5月19日(土) 2007 J2リーグ戦 第16節
札幌 3 - 0 水戸 (13:04/札幌ド/15,251人)
得点者:'1 ダヴィ(札幌)、'31 カウエ(札幌)、'83 曽田雄志(札幌)
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「開始早々のウチのミスから失点した部分でもう、プランがほとんど崩れてしまった」。試合後の会見で水戸・前田監督は開口一番、このように振り返った。首位・札幌とのアウェーゲームを戦う最下位の水戸としては、まずはしっかりと守備をし、そこから何とか勝機を見出したかったはず。しかし、開始1分に札幌のFWダヴィに角度のない位置からシュートを決められ、苦しい立ち上がりとなった。
おそらく、昨年までの水戸であればここで新たにゲームプランを組み直すのは難しかっただろう。昨年までの水戸は徹底してリトリートした守備をし、攻撃は人数をかけないカウンターがメインだった。そうしたスタイルのチームがゲーム序盤に失点をしてしまったならばその後はほぼお手上げ状態になってしまうが、今季の水戸は違う。守備こそリトリートするスタイルだが、攻撃はポゼッションをして積極的に仕掛けるスタイルを志向している。そしてこの試合でも3トップの形でスタートし、得点への意欲を表している。開始直後の失点で確かにゲームプランは崩れただろうが、だからといって決して勝ち目が消滅したわけではない。実際に、10分過ぎには中盤からうまくボールを運び、FW岩舘がバイタルエリアでうまく前を向いてボールを持ち決定機を演出してみせた。
そして23分、札幌はDFブルーノ・クアドロスが腰を痛めて負傷退場するアクシデント。右サイドバックの位置にいた西澤がブルーノ・クアドロスのいたDF中央へ移り、右サイドバックには池内が投入される。水戸としてはこのアクシデントに乗じ揺さぶりをかけたいところだったが、このあたりの時間帯はなかなかスムーズにボールを動かすことができなかった。
この日の水戸が悔やまれるのは3トップのシステムをうまく利用できなかったところだろう。岩舘、西野、塩沢で組む3トップ自体の攻撃時の動きは悪くなかった。中央の西野が積極的に裏へ抜け出す動きをして最終ラインを押し下げる。そうして生まれた最終ラインと中盤との間のスペースへ岩舘、塩沢が入り込み、札幌の組織的なゾーンディフェンスを何度か乱すことができていた。しかし、チームとしてこの3トップを機能させられていたかというと疑問符がつく。まず、前線にターゲットが3人いるにも関わらず最終ラインからのフィードが誰にも合わずにそのまま札幌のGK高木の所まで流れてしまう場面が何度も見られたし、3トップの動き出しとそこへパスが出るタイミングにズレが生じる場面も多かった。チームとして3トップを有効に使うことが出来ていたならば、もっと違った試合展開もあり得たかもしれない。
ホームの札幌としては、ブルーノ・クアドロスの負傷退場というアクシデントからわずか8分後にカウエのミドルシュートで追加点を奪えたことが大きかっただろう。予定外の選手交代を強いられたイレブンの心に余裕を与えるゴールだった。また、ブルーノ・クアドロスに代わって投入された池内のプレーヤースキルも評価したい。本来であればウォーミングアップもそこそこに、急遽ピッチに入っていった池内がゲームに馴染むまでにはある程度の時間が必要なはずだったし、冷静さを持つことも難しいはずだった。しかしながら池内はすぐにゲームの状況を把握してゆっくりとボールをキープしてリズムを整え、さらにはジャスチャーを交えて周囲の選手に「ゆっくり落ち着いて」という指示を自ら発していた。急遽投入された選手とはとても思えない、冷静かつ的確なゲームコントロールぶりだった。
これが今季の札幌が上位につけている理由のひとつなのだろう。池内を含め、この試合でも後に投入される砂川、大塚といったリザーブの選手たちは常に客観的な視野を持ってピッチに入り、即座にゲームの流れを読めるだけの経験値を持っている。今季ここまで札幌はいくつもの接戦をモノにしているが、それは途中投入される経験豊富な彼らがしっかりとゲームをコントロールしているからだろう。そして、そんな彼らが「もちろん、出られるのであればスタメンで出たい」と常にアピールを怠らないからこそ、先発メンバーが固定されつつある中でもチーム内の競争意識が途切れないのだろう。
結局、この試合は3−0のスコアで札幌が勝利。札幌は勝点を33に伸ばし首位の座をガッチリキープ。敗れた水戸は勝点7で最下位のまま。しかし、水戸は敗れはしたものの、札幌の堅守を崩すためのひとつのヒントを残している。「ラインを下げさせて、その間のところに入っていけば結構フリーでボールをもらえる」と前田監督。そして札幌の何人かの選手も「そこのところは修正が必要」と言う。今季ここまでいくつもの課題を素早く修正してきた首位・札幌。ここからは湘南(5/23@平塚)、福岡(5/27@博多球)という難敵との戦いが中3日で続く。その部分をどれだけ修正できるのか、ぜひとも注目したいところだ。
以上
2007.05.19 Reported by 斉藤宏則
J’s GOALニュース
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