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【J2:第27節 水戸 vs 湘南 レポート】後半にサッカーを変えた湘南が水戸を一蹴。そこに存在したのは『経験』と『勝利への執着心』の差(07.07.12)

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7月11日(水) 2007 J2リーグ戦 第27節
水戸 0 - 2 湘南 (19:04/笠松/1,076人)
得点者:'85 ジャーン(湘南)、'87 アジエル(湘南)

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 サッカーは『経験』を必要とされるスポーツである。特にJ2のような試合数の多いリーグ戦の場合、様々な戦いを経て、そこで浮かび上がった課題を修正することでチーム力は上がっていく。『自分たちの形』があった中で、どれだけ戦況に合わせて変化をしていけるか。それができるチームが上位に行くことができ、できないチームが下位に沈むこととなる。この日の両チームがまさにそれを表していた。

 前半は水戸のゲームだった。アジエルに執拗にボールを集め、攻撃を組み立てようとする湘南に対して、水戸はコンパクトな組織的守備で対応。アジエルに自由を与えず、攻め手を絶つことに成功した。そして、攻撃では早いテンポのパス回しでサイドから攻撃を組み立て、再三湘南ゴールを襲う展開を作った。しかし、決定力不足は相変わらず。37分、フリーで放った村松のシュートが枠を逸れていってしまうなど、ゴール前での落ち着きを欠くというここ数試合の課題を再び露呈することとなってしまった。

 対する湘南も前半はいいところなく、攻守にチグハグさが目立った。だが、そこから立て直す強さを湘南は持っていた。それを生み出せたのもこれまでの『経験』があったからである。「前半は(攻撃に関して)やりきれなかった部分がありましたが、これまで何度かそういった経験がありまして、しっかりやりきろうということがありました。後半に梅田の良さを引き出そうと(いう狙いで)10分間でしたが、いい入り方ができました」と菅野監督が言うように、前半のアジエル中心のパスサッカーから後半は中盤を省略して前線にシンプルにボールを入れるサッカーに変更。前線で梅田と石原が体を張ったプレーで起点を作ったことで攻撃の幅が広がり、サイド攻撃が生きることとなったのである。そして、56分には永里と原を投入。一気に勢いに乗った湘南が後半だけで14本のシュートを放つ猛攻に出ることとなった。過去の経験を踏まえ、自らのサッカーを変え、悪い流れを断ち切った湘南。85分、87分に立て続けにCKからゴールを奪い、水戸との力の差を見せつけた。

 それに対し、水戸はあまりにも無策であった。湘南がサッカーを変えてきたにも関わらず、同じサッカーを続け、相手のロングボールへの対応も後手を踏むことに。相手が勢いづいたところで耐えることができないことが敗戦につながった。「相手の波のところでできるだけ我慢して頑張って、自分たちの波をできるだけ長く続けるという習慣をつけていかないといけない」と前田監督。今季はアクションサッカーを貫いている水戸だが、それを90分続けることは不可能である。状況に応じて、サッカーを変えることも必要。「試合中、監督が大きな声で指示を出しても全員に伝わるわけではないので、ピッチの中で選手1人ひとりがもっと考えないといけない」と小椋が言う通り、その判断はピッチに立つ選手たちが行わないといけない。そこでの判断に必要なものこそが、『経験』である。その差がスコアに表れることとなった。

 水戸も湘南もこれまで同じ試合数をこなしており、『経験』も同数のはず。ただ、「勝負」にこだわる気持ちが両者を分けているのではないだろうか。「後半は戦う気持ちがなかったに等しい」と吉本は厳しい口調で語った。1点目のシーンではミスからボールを奪われ、中盤で椎原がアジエルに簡単に振り切られたことで独走を許して与えたCKからであり、2失点目は失点からわずか2分後、CKから完全に「集中を切らした」(前田監督)ことでマークを外して奪われたものである。ともに一瞬の厳しさを欠いて失点した水戸に対し、「今日は勝点3を取ることしか考えてなかった。苦しいゲームをモノにしてきたのが、ウチのベース」(坂本)という湘南。その積み重ねが90分に凝縮されていた。

「いいゲームをしていると言われるけど、プロの世界は結果を重く受け止めないとこれ以上の進歩はない。自分たちのプロ意識というところをあらためて認識しないと厳しい」と吉本は唇を噛み締めた。この敗戦を真摯に受け止め、そして、糧にできるか。1週間半後の京都戦でこの『経験』を生かさなければならない。

 また、試合後の監督会見で前田監督はクラブの環境面に言及した。それは愚痴でも文句でもなく、クラブも一緒に成長しようというメッセージに思われる。この日の観客は1076人。到底満足できる人数ではない。なぜ、こういう状況に陥ったのか。その原因を追究し、改善する必要がある。監督、選手だけでなく、水戸ホーリーホックというクラブ全体がこの試合の結果を真摯に受け止めなければならない。今日より明日、成長しなければクラブとしての発展もあり得ない。厳しい戦いを乗り越えてこそ、勝利は訪れる。すべてにおいて、まだ厳しさが足りない。

以上

2007.07.12 Reported by 佐藤拓也
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