8月5日(日) 2007 J2リーグ戦 第32節
仙台 1 - 1 水戸 (19:04/ユアスタ/13,569人)
得点者:'21 塩沢勝吾(水戸)、'28 ロペス(仙台)
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「いつも通りの楽しいサッカー!やろうぜ!!」
試合前のピッチ内アップと同時に、バックスタンドからはこの巨大なメッセージが掲げられた。
しかし「いつも通り」だったのは、結果を出せない仙台のパターン。パスをつなぎゲームを支配するように見えるものの、それを我慢強く続けることで掴んだ決定機をフイにし続け、勝点を取り逃がす。サポーターが支持を表明したサッカーをチームは確かに演じたが、何も「殉じる」ことを望んでいたわけではない仙台のサポーターには、なんともいたたまれない空気が流れたことだろう。
仙台は立ち上がりから菅井、田ノ上の両サイドバックも積極的に攻撃参加、まずは受身に回った水戸を攻め立てる。だが、15分が経過したころから細かなミスでボールを失うことが増えてくると、徐々に水戸の攻勢を許すことに。
そして21分、その攻勢を中盤で何度も止めていたジョニウソンが犯したファールによって、右サイドで水戸にFKが。キッカーは、聞くところによると2日前に初めてFKを任されたという金澤。ライナー性で鋭く入ってくる素晴らしいボールに、情報のなさもあって仙台は対応をとれなかったのか、ゴール前で頭一つ抜けた塩沢のヘッド、そして柔らかくゴール左に吸い込まれていくボールに、守備陣は干渉することができなかった。「相手はセットプレーかカウンターに賭けてくる」(林)とわかっていたはずの仙台は、その通りの形で先制点を許してしまった。
だが皮肉にも、この早い時間の先制点自体、水戸の選手には予想外だったのかもしれない。先制点後チーム全体が引いてしまったのは、前田監督いわく「チームの若さゆえの」過ち。そしてそこを逆襲に猛る仙台は攻めた。ゴール前に固まる水戸の選手の外周でひたすらにパスをつなぎ隙間を突こうと試みると、28分に狙い通りの同点弾が決まる。左45度あたりから、富田、梁と連続でロペスがパス交換をするうちに、空いてしまう水戸の防壁。梁からの戻しを受けたロペスは右に流れながらシュートコースを広げ、ペナルティーアーク付近から低い弾道の強烈なシュート。ゴール右隅に突き刺さる見事な一発で、仙台は試合を振り出しに戻すことに成功した。
これまでの戦いならば、守備一辺倒だった水戸はこの後無理に前へ出てきてバランスを崩し、仙台の逆撃がより効果を発揮する展開になったに違いない。だが最終的に結果はそうならなかった。
確かに前半に田ノ上が、後半にも関口が、それぞれDFライン裏に完全に抜け出した上でのGKとの1対1を決められなかったなど、サポーターの我慢の限界を超える決定力の欠如はあった。しかしそれ以前に後半については、ゲーム内容において、単純に仙台は水戸に、翻弄とまでは言わないものの苦しめられてしまった。
その要因は何か。私はここに、両チームの「切り換え力」の差を指摘したい。
水戸は前述の通り、これまで「ひたむきな守備」をアイデンティティーとしていた。しかし今季、ついにそこからの脱却を図り、ボールを良く動かしてしっかりとサイドから崩すアクションサッカーを第1クールから続けてきた。このサッカーは魅力的ながら結果はなかなかついて来ず、成績の上では序盤から地獄を味わったと言える。
だが逆説的ながら、このアクションサッカーは、昨年までの守備サッカーと組み合わせることで、その効果がより表れることとなった。この仙台戦などはまさにそのもの。序盤守備を固め、攻勢に出たところでしっかり先制点、一度統制が乱れ同点に追いつかれるものの、後半はペースを変えられない(このあたりは後述する)仙台を尻目に、ブロックを作り仙台の攻撃を跳ね返したと思いきや、相手の足が止まった頃合いを見逃さずにサイドから攻め込みチャンスを作る。前半1本、しかし後半は2度3度の決定機を含む7本というシュート数が、水戸の勇戦を物語っている。
思えば前田監督は、アクションサッカーへの転換を語りながらも、その一方で「守備をできない選手は使わない」と明言していた。その意味では、今季の取り組みだけでなく、これまでの積み重ねとの併用によって、水戸は仙台を苦しめたといえる。
そこで話を仙台に戻そう。後半の仙台は圧倒的にボールを支配するものの、そして意図するサッカーを演じようと努力していたことを差し引いても、その攻撃は明らかに単調であったといわざるを得ない。パスはほとんどが足元、カウンターを恐れるのはわかるが、ロペスのようなミドルは皆無、そうこうするうちに、水戸に幾重もの防御陣を築かれて袋小路に。
そして、そのペースを変えようという意思が、何より仙台の選手からは感じられなかった。途中投入の永井までその流れに乗り、ファビーニョの投入、そして白井投入による千葉の前線への組み込みも、もはや効果を発揮する土壌はなかった。同じことをやっていては崩れない相手に、例えばミドル、例えば無駄走り、例えば大きなサイドチェンジ、そういった「切り換え」を試みる姿は見られなかった。
シーズン序盤、仙台は突如、ロングボールを多用するサッカーを披露した時期がある。その時望月監督は「長いシーズンを考えた上でのオプション」という言葉を使い、目指すサッカーがぶれたわけではないと語っていた。
水戸のように、本来目指すものを機能させるためならば、こうした「真逆への切り換え」を誰も批判はしない。むしろそれがあってこそ、相手をまさに手玉に取るような、サポーターの言う「楽しいサッカー」になるのでは。
仙台に必要なもの、それは自分たちの目指すサッカーを信じるからこそできる、自分たちのサッカーへの囚われからの脱却、なのではなかろうか。水戸を見て、私自身そう気付かされた思いがしている。
以上
J’s GOALニュース
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