7月11日(水) 2007 J2リーグ戦 第27節
仙台 1 - 4 東京V (19:04/ユアスタ/12,015人)
得点者:'20 フッキ(東京V)、'65 ディエゴ(東京V)、'73 フッキ(東京V)、'79 菅井直樹(仙台)、'89 フッキ(東京V)
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細かなパス回しでポゼッションを高めた上で、自分たちから積極的に仕掛けていくサッカー。開幕から、自分たちよりもむしろ周囲からの評価が高かったこうしたサッカーで、内容だけでなく結果、つまりはJ1昇格を目指そうとした仙台が挑戦したのは、言わばJ2というリーグの風潮そのものだった。
固い守りと、そこからのカウンターを完結させるスーパーな外国籍選手がいれば勝てる、それが定説となりつつあったこのリーグの中で、確かに自らもロペスという反則レベルの選手を擁しながらも、彼への依存という甘い誘惑を断ち切り、チーム全体で歯車の噛み合ったサッカーすることによって、サッカーファン、そしてサポーターを魅了しつつ勝つ。それを体現できていたからこそ、仙台のサッカーは評価されていたのだ。
しかし、美しいものゆえの悩みか、一旦プランが狂うと、その「脆さ」は尋常なものではない。1−5の大敗となった第22節の京都戦などはその最たるものであったが、今節仙台が喫した負け方は、まさにそのリプレイともいえるものだった。
開始35秒でロペスが放った低いミドルが、濡れたピッチを滑るように飛びGK高木を脅かす。これが皮切りとなり、立ち上がりからボールを支配したのは仙台だった。東京Vの3バックの左右にスペースが広がり、さらにボランチ2人の連携も曖昧になっていたこともあり、仙台は押し気味の位置で試合を進める。1試合休みを挟んだ仙台に対し、中3日でしかもこのピッチ状況での戦いを強いられた東京Vの選手たちの足は明らかに重く、ボールに対する出足の面で仙台が上回ったのも、こうした展開になった要因の一つとして考えられるだろう。
ところが、20分に決まったフッキのゴールが、以降のプランを全てひっくり返してしまうことになる。左サイドで服部が持った際、ゴール前にいた船越のニアへの動きに、仙台の守備陣は体も視線も引っ張られてしまい、最も軽快すべき男を完全に視界から外してしまった。服部からのセンタリングがゴール正面に飛んでくると、一番ファーサイドにいた田ノ上の後方から走りこんだフッキが、クリアしようとした田ノ上の眼前で伸ばした左足を振りぬく。フッキがやるといとも簡単なように見えてしまう美しいゴールで東京Vが先制。
とはいえ、ペースが仙台にあったことに変わりは無く、まだ早い時間の失点だっただけに、まだこの時間の仙台に慌てる様子は無かった。失点前同様に東京Vを押し込み、27分には中島のシュートがバー直撃、28分には富田のミドルが枠を捉えたが海本がゴールライン上でヘディングクリア、33分にはシュートこそ止められるものの、スルーパスに抜け出した萬代が高木との1対1を迎えるなど、チャンスは多く作っていたことから、0−1でハーフタイムに入った時もスタンドは後半への期待に包まれていた。
だが後半に入り、降り続いた雨が一旦止んだ一方で、仙台の雲行きはおかしくなる。東京Vは前線に3人を残し、残る7人が引いて守る、明らかなカウンター向けの布陣を敷いてきた。後半すぐにピッチに入った梁が「相手は中央を固めてきた」と振り返ったように、仙台もその状況はわかっていたはずである。
にも関わらず仙台は、大きな揺さぶりなどを加えることなく、自分たちにとって正攻法であるショートパスでの崩しを試み続けた。これ自体決して悪いことではないのだが、失点を返そうとチーム全体が前がかりになったところで、ミスから相手に何度もボールをひっかけてしまっては、自らの傷口をさらに広げるというものだ。
さらに仙台にとって、62分の廣山投入という東京Vの采配は、辛らつ極まりないものとなった。前線で張ることの多かった船越に比べ動ける廣山は、守備では右サイドでしっかりと引くことで仙台の左サイドを殺し、攻めてはダイナミックな動きで東京Vのカウンターの効果を高めた。65分には、カウンターで仙台の守備陣形が崩れたところ、投入からわずか3分後の廣山のセンタリングから、ゴール前で完全にフリーとなっていたディエゴがヘディングシュートを決めて2点目。さらに73分には、これもカウンターから得たゴール正面25メートルのFKを、フッキがカーブをかけた左足キックでゴール右上隅に決めて3点目。
失点すればするほど、より前がかりを求められて苦しくなる仙台。79分に菅井が一矢報いるものの、既に46分を回っていたロスタイム、ゴール前への放り込みを意図した田ノ上のキックが東京Vのチェックに当たったところから、最後はフッキにハーフウェーラインから持ち込まれ、渡辺と木谷の二枚のCBに何もさせないまま、ハットトリックとなるゴールを決められた。
仙台にとって、冒頭で書いた最近の京都戦との相似点はつまり「強力な前線を擁するチーム相手に先制点を許すと、前がかりになった布陣でミスを繰り返し、さらに失点を喫する悪循環にはまる」というものである。
「攻めに出た時のリスクマネージメントが足りない」。試合後、望月監督も選手たちも、チームの課題として同じことを口にした。
たとえサイクルの良い時には魅了するサッカーを見せようとも、悪い時はからっきしダメ、というのでは、シーズン終了時、昇格に値する勝点までは届かないだろう。
ただ望月監督はいう。「自分達がやってきたことを信じるしかない」。私たちも、J2の世界に戦いを挑んだ仙台の意気込みが、この課題を克服するものと信じたい。
以上
J’s GOALニュース
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