手たちも安心して彼にボールを集めており、そこから持ちすぎることなく、広い視野と早い判断でワイドにパスを供給する姿が見られる。磐田が目指すサッカーにぴったりとマッチする選手という意味でも、非常に楽しみな新戦力と言えるだろう。
【日本代表へイチオシ】
●FW 18 前田遼一
年代別の日本代表や元日本代表も含めれば、まさに代表経験者だらけの磐田。将来の日本代表候補という意味でも、カレン ロバートや菊地直哉など楽しみな選手が多いが、(復帰組を除いて)今いちばん代表入りに近いのは、やはり前田遼一ではないだろうか。
昨年は、7月頃に素晴らしいパフォーマンスを見せ、代表入りも近いのではと噂されたが、その後ケガに泣かされて噂も立ち消えになってしまった。今年も内転筋痛のために別メニュー調整が多くなっており、6月のドイツW杯への出場はむずかしいかもしれないが、コンディションさえ万全なら今すぐ代表に入っても不思議のない選手だ。
もともと、そのテクニックは非常に注目されていて、2002年(当時20歳)にトルシエ・ジャパンの代表合宿に呼ばれたこともある。文字通り足に吸いつくようなボール扱いのうまさは、日本人FWの中でも1、2を争うレベルで、そこに身体の強さが伴ってきたためキープ力は抜群。スタミナにも自信があり、豊富な運動量で前線からの献身的な守備もいとわない。さらに昨年は、ゴールへの貪欲さという意味でも大きく成長して、わずかでもチャンスがあればどんどんシュートを打っていくようになり、大先輩・中山雅史のような泥臭いゴールや182cmの高さを生かしたヘディングのゴールも増えてきた。昨年のリーグ戦では1,874分(約21試合分)出場して12得点と得点率も高い。前田がこのまま力を伸ばしていけば、日本代表は今までになかったタイプのストライカーを得ることになるだろう。
【開幕時の布陣予想】
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また、2トップの組み合わせは、その時点で調子の良い選手を使うことになるだろうし、岡本、藤井の19歳コンビにもチャンスはあるはずだ。とにかく先発がすべてカッコ内の選手に代わったとしても、それぞれ十分な能力があり、層の厚さはやはりJリーグ有数と言える。
3バックは、2人がマンマークで中央がリベロという形ではなく、基本的にフラットなラインを作り、お互いにカバーリングしあうというやり方。また中盤では、去年よりも流動的にポジションを入れ換えていく場面が多く見られるようになるはずだ。もちろん両アウトサイドの選手も、サイドに張って縦に動くだけでなく、中に絞って味方が使えるスペースを生み出すような動きも求められてくる。そうしていかにスペースを作り、それを利用していくかという部分も、今年の磐田の大きな見どころとなるだろう。
Reported by 前島芳雄
2006開幕直前 クラブ別キャンプ・戦力分析レポート
















