8月26日(土) 2006 J2リーグ戦 第36節
札幌 1 - 2 横浜FC (14:04/札幌厚別/12,185人)
得点者:'19 加賀健一(札幌)、'48 アレモン(横浜FC)、'78 アレモン(横浜FC)
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先週の土曜日(8月19日)にホームで仙台を下し、にわかに勢いが付きつつあった札幌。水曜日に行われた前節(35節)は試合が組まれておらず、首都圏に比べて涼しい札幌でしっかりと休養が取れた。そうした流れを考えると札幌には追い風が吹きつつあったし、この横浜FC戦には1万2千人を越える観衆が詰め掛けた。このタイミングで連勝を果たせばさらなる勢いが生まれるのではないか、そんな予感もあったが、結果としては1−2のスコアで敗戦。試合の前半は優勢に進めていたことを考えると、非常に悔しい敗戦である。
「前線から最終ラインまでの距離が開いてしまった」。FWの城がこう振り返ったように、前半の横浜FCはDFとMFが4人ずつ2つのラインをしっかりと形成してはいたが、札幌のボール保持者にアプローチを仕掛けたりパスコースを限定したりという動きができず、苦戦した。横浜FCがこうした苦しい立ち上がりになった理由は「コンディションの問題だったと思う」と高木監督は言う。前節は休みだった札幌に対し、その節は水曜日に仙台で試合を行い、北海道へ移動して中2日でこの試合を戦う横浜FC。「この暑さは札幌の選手よりも横浜FCの選手の方がこたえたのではないか」と札幌・柳下監督。どちらのチームも同じ気温の中で戦うわけだが、移動と連戦の疲れを持った横浜FCの方がこのデーゲームに苦しんだようである。
相手からのプレッシャーを受けずにボールを持てる札幌は中盤でリズムよくボールを回す。発熱により欠場した砂川に代わってトップ下の位置でスタメン起用された上里が起点となって左サイドにボールを展開したり、前線の石井にうまくクサビのボールが入って左サイドのスペースを突くという場面が続けて生まれる。
19分に得た先制点はオーバーラップした加賀が右サイドから個人で突破して決めたものだが、その直前の展開は守備的MFの大塚が中盤の底で起点になり、西谷、鈴木が丁寧にパスをつないで演出したもの。チームとして作り出したチャンスだった。パスを回しての攻撃を意識する札幌にとって、相手からのプレッシャーが弱い状況というのは、自分たちのスタイルを発揮できる格好のシチュエーションである。
だが、札幌としては自分たちのスタイルで攻撃を仕掛けられる前半のうちに強引にでも2点目を奪いに行けなかったことが最大の敗因だ。同じシチュエーションで最後まで進められるほど、試合というのは甘くない。横浜FCのストライカー、アレモンがなかなかチャンスに絡めなかったり審判のジャッジに若干ナーバスになっていたことを考えれば、多少のリスクを冒して攻めたとしても失点の可能性はそれほど高くなかったはず。ハーフタイムに突入してしまえば相手は修正を施してくるわけだし、札幌はコンディションが良かったわけだから前半終了間際は多少無理をしても良いい時間帯だった。
ハーフタイムの横浜FCの修正は的確だった。山口、吉野という2人の守備的MFのうち、吉野を高い位置に上げ、2トップのうちのひとりである城にも中盤で守備をさせることで札幌のパス回しにストップをかける。右サイドバックの位置にはパス能力がある崔成勇を投入し、相手からのプレッシャーがあまりかからないこのエリアを起点として攻撃を仕掛け始めた。
もちろん、守備的MFを減らしたことでバイタルエリアにスペースを与えてしまうというリスクもある。実際に、このエリアからミドルシュートを打たれてしまう場面は何度か発生した。だが、「相手のトップ下の上里が、それほど斜めの動きをしてこなかった」と見極めて、このエリアでリスクを冒す決断をした高木監督の采配は上手かった。
そうした采配が功を奏し、流れを上手く引き寄せた横浜FCは「後半立ち上がり集中」という高木監督の指示通り、後半開始早々の48分にアレモンが左足のシュートで同点ゴールを奪い、78分には再び、崔成勇からのパスを受けたアレモンが浮き球のシュートでゴールネットを揺らした。
やはり、決めるべき時に決められるタレントの存在というのは大きい。札幌は後半もいくつか惜しいチャンスを作っており、75分ころの藤田のクロスに合わせた石井のヘディングシュートなどは、勝つためには絶対に決めなければいけないものだった。右足での精度のあるクロスボールが蹴れる藤田を2トップの右側に投入し、相手の裏のスペースに飛び出したこの選手が幾度かチャンスを演出しており、そのチャンスがひとつでも実っていれば今度は柳下監督の采配が的中していたはず。つまり、決定的な働きができる個の力というのは、勝敗のみならず指揮官の評価までも大きく左右してしまうほど重要な意味を持つのだ。
そうした意味でいえば、札幌は個の力を持ったフッキを出場停止で欠いていたことが結果として響いたのかもしれない。だが、ボールを保持する時間が長いフッキがいれば、前半に見せたようなテンポ良いパス回しは難しかっただろうから、その辺りの判断は難しい。
試合後、何人もの選手が「前半は内容が良くなかった」と話した横浜FC。一方の札幌はほとんどの選手が「前半は良い流れでできていた」と振り返る。立ち上がりが悪いながらも結果として勝利を引き寄せられる横浜FCと、良いリズムで試合を進めながらも勝ちきることのできない札幌。そうした差が、現在の順位に明確に表れていると言っていいだろう。
以上
2006.08.26 Reported by 斉藤宏則
J’s GOALニュース
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