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【日本代表 vs インド代表:注目選手コラム】代表遅れてきた黄金世代のストライカー 播戸竜二(ガンバ大阪/FW)(06.10.09)

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●AFCアジアカップ2007予選大会 グループA
10月11日21:10キックオフ(日本時間)/インド・バンガロール
日本代表 対 インド代表
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10月4日の日本代表vsガーナ。後半23分に背番号21をつけた男がピッチ入った時、横浜国際総合競技場に集まった大観衆からひと際大きな声援が送られた。27歳で初めて代表初キャップを記録した彼は持ち前のスピードと貪欲さを生かし、一目散にゴールへと走り込む。試合終盤に頭を強打し6針縫う事態に見舞われても、勇敢なる姿勢が揺らぐことはなかった。結果的に1点を奪えず、決定力不足にあえぐ日本代表の救世主となることはできなかったが、多くの人々がこの男…播戸竜二の存在を改めて脳裏に焼きつけたに違いない…。

98年に兵庫県の無名チームである琴丘高からガンバ大阪入り。そこからコンサドーレ札幌、ヴィッセル神戸を渡り歩き、7年ぶりに古巣のG大阪へ戻った今年。播戸は目下、J1で佐藤寿人(広島)と並ぶ日本人トップの15ゴールを挙げている。「つねに全力でやること」とモットーに這い上がってきた彼は、ここへきてついに日本代表・オシム監督に認められるところとなった。
とはいえ、98年にG大阪入りした頃は「地元・関西出身の1ストライカー」に過ぎなかった。というのも、79年生まれは日本サッカー界屈指の才能が揃う「黄金世代」。G大阪にも下部組織からの昇格組である稲本潤一(ガラタサライ)や新井場徹(鹿島)らがいた。稲本らはジュニアユース代表として95年U-17世界選手権(エクアドル)にも出場しており、その傍らにいた播戸はどうしても陰の薄い存在になってしまったのだ。

それでも、98年は13試合に出場し2得点をゲット。この鋭い得点感覚に当時日本代表以下3世代を率いていたトルシエ監督も注目。さっそくユース代表に抜擢する。99年FIFAワールドユース選手権(ナイジェリア)で日本が準優勝の快挙を達成した時、播戸も一員として帯同。全て途中出場ながら決勝・スペイン戦など5試合にする。ピッチ外でも彼の活躍があった。トルシエ監督のナイジェリア入りが遅れ、当初は行く末が懸念されたチームを、播戸の明るさとひょうきんな一面が和ませたのだ。「勝ち進んでいくうちに播戸がトルシエ監督の物まねをしたりするようになって、気難しかった監督も変わった。あいつが思い切りチームを盛り上げてくれた」と話す関係者もいた。
その後もシドニー五輪代表候補や日本代表候補に名を連ねるが、移籍などもあって次第に日の当たる舞台から遠ざかっていく。札幌時代にはJ2でのプレーも経験した。ナイジェリアユースの仲間である稲本や小野伸二(浦和)らが2002年日W杯を戦っている頃、彼は別世界から仲間を見ていた。
「正直、みんな頑張ってるなと。昔一緒にやってたメンバーがああいう華やかな舞台で戦っていることをうれしく思ってましたよ」
一抹の寂寥感も感じなかったのか…。そんな問いかけに播戸はきっぱりと言った。
「人それぞれ、いろんな道もあるし、経験もありますから。僕のようなサッカー人生は傍から見ると『回り道』に見えるかもしれないけど、そうじゃない。自分はいい経験をしたと思ってますから」と。
しかし2002年以降も鳴かず飛ばずの時期が続く。神戸でプレーしていた2004年にJ1で17得点を挙げる活躍を見せ、ようやく「完全復活」を印象づけたと思いきや、翌2005年には大きなケガに直面。大好きなサッカーボールを半年近くも蹴れなくなった。「いつになったら復帰できるのか」と本人も焦り、一時は「引退」の2文字も頭をよぎったという。しかも神戸はJ2降格争いを強いられている。その責任もひしひしと感じていた。
だが、そんな辛さや不安に打ちひしがれる自分を奮い立たせる存在を身近で見つけた。少年時代から憧れていた大先輩・三浦知良(横浜FC)である。
「自分より年齢もずっと上で、代表でも頂点を極めた人が、どんな環境にいても、つねに一生懸命やっているじゃないですか。あの姿にはホント学ぶことが多かった。自分みたいなぺーぺーが弱音を吐いている暇なんかないって思いましたよね。サッカー選手はいつ終わるかわからへん。今日の練習後にプレーできなくなるかもしれない。だからこそ1日1日全力を出し切ることが大事。『今日は楽しんでできたから満足』って毎日思ってれば悔いはないんやからね」

つねにポジティブにやってきたことが、オシムジャパン入り、そしてガーナ戦での代表デビューにつながった。遅れてきた黄金世代のストライカーに求められる次なるテーマは、やはり代表初ゴールだろう。「何でもとんとん拍子に行くはずがない。世の中そんなに甘いもんじゃないですよ」と本人は軽く受け流していたが、明るく屈託のないこの男には派手な活躍がよく似合う。遠いインドの地で大爆発を見せてほしい。みんながそう期待している。


以上

2006.10.08 Reported by 元川悦子
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