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【J2:第27節 水戸 vs 湘南 レポート】激戦を制した水戸。わずか1点、わずか数秒にこめられた歴然としたクラブのビジョンの差(06.07.13)

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7月12日(水) 2006 J2リーグ戦 第27節
水戸 3 - 2 湘南 (19:04/笠松/1,279人)
得点者:'27 佐藤悠介(湘南)、'53 大和田真史(水戸)、'80 桑原剛(水戸)、'89 石原直樹(湘南)、'89 眞行寺和彦(水戸)
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今の水戸には下を向く選手は誰もいない。

水戸が1点リードで迎えた後半ロスタイム、10人の水戸に対し、湘南が波状攻撃を仕掛ける。そして、左サイド加藤からのクロスを石原が頭で合わせ、同点ゴール。そのまま試合はドローで終わるかと思われた。しかし、水戸の選手たちは前だけを見ていた。直後に行われたキックオフ、勢いよく飛び出したのは左サイドの眞行寺だった。「相手がスローモーションに見えた」という眞行寺はボールを受けるとそこから巧みなステップのドリブルを披露。湘南DF3人をかわし、豪快に右足を振り抜くとボールはゴール左隅に突き刺さり、勝ち越しゴールとなったのだ。わずか1プレーが分けた『天国』と『地獄』。しかし、その差は90分間を通して非常に大きなものとして存在していた。

「アンデルソンに対しての厳しいマークを意図した。それと高い位置でサイド攻撃をしたいと思った」(菅野監督)ということで今季はじめての3−5−2システムでスタートした湘南だったが、付け焼刃の戦術が通用するほど今の水戸は甘くない。「(湘南は)3バックで来ると予想していた」と大和田が言うように策士・前田監督はその奇襲も見抜いていたのだ。序盤こそ、湘南がサイドを起点に攻め込む姿が見られたが、5分過ぎから水戸が落ち着いて対応。ボールを支配する時間が増えていった。だが、27分に湘南・佐藤の蹴ったFKがゴール右隅に決まると様相は変わる。「失点をしてチームがバラバラになりかけた」と大和田が言うように水戸の連携が崩れはじめ、その後は湘南がペースを握って前半を終了することとなった。

しかし、そこから水戸の強さが発揮されることとなる。その強さとは『チームが一つになれること』である。「ハーフタイムに吉本キャプテンや河野を中心に『これから俺らの成長を見せよう』と檄を飛ばし、選手自身が気持ちを見せてくれた」と前田監督が言うように「きつい時こそ一つになる」(大和田)ことができるのが、今の水戸なのである。

さらに、もう一つ、水戸の強さを挙げるのならば、前田監督の見事な采配と言えよう。前半、チームがうまくいっていないと見ると、すかさず西野を投入。そして、後半開始から椎原を入れる積極采配で戦況を変えたのである。前田監督が「影のMVP」と賞する西野は前線から激しいチェイシング。60分に大和田が退場してからは最終ラインまで下がって守備をするなど、攻守に大きく貢献した。そして、なんといってもこの日のヒーローは椎原だ。「このチームに来てからはじめて自分らしいプレーができた」と言うように中盤でまるでフランス代表のジダンのようなエレガントなパスを連発。『守備の水戸』という概念を吹き飛ばすようなゲームメイクでチャンスをつくり出していった。そして、53分、椎原のスルーパスを受けた眞行寺が大和田にバックパス。中央に切り込んだ大和田のミドルシュートがゴール右隅に決まり、同点ゴールは生まれた。

その後も椎原を中心に攻め込む水戸だったが、60分に大和田がラフプレーで退場。数的不利の戦いを余儀なくされることとなる。だが、そうした逆境になればなるほど、水戸はたくましさを増していった。桑原が、眞行寺が、倉本が果敢にドリブル突破を敢行。そして、椎原が中盤を完全に制圧。数的不利を感じさせない試合運びを見せ、80分、左サイドからのFKを桑原が直接ゴールに蹴り込み、逆転に成功した。その後、ロスタイムでパワープレーに屈し、逃げ切ることはできなかったが、眞行寺のゴールで勝利をもぎとったのである。

「個人にとっても、チームにとってもすごくいい勝ち方」と前田監督は振り返る。8日に行われた鹿島との練習試合で小椋と椎原が負傷。さらに守備の要・時崎が出場停止と水戸は決して万全な状況ではなかった。さらに大和田が60分で退場するアクシデントにも見舞われることとなるなど、水戸はこの上なく苦しい状況であったのだ。しかし、前田監督が「ウチのチームは誰が出ても大丈夫」と豪語するようにチャンスを与えられた選手がしっかりと結果を残すことができるのである。退場した左サイドバックの大和田の穴はトップ下で起用された秦が埋めた。それができるのはチームとしての強化・コンセプトがはっきりしているからであり、4年目となる前田体制の築いてきた賜物である。試行錯誤しながらつくりあげたものが、4年という年月をかけて形になりつつあるのだ。その方向性が間違っていないということを証明した勝利となった。

対する湘南は一昨年途中から上田前監督が就任し、長いビジョンでチームづくりをするはずであったが、今季途中に辞任。守備をベースにしていた上田前監督から攻撃を重視する菅野監督への継投などチームづくりに一貫性が見えてこない。この日もいつもの4バックから3バックにしたが、機能せず。菅野監督の苦悩が伺える試合展開となった。わずか1点の差、しかもほんの数秒の差であるが、そこにはクラブのビジョンの歴然とした差が明確に表れていた。

「今日は価値のある勝利」と前田監督が言うように水戸にとって文句のない勝ちっぷりであった。しかし、2つほど、残念なことが感じられた試合となった。1つは観客が1279人しか入らなかったこと。「こういうゲームをやっているので、もっとお客さんに来てもらいたい」と前田監督が切実に訴えるように、試合内容とは裏腹にあまりに悲しい客の入りであった。

そして、もう1つは水戸から湘南に移籍した3人(ファビオ、須田、北島)がピッチに立っていないことだ(ファビオは帰国してしまったが…)。特に北島のファイティングスピリットは今の湘南には絶対に必要なものだろう。この日、湘南のプレーを見た水戸のサポーターは誰もがそう思ったはずである。

以上

2006.07.13 Reported by 佐藤拓也
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