8月26日(土) 2006 J1リーグ戦 第20節
甲府 1 - 1 磐田 (18:34/小瀬/14,227人)
得点者:'37 福西崇史(磐田)、'80 山崎光太郎(甲府)
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「相手に勝つには、フォースというか努力以上のものが出てこないと相手を打ち倒すことはできない」
記者会見での大木監督のコメントの一部であるが、「フォースというか努力以上のもの」という言葉に強い興味を持った。聴いた瞬間は判ったような気がしたが、後で聞き直すといろいろな解釈が出来ることに気が付いて、更に深く聞かなかったことを後悔することになってしまった。
「フォースというか努力以上のもの」
より激しく、より多く、より速くプレーするという意味なのか。それとも深い精神世界を含めたことなのか。磐田の川口は「(今日は)J1に昇格したばかりの頃の甲府に比べて、ガツガツしたものがなかった」と話した。この言葉にヒントがあるような気がする。甲府のプレーに余裕が生まれたという意味なのか、アグレシッブさがなくなったのか。川口の言葉も複数の解釈が出来る。少なくとも、このような疑問を持つことが出来るということは進歩があるからで、次のステージに入ったのか、入ろうとしているのだと思う。「名門クラブ・磐田に勝つには」という話が出てくるようになったのだから。
磐田との今季4回目の対戦となった第20節は、磐田の「人に強いプレス」に苦労して始まった。甲府の3トップの守備の意識は高く、チームとしての守備は悪くなかったが、ボールを奪っても磐田の守備の強さに攻撃がなかなか形にならない。お互いに前線に有効なボールが入らない時間を経て、20分過ぎからは磐田の時間となる。そして、37分に西が中央で出したボールを上田がワンタッチで方向を変えて、ゴール前に走り込んだ福西に出す。美しいパス回しが創造した福西のゴールは、磐田らしいゴールだった。甲府サポーターにとって最もゴールを許したくない福西のゴールだったが、人数の揃っていた中央を破られたこのゴールは上田の判断が素晴らしかった。アジウソン監督が会見で「将来は日本代表候補」という趣旨の話をしたが、磐田ユース出身の上田はその可能性を感じる選手だ。
後半、甲府は前半とは違って与えるファウルよりももらうファウルが多くなり、少し形が作れるようになるが、前線にボールが収まらないことは同じだった。3トップが張ったままでボールを受けようとすることが多く、最初から磐田の4バックの網にかかった状態だったからだ。本来ならばギャップを作ってセンターバックとサイドバックの間に走り込んで、マークの判断を迷わせる動きをしたいのだが、中盤でポゼッションが出来てしまったことの弊害かもしれない。ボールを奪った瞬間に縦方向のプレーを増やすことができれば、脅威になるのだがこれも少なかった。また、3トップの頂点・須藤は、入ったボールを後ろに落として前に走り込むプレーがほとんどで、単調だった。相手のプレッシャーが少ない場面で、ターンして前を向いて仕掛けることが出来れば攻撃の手数も増えたはずだ。
しかし、この状況を打開する男が甲府にはいる。バレーだ。バレーの突進力は絶大。また、ボールを簡単には失わないから、後方からのオーバーラップの時間とスペースも作ってくれる。後半13分にバレーが投入されてからの磐田は、常に2枚のDFを置いて警戒するのだが、スピードのある突進をなかなか止められない。ただ、磐田が一方的に押されていた訳ではない。24分の上田、32分の福西と決定的な追加点のチャンスを作ったが阿部のセーブに阻まれていた。
甲府が同点ゴールを決めたのはバレー効果が薄れ始めていた35分。左サイドの井上が上げたセンタリングを、山崎が素晴らしいタイミングでDFを置き去りにして頭で決める。溜飲を下げたスタンドは一気に盛り上がるのだが、甲府には勝ちきる力はなかった。しかし、レベルの高い選手が揃う磐田相手に追い付いたということは素晴らしいことではある。
「シーズンを通して34ゲームの物語がある」
守備面の課題が改善されて、新しい言葉が大木監督の口から出るようになった。これは物語が進んだということだ。読み進むことが出来るページはまだまだ残っているが、「フォースというか努力以上のもの」という謎を説く楽しみが先にあると知ることが出来たゲームだったのではないだろうか。
以上
2006.08.27 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
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