5月19日(土) 2007 J2リーグ戦 第16節
福岡 1 - 2 鳥栖 (14:04/博多球/13,372人)
得点者:'33 宮本亨(福岡)、'60 藤田祥史(鳥栖)、'69 高地系治(鳥栖)
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博多の森に駆け付けた13372人の観客は今シーズン最多。ネイビーブルーのカラーシートでスタジアムが染められ、バックスタンドにはドイツ国旗と日の丸が鮮やかに描き出された。そして数の上では福岡に負けているものの、開幕戦で0−5で敗れた雪辱を期して、鳥栖サポーターも力の限りに声を出す。開始直後から大声援がこだまする雰囲気はまさにダービーそのものだった。そんな九州ダービーを制したのは鳥栖。9回目となる博多の森の対戦で初勝利というおまけつきの勝利だった。
まず試合をリードしたのは福岡だった。前節の敗戦を払拭しようと立ち上がりからアグレッシブな姿勢を見せる福岡は、コンパクトなゾーンを保って高い位置から激しくプレスをしかけ、鳥栖の自由を奪って主導権を握る。この日の福岡は布部陽功、久藤清一、アレックスのバランスが抜群。クルクルとポジションを移動しながら中盤でボールを操る。マークが絞りきれない鳥栖は守備が後追いになり、やがてズルズルと下がっていく。
まさに福岡の独断場。相手ボールは前と後ろから挟み込んで奪い取り、ルーズボールへの反応も一歩早い。そして右サイドの田中佑昌、山形辰徳のコンビネーションからサイドを何度も突破。鳥栖を完全に押し込んだ。そして、先制点は33分。CKがこぼれたところを前線に上がっていた宮本亨が豪快に蹴りこんだ。試合はこのまま1−0で前半を折り返したが、内容では福岡が鳥栖を圧倒。ホームのサポーターのボルテージは上がりっぱなしだった。
後半に入っても序盤は福岡が主導権を握る展開。46分、53分、55分と福岡の決定的なシーンが続く。その反面、福岡は前節同様に中盤のバランスを自ら崩していく。前線に張り付いて戻って来ない攻撃陣。裏を狙われてラインを上げられない最終ライン。間延びした中盤には布部と久藤が取り残される。そして鳥栖は57分、山城純也に代えてスーパーサブ廣瀬浩二を投入する。間延びする中盤と、活性化する中盤。ゲームの流れが大きく傾くのは当然の流れだった。
廣瀬投入後、鳥栖の持ち味である走り切るサッカーが蘇り、アグレッシブに前へ走りこむ鳥栖が福岡を押し戻し始める。競り合いで勝ち、ルーズボールを拾う鳥栖の前に福岡は前へ出られない。そして60分、藤田祥史が同点ゴールを挙げると、ここからは一方的な鳥栖のペース。まるで前半とチームが入れ替わったかのようだった。そして69分、スルーパスを受けて抜け出した高地系治が角度のないところから左足を一閃。ゴールネットが大きく揺れた。その後も試合を支配し続ける鳥栖は、福岡に反撃の機会を与えずに2−1で勝利を手にした。
「気迫と走るところで負けないように選手たちが実践してくれた」(岸野靖之監督)。終わってみれば、鳥栖のアグレッシブさばかりが印象に残る試合だった。相手よりも一歩多く、相手よりも1センチ遠く、そしてどんな時でもあきらめずに走り切る。歯が立たないかとも思われた前半を終えてもなお、勝利を信じ、自分たちのサッカーを余すところなく発揮した鳥栖の姿勢は見事だった。九州ダービーの覇者にふさわしい勝利だった。
さて敗れた福岡はホームで2連敗。試合後サポーターからブーイングを浴びたが、それも仕方のないところだろう。鳥栖のアグレッシブさが際立っていたとはいえ、手中にあった主導権を自ら放棄するような戦い方は京都戦とまったく同じパターン。手痛い敗戦を生かすどころか、ホームのサポーターの前で再び繰り返してしまった。試合が続く中では気持を切り替えることが大切だが、それと試合で浮かび上がった課題と向き合うこととは別次元の問題。選手間に見え隠れする意識のズレを早急に解消することが求められている。
以上
2007.05.19 Reported by 中倉一志
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