8月26日(土) 2006 J1リーグ戦 第20節
鹿島 0 - 2 広島 (18:30/カシマ/14,052人)
得点者:'49 青山敏弘(広島)、'84 オウンゴ−ル(広島)
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「浦和レッズに2−0から2−2に追いつかれたダメージをまだ何人かの選手が抱えている。この1週間の戦いぶりは精神的な弱さを物語っている」とパウロ・アウトゥオリ監督はため息交じりに話した。その複雑な胸中もよく理解できる。3連敗中で15位に低迷するサンフレッチェ広島を前半から圧倒。野沢拓也のシュートがポストを叩くなど、勝利は遠くはないと思われる展開だったからだ。しかし後半開始早々に失点するとチームは混乱。終盤には守備陣のミスで2点目を失い、そのまま敗れた。イタリア・セリエAのメッシーナ移籍のため、この一戦がラストになると見られた小笠原満男も不発。優勝の可能性はさらに遠のいてしまった。かつての常勝軍団は今季最大の窮地に追い込まれた…。
「夏を制する者はJリーグを制する」といわれる8月。5連戦も残り2試合となった。鹿島も広島も今月は未勝利なだけに、ここで白星を挙げて沈滞したムードを払拭したい。
ホーム・鹿島は前節出場停止の内田篤人が復帰。代わってファビオ・サントスが出場停止となった。指揮官は本山雅志をピッチに送り出すと思われたが、彼は左足を負傷。代わって野沢拓也が先発した。岩政大樹、大岩剛ら最終ライン、アレックス・ミネイロ、柳沢敦ら2トップなど、他の主力メンバーは前節・ヴァンフォーレ甲府戦から変更なしだ。
対する広島のペトロヴィッチ監督は、前節・ガンバ大阪戦でJ初ゴールを決めたU−19日本代表の柏木陽介を先発に抜擢した。中盤はU−21日本代表の青山敏弘が1ボランチに陣取り、柏木と森崎浩司が2列目に並ぶという構成だ。合計19得点をマークしている佐藤寿人、ウェズレイの2トップも健在である。
第19節終了時点で首位・G大阪に勝点差9をつけられている鹿島。負けられないこの試合は序盤から積極的なサッカーを展開した。得意のボール回しでリズムを作り、決定機を作ろうと試みる。前半24分には柳沢のやや遠めからのシュートが相手ゴールをかすめ、32分には相手守備陣の背後に飛び出した小笠原がオフサイドになるなど、得点に至りそうな形はできつつあった。前半最大のチャンスは36分、小笠原の浮き球のパスに野沢が反応したシーンだった。小笠原の創造性と野沢の動き出しの速さがかみ合った絶好機だったが、不運にも野沢のシュートはポストを叩いてしまう。この場面が勝負の分かれ目になったといっても過言ではないだろう。
スコアレスのまま前半を終了。キックオフから押し込まれ、たまにカウンターを繰り出すしかなかった広島がここから一気に巻き返しを図る。その火付け役となったのが青山。7日のU−21中国代表戦(秦皇島)で左足首をネンザし、G大阪戦で復帰したばかりの彼は後半4分、35mのロングシュートを思い切り鹿島ゴールに叩き込んだのだ。「入る場面は見てなかったけど、蹴った瞬間に入ったと確信した」という目の覚めるようなゴールは、連敗中だった広島を勢いづけた。
この1点で鹿島は浮き足立つ。後半開始15分間は完全に広島ペース。8月に入ってから一度も勝っていない不安感に加え、パウロアウトゥオリ監督が「浦和戦のショックが癒えていない」と指摘するメンタル面の問題が出たのだろう。それでも後半15〜20分には反撃のチャンスがあった。17分のアレックス・ミネイロの決定的シュートに始まり、19分の小笠原の右CKに岩政が飛び込んでヘディングシュートを放ったシーンなど、いずれも1点を取れる場面だった。が、広島のベテランGK下田崇のナイスセーブに阻まれ、どうしてもゴールを割ることができない。
こうなると、試合の流れは広島へ行ってしまう。この一戦を落とすと優勝争いから脱落しかねない鹿島・パウロ・アウトゥオリ監督は、深井正樹やダ・シルバ、田代有三など使える駒は全て投入。実質2バックで攻めに行った。だが広島は自陣を固め、簡単にスペースを与えてくれない。
鹿島にダメを押したのが、後半39分の広島の2点目だった。前線に走りこんだウェズレイ目がけて蹴った柏木のフィードを岩政がヘッド。これを処理しようとしたGK曽ヶ端と途中出場の深井正樹が交錯し、ボールは無情にもそのままゴールに転がり込んだ。試合前に「ここ3試合で7失点は多すぎる」と守備再建を誓っていた彼ら自身が大事なところで崩れる最悪の展開に陥ってしまったのだ。
終わってみれば0−2。タイムアップの瞬間、ゴール裏からは声援とブーイングが乱れ飛ぶ。奇妙な雰囲気の中、小笠原らは苦渋の表情を浮かべていた。
タイトル奪還を狙う彼らにとって、上位と2ケタの勝点差をつけられたことは非常に痛い。今後は小笠原の離脱が濃厚。大黒柱を失ったチームは新たな方向を模索しなければならないだろう。指揮官も「疲労が蓄積している人は休ませる。悪い時にこそ試合に出て状況を変えたいと思う選手を起用したい」と選手入れ替えも示唆しており、ここで大鉈がふるわれる可能性もある。いずれにしても、大胆な修正が必要だろう。
広島は青山や柏木ら若手の活躍で何とか連敗をストップさせた。まだJ2降格圏から逃れたわけではないが、新たな力の台頭はチームにとって明るい材料。この貴重な勝利をこの先の戦いにつなげたいところだ。
以上
2006.08.27 Reported by 元川悦子
J’s GOALニュース
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