8月26日(土) 2006 J2リーグ戦 第36節
山形 1 - 0 仙台 (19:04/山形県/13,043人)
得点者:'18 内山俊彦(山形)
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試合終了直後に、派手なガッツポーズや、体をぶつけ合うような抱擁で勝利の喜びを表現した山形の選手たちだったが、サポーターへのあいさつを終えてロッカールームに戻ると、「みんなが倒れ込むようにしていました。アイシングが必要な者、ケアが必要な者、いわゆる満身創痍の状態」(樋口監督)だったと言う。
6試合ぶりに先発復帰した財前は負傷した足首が完治していなかった。財前に代わって入れる高橋と本橋がベンチに控えていたため、「行けるところまで」と痛み止めの注射を打ってピッチに立ったが、「20分ぐらいしか効かなかったです(笑)」。あとは痛みをこらえて走り続けるしかなかったが、途中交代の話も、しだいに雲行きがさ怪しくなる。
前半8分、臼井が競り合いで左足を痛めた。足を引きずりながらなんとか立ち上がったが、その6分後には自陣深い位置でキープしていたボールをボルジェスに簡単にさらわれ、ユニフォームを引っ張って止めるよりほかなかった。山形最初の交代カードは、後半早々、この臼井に使われることになる。さらに前半30分には、ハイボールを競った小原がボルジェスの上に乗り上げたあと背中から落ち、その勢いで後頭部を強烈に打ちつけた。4分後には復帰したが、「ハーフタイムで何言ってるかわからなくなった」(財前)ほどの脳震とうを起こしていた。後半29分、山形が切った2枚目のカードはFWの林→氏原。財前は小原を気遣いながらも、「迷惑を掛けないように、最後は手を挙げて代わりました」。後半40分、ギリギリの選択だった。
どんなことがあろうとも、この試合を落とすわけにはいかなかった。理由はふたつある。前半に失点する試合をここ7試合続け、特に最近の2試合では前半2失点で連敗している。昇格レースでも上位との差は開くばかりで、自分たちを見失いかねないところまで来ていた。理由のひとつは、こうしたチーム状態を立て直すため。そしてもうひとつは、この試合がダービーだから。つまりこの試合自体が、問答無用に負けが許されない戦いだからだ。
中2日という限られた時間で、樋口監督は前回の仙台戦のビデオを編集。守備を中心にいいプレーだけを抜き出して選手に見せている。詰め込んで散漫になるよりは、やるべきことをシンプルな形でイメージを持たせたその成果は、ここ数試合の不調が嘘のような立ち上がりとなって表れた。ロペスにはマンマークを付けたわけではないが、ラインをコンパクトに保ちながら、もっとも近くにいる選手が素早くアプローチに飛び出し、粘り強く応対した。チアゴネーヴィスにクロスバーを叩かれたが、試合の出来や気迫では、明らかに前回の対戦を上回っていた。
守備からリズムをつくり、何度かいい攻撃の形をつくっていた山形が、前半18分に右CKを得る。ゴール前に向かって急激に落ちる財前のボールに、左右へのジグザグフェイントでマークを引き剥がした内山が、這うように頭を合わせた。ゴールを確認した内山が真っ先に向かったのは、ゴール裏のサポーターだった。「この前の水戸戦ですごいブーイングを受けて、申し訳ない気持ちもいっぱいだったし、悔しい、見返したいという気持ちもあった」
1−1で引き分けた前回のみちのくダービーでも、内山のセットプレーから先制点を挙げている。あのときは追いつかれたが、もう同じ失敗は繰り返さない。前半を1−0で折り返したあとの後半、山形はさらに攻勢に出る。後半12分、佐々木の右クロスに合わせたヘデイングシュートがGK小針に弾かれたレアンドロは、林とともに守備での貢献、奪ってからのスペースへの飛び出しでも献身的なはたらきを見せた。仙台は大柴、中島を投入し、システムを変えてより攻撃的に出てきたあと、疲れからラインが下がり、中盤のスペースを使われピンチを招く時間もあった。しかし、ルーズボールを拾ったり、相手のコースを限定し追い込むためのどんな一歩も厭うことはなかった。高い集中力と相手を上回る気迫を90分間発揮し続けた末に、歓喜が訪れた。山形がホームでみちのくダービーに勝利するのは、J2元年の第2クール以来、7年ぶりになる。
「うちのチームはこういういいゲームができるし、力もあります。ただそれを続けられる力がないのでこういう順位(7位)にいると思います。次節のコンサドーレ戦がまた大事な試合になってくると思います」ひと仕事終えた財前は、口も滑らかに試合を振り返った。大舞台になるほど強さを発揮し、仙台時代からみちのくダービーには人一倍の闘志を燃やしていたのは周知の事実だが、今回も怪我をしながらダービーに間に合わせてしまうところがいかにも財前らしい。その財前がヒーローインタビューのお立ち台で、ぼそりと言ったひと言に味わいがあった。
「まだあきらめてないので」。主語は不要だろう。
以上
2006.08.27 Reported by 佐藤円
J’s GOALニュース
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