5月6日(土) 2006 J1リーグ戦 第12節
F東京 1 - 2 大宮 (15:04/味スタ/25,128人)
得点者:'8 ルーカス(F東京)、'77 冨田大介(大宮)、'89 小林大悟(大宮)
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■特J!プレイヤー: 小林 大悟選手(大宮)
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時計は90分を回り、指定された3分のロスタイムも間もなく終わりを告げようとしたその瞬間、大宮の小林大悟のFKが炸裂した。この日数度に渡って素早いプレースキックからF東京の隙を窺っていた大宮の背番号8は、ラストチャンスのこの時ばかりはしっかりとボールとGKを見据え、そしてきっちりと仕事を果たしてみせた。見事なまでの土壇場での逆転劇、後半開始から開幕したシナリオを、F東京はついに食い止めることはできなかった。
前半、試合は両者の最近の成績を表すように、F東京が押し込み、大宮が受けに回る形で進む。試合後に大宮の三浦俊也監督が「ディフェンスの部分でアグレッシブさが欠けてしまった」と反省の弁を述べた通り、F東京のテンポある攻撃の前に、大宮は守備が完全に後手後手の状態となってしまう。そして、この流れのままF東京は前半早々にPKのチャンスを獲得し、これをルーカスがしっかりと沈めた。3戦連発と好調を維持するルーカスは、今季8得点目を記録している。
綺麗に並ぶ大宮の3ラインに対し、その後も前線とDFラインが上手く連携して中盤で主導権を握ったF東京。サポーターも試合序盤から「セクシー東京!」の掛け声を飛ばし、押せ押せムードで追加点をねらっていく。34分には日本代表DF茂庭照幸が故障でピッチを退くアクシデントも、途中出場の増嶋竜也がその穴を埋めた。だが、前半のうちに再びゴールを割ることは出来ず、結果的にこのいい流れで得点できなかったことが勝負を分けることとなってしまう。
後半開始と同時に、大宮の三浦監督は思い切った策に出た。一気に2人を交代し、システムを変更。そして、トップ下に桜井直人を配置したことが、F東京に歪みを引き起こした。真綿で首を絞められるかのように、徐々に徐々に試合のペースを失っていくF東京。「中盤のリズムが悪かったので伊野波(雅彦)を入れてマークをしっかりしようと思った。また、リチェーリを入れて前線のスピードを活かそうとした」(アレッシャンドレガーロ監督)という交代策で、トップ下には梶山陽平が入り、2トップにはルーカスとリチェーリが入るも、打開策を見出せない。
交代という面で見れば、増嶋や伊野波という若手が入っても大きな崩れは見せず、このまま押し切る強さを見せてくれる期待は確実にあった。だが、増嶋が「攻め疲れのような形になってしまった」と振り返るように、前線でボールが収まらないことでカウンターを連発され、今野泰幸の「起点がなくてずるずると下がってしまった」というコメントにもあるように、連敗中に見られた悪い時のF東京のサッカーが顔を覗かせる。
そして77分、直前の決定的なピンチをGK土肥洋一のスーパーセーブで防いだF東京だったが、これで与えたCKから失点。小林大の正確なキックにDF冨田大介が頭で合わせ、嫌な流れのままF東京が同点に追い付かれてしまった。この得点で勝負の行方は分からなくなり、ここからゲームは一気にヒートアップする。両監督がともにタッチライン際で声をからし、ピッチ上ではカウンターの応酬。会場全体から拍手が沸き起こる熱戦となったが、結局最後はこの日のヒーロー小林大が締めくくったのだった。
失点はセットプレーからのみ、さらに前半見せた勢いのあるサッカーは、間違いなく大宮を退けようとしていた。だが、結果は敗戦。連戦から来る疲労、早い時間帯に先制したことでの慢心、勝点を逃した理由は数あれど、ここ3戦でチームが見せていた終盤での粘りが見られなかったのは残念だった。しかし、中断を前にしたこの負けは、選手たちに成長への強い気持ちを生んだはずである。公式戦泥沼の4連敗からの2連勝で得た自信を、確かなものへと変えるために、この試合の苦い結果を糧に出来るかに注目しよう。
一方、リーグ戦5試合ぶりに勝利の美酒を味わった大宮を救ったのは、やはりこの選手だった。1ゴール1アシストとまさに獅子奮迅の活躍で、三浦監督に「サッカーのゲームにおいて点を取れる選手がいかに貴重かということ」と言わしめた小林大の存在は、大宮にとって絶対的なもの。あとは、違いを生み出せるこの男への依存度をいかに減らしていくか。前半戦最後をいい形で締めくくれたことに満足することなく、この試合をチームの上積みへの第一歩としたい。
以上
2006.05.06 Reported by 平松 順二(ISM)
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