5月6日(土) 2006 J1リーグ戦 第12節
広島 1 - 0 福岡 (17:06/広島ビ/12,466人)
得点者:'87 駒野友一(広島)
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■特J!プレイヤー: 駒野 友一選手(広島)
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それはまるで、「ハドル」のように見えた。「ハドル」とは、アメリカンフットボールでクオーターバックが中心となって次の攻撃パターンを決める打ち合わせのこと。87分、高柳一誠のドリブルで得たペナルティエリア近くでのFKの時、広島は6人以上の選手が円陣をつくって話し合いを行ったシーンが、まさに「ハドル」だった。
「ゴールまでの距離が近すぎる、と思ったんです」と証言してくれたのは、その中心にいた戸田和幸。距離が近すぎる時に壁の上を超えるキックを使うと、曲り落ちる前にバーを超えてしまうケースが多い。戸田はそこを懸念した。「足下を抜くようなシュートを撃とう。キックはキーパーサイドに蹴ろう。このピッチ状態なら、キャッチは難しい。はじく可能性が高いからそこに詰めていけばゴールできる」と、この『ハドル』では確認された。しかし、単純に蹴ったのでは壁にはじかれる。そこで、広島は一つのトリックを使った。
福岡がつくる壁の中に、佐藤寿人がスッと入る。そこに上野優作や服部公太が加わり、グレーのユニフォームの中に紫の戦士が3人割って入った形になった。そうなると当然、その間を通してくるのか、と福岡側は警戒する。そこでもう一つ、ベットがダミーとなってタイミングをずらす作戦に出た。ベットが細かなステップで身体を前屈みにさせながらダッシュを開始する。それを合図として、上野と服部が壁の前に身体を動かし、その後ろにいた佐藤寿は相手に身体を預けつつも、壁の後ろ側に移動した。当然、こぼれたボールを押し込むためだ。
ベットが足でボールをまたぐ。この瞬間、わずかにGKの神山は体重を左足に移していた。その時、後ろから走ってきた駒野が、豪快に右足を振り抜く。ボールは、広島の3選手が身体を張ってつくった、まさに「ボール一個分」の壁の隙間を正確に打ち抜き、反応が一瞬だけ遅れた神山の右脇をすり抜けてゴールに吸い込まれた。その瞬間、駒野は走った。左こぶしをつきあげ、さらに右手を振りながらジャンプした。いつも冷静な駒野が見せた歓喜の爆発に、大雨の中で声援を振り絞っていた広島サポーターは狂喜した。そこに紫の戦士が次々と加わり、最後は佐藤寿が駒野に抱きついて、共に肩を組みサポーターの大声援に手を挙げた。
それにしても、まさか広島にゴールが入るとは。前半こそ、広島・望月監督が福岡用に準備した「3ボランチシステム」が機能、ベットと森崎浩が福岡の強力な両サイドからの攻撃をケアし、戸田が獅子奮迅の運動量を見せて中央のスペースを埋めることで、福岡の攻撃を水際で跳ね返すことができた。しかし、後半は前線の運動量が落ちたことでセカンドボールも拾えなくなり、福岡の両サイドに深く攻め込まれるようになった。前半は余裕があった広島の最終ラインもいつの間にかペナルティエリアの中にまで引いてしまい、そこにどんどん福岡のアタッカーが入ってチャンスをつくる。下田の度重なるスーパーな反応がなかったら、広島は福岡の前に膝を屈していたかもしれない。
だが、そういうピンチの連続でも、広島の選手たちは誰一人として集中を切らさなかった。身体を張って突破を止め、味方のカバーを信じてプレスに走った。超守備的な戦術と揶揄されても意に介さず、ただひたすら、守りきることに専念した。その割り切りと徹底が福岡の隙を誘い、高柳のドリブルから始まる得点シーンを演出したのだろう。
福岡は、両サイドを中心にクロスを入れる「自分たちのサッカー」を貫いた。しかし、広島のブロックを突き崩すだけのアイディアに乏しく、圧倒的なボール支配率のわりには決定的なチャンスは少なかった。課題となっている得点力不足解消のための処方箋は、この試合でも描けなかったと言えるだろう。広島ほどゴール前のスペースを与えないチームは他にはないとしても、だ。
この極端な守備的サッカーが広島にとってどういう影響を及ぼしたのか。それは、シーズンが終わってみないとわからない。しかし、望月監督は結果として2勝1分1敗、勝ち点7という成績を残し、順位も15位とチームは降格圏内を脱出した。「とにかく勝ち点を積み上げること」と記者会見時に語った、その通りの実績を残したことは賞賛に値する。この後、望月監督はカップ戦3試合の指揮をとった後、次の指揮官へとバトンを渡すことになる。
以上
2006.05.07 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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