5月27日（土） 2006 J2リーグ戦 第18節
東京Ｖ 2 - 0 湘南　（14:04／西が丘／2,982人）
得点者：'24 大野敏隆（東京Ｖ）、'76 平本一樹（東京Ｖ）
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時折激しい雨が降るどんよりとした空模様となった西が丘サッカー場。４連敗中のチームを憂い、試合開始を待つ東京Ｖサポーターもスタジアムを楽しむムードではなかった。この湘南戦を落とせばチームは泥沼の５連敗。Ｊ１昇格の目標をも見失いかねない事態に、緊迫した雰囲気さえ漂っていた。

が、一方で東京Ｖの選手達は「今までに無くいい雰囲気で試合に臨めた（ＦＷ平本）」と言う。理由は昨夜、前泊のホテル内で行われた選手同士のミーティング。「集まって、お互い言いたい事を言おうと（ＭＦ久場）」始まったこのミーティングで、選手達は「皆でまとまろう。選手同士がチームにならないと勝てるはずがない（ＤＦ戸川）」と気持ちをひとつにすることを確認しあい、キックオフを迎えていた。

前半を「３０分まで落ち着いてベンチで見ていられた」とラモス監督は振り返った。実際には東京Ｖがゲームの主導権を握るまでには時間を要している。いや、湘南は細かくパスを繋ぎ東京Ｖゴール前に繰り返し進入。セットプレーなどチャンスの数では東京Ｖを上回っていたくらいだ。

しかし、この日の東京Ｖは守備に関して「行くところと引くところの意思統一ができていた（ＤＦ萩村）」。中盤からボールに対ししっかりとプレッシャーをかけることで最終ラインも落ち着いて守備応対。セカンドボールを根気よく拾い、攻撃では大野を起点に素早く仕掛けていく。速さのある斎藤・松浦の２トップを生かしたスペースへのボールはなかなか実を結ばなかったが、中央で無理をして繋がないことで、ここ数試合のように高い位置でボールを奪われて大きなピンチを招くことも無かった。

東京Ｖが完全に主導権を握るのは、チーム６試合ぶりの得点が生まれた２４分。
金澤がゴール前に放りこんだボールのクリアボールをペナルティエリアぎりぎりの位置にいたＭＦ大野が思い切り良くボレーシュート。大野の移籍後初ゴールはゴール左隅に突き刺さり、東京Ｖが貴重な先制点を挙げた。

「今のチーム状態で先制されると苦しくなる」と湘南・ＭＦ佐藤。連敗の重圧は湘南にもあり、連敗中のチームの例に漏れず選手達は１失点での動揺を認めた。
「失点すると、自分達のストロングポイントを忘れてしまう」と城定は表現。焦りからパス回しが落ち着かず、佐藤、加藤を中心に小気味良いパス交換で作っていたリズムが崩れ攻撃に時間がかかるように。そこを見逃さない東京Ｖに中盤でボールを奪わる場面が増える。先制で更に勢いに乗る東京Ｖに気持ちの部分でも押し込まれたまま、湘南は前半を終えることになった。

後半に入り、先に動いたのは追加点の欲しいラモス監督。「勝負所で投入したい」としていたＦＷ平本を５６分にピッチへ。それに呼応するように上田監督も５８分、ＦＷ横山に代えＭＦ坂本を投入、坂本はボランチに入り、中盤に入っていた外池をトップの位置へ変更する。前線にターゲットができた湘南は狙いがはっきりとし、東京Ｖゴール前を脅かすシーン見せ始めた。

すると７２分、その外池が決定的な場面を迎える。左サイドをえぐったＤＦ尾亦からのクロスに、外池が高さを生かしてヘディングシュート。しかしこれはクロスバーに阻まれ同点のチャンスを逃してしまう。

対して、ピンチの後にチャンスを掴んだのは東京Ｖ。７６分、斎藤がポストプレーから平本がエリア内へ中央からドリブル突破をはかったところを湘南ＤＦが思わずファウルし、ＰＫゲット。キッカー・平本は、「右に蹴ると決めてました」の言葉通り、迷わず左足を振りぬきゴール右隅へ鋭いシュートを決めた。

これで２−０、湘南にとっては万事休す。結局試合はこのままのスコアで終了した。

この結果により、東京Ｖは連敗を４でストップ。順位も暫定ながら４位に浮上した。ラモス監督も「勝因はひとつ。選手がひとつになって戦ったこと」とコメントしているが、選手達は９０分間集中した戦いぶりを見せてくれた。あれだけピッチ内で声を掛け合っている姿を見るのも久しぶりのことだ。
連敗の中でともすればバラバラになりかけたチームが、ひとつになって戦い結果を得た価値は大きい。昨夜選手が自主的に始めたミーティングを含め、この勝利が本当に「チーム」になるきっかけになるか。始動から３ヶ月余り、「遅いと言われるかもしれないけど、まだまだこれから（ラモス監督）」なのだ。

一方の湘南は３連敗。苦渋に満ちた表情でスタジアムを後にした選手達の後ろ姿に、つい最近までの東京Ｖの選手達の姿が重なって見えた。

以上

2006.05.28 Reported by 高木 聖佳