【リーグ後半戦展望】----------
後半戦での巻き返しを期すべく、秋田県にかほ市で、7月25日から8月2日までキャンプを張った横浜FC。にかほ市の全面的なバックアップの下、美しく整備された芝の練習場でトレーニングに励み、地元ファンからは熱烈な歓迎を受けるなど、充実した9日間となったようだ。
キャンプから横浜に帰ってきた直後の、5日の練習で印象に残ったのは、最終ラインでボールを回しながらボランチにくさびを入れるタイミングをうかがい、そのくさびからの落としに対し連動して動き、少ないタッチ数で今度はFWにくさびのボールを送り、ワイドな攻撃の糸口とする…、というトレーニングだった。
練習後、選手たちにキャンプ中の練習について聞いてみたところ、リーグ戦再開直前のこの時期、手の内を明かしたくないこともあってか、慎重な答えが返ってきた。
「まあ、いろいろです。今日やった“当てて落として、また当てる”といったビルドアップに関する練習はかなりやりました。その辺で攻撃面での共通の意識はできてきたかな、と思います」と語ってくれたのは早川。確かに、キャンプイン後の練習試合は、TDK戦が4−0、富士大学戦が7−0、再びTDKと対戦し2−0(30分×2)と、まずまずの結果を残している。最終日の新潟戦では、45分ハーフのゲームを2試合行ったが、1本目は4−3(前半1−0)、2本目は1−3(前半1−0)と、現在リーグ戦3位の相手と互角に打ち合った。
ただ、スコアを見ればわかるように、課題は守備面だ。「守備の見直しはかなり重点を置きました」(鄭容臺)とのこと、守備をベースにした戦術を貫き通すことに迷いはないようで、キャンプでは今シーズン新たに加入した選手に、改めて横浜FCの戦術を叩き込もうとしたのだろう。キャンプ中・キャンプ後に、新しく柱となりそうなパウロや呉という選手が加わったこともあり、守備面でのチーム全体の意思統一を強めることは急務である。
以上、単純にいえば、「攻撃はまずまず、守備に課題」という表現はできる。しかし、攻守が表裏一体なのがサッカー。守備が改善されても、そのぶん攻撃を犠牲にしては意味がない。昨年展開したような「相手にボールはもたせても、自分たちでゲームをコントロールし、試合の主導権は渡さず、スキあらば瞬間的にチーム全体でゴールをねらう」とったゲームをもう一度見せてほしいものだ。J1でそれを実現するための“個”は、奥、久保、平本、山田、呉、パウロなど、揃いつつあるのだから。
【後半戦のキープレーヤー】----------
パウロ選手(MF)
何といっても、中断期間中に数多く獲得した新加入選手に期待がかかる。中でも注目は、元ブラジル代表のボランチ、マルコス パウロ(以下パウロ)だ。中断前のゲームでは、山口がボランチに入ると、山口がボールの収まりどころとなるために相手チームにねらわれ、ほかの選手が中盤の底を務めるときはビルドアップに少々難がある、というようにボランチは補強ポイントの一つだった。パウロが山口と併用されるのか、パウロが山口に替わってボランチの柱となるのかはわからないが、そのパフォーマンスがチームの浮沈のカギを握っていることはまちがいないだろう。
気になるプレースタイルについてパウロに尋ねてみたところ、「それは自分の口でいうものではなく、見た人が判断するもの」とのこと。練習では、盛んに声を出し、ときには手を叩くなどして雰囲気を盛り上げる。そのことに話を向けると「それはとても大事なことで、いろいろな選手とコミュニケーションをとることを含め、ユース時代からいつも心がけている」と語ってくれた。さすがに、クルゼイロ・ジュニオール、グアラニ、ポルトゲーザなどでキャプテンを任されてきただけの選手である。かなり期待ができそうだ。
【前半戦の振り返り】----------
前半戦を終えての順位は、17位と勝点差6の最下位。不振の理由はやはり、守備をベースとした戦術が去年ほどに絶対的な効果を発揮していないことにあるだろう。たびたび大量失点を喫することもさることながら、得点を許してはいけない時間帯・試合展開のなかで、ミスから簡単にゴールを奪われていることが問題で、1点差負けのゲームが9試合もある。
その原因として考えられるのは、まずはJ1とJ2の相手のちがい。しかし、それ以上に大きいのは、実はメンバーが大幅に入れ替わっていることにあるとみる。17節・柏戦の先発メンバーのなかで、昨季コンスタントに試合に出ていたのは、GK菅野を含めて6人。J2優勝の原動力となった横浜FCの堅い守りは、イレブン全員の高度な意思統一があればこそ実現できたもので、半分が新加入の選手ということになれば、うまく機能させるのは難しい。
5月以降、平本や山田といった新戦力を補強してからは、彼らの個人の力を頼みに攻撃に出る時間帯も長くなってきた。しかし、やはり、チームとしてのまとまりに欠けるためか、大事なところで点を取られ結局は負ける、といったゲームが続いている。結果、最後に今季2度目の5連敗を喫するという、厳しい戦いを象徴するような形で前半戦を締めくくった。
【再開時の予想フォーメーション】----------
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中断前のラスト数試合は、平本を1トップに置く「4−5−1」の布陣を採用することが多かったが、ディフェンス面の見直しを図るのであれば、昨年同様、前線からの守備が計算できる2トップに戻すのが得策だろう。
まずはFW。平本(あるいはコンディションが戻れば久保)がゴールを奪うことに集中し、もう1人が守備にも力を入れチーム全体のバランスを取る。この、平本(久保)のパートナーには三浦。労を惜しまぬ運動量と競り合いの強さが魅力の難波が三浦に替わって先発する姿も見てみたい。
中盤・前の左には新加入の西山、右に奥。彼らにはそれぞれ、滝澤、内田、といった競争相手がいる。この先発争いに玉乃も食い込んでくるだろう。パウロは、その体躯や練習を見た限りでは、アンカータイプのボランチ。元ブラジル代表ということで中盤の底での散らしには期待できるはずだ。根占は経験を積めばさらなる成長が見込める選手。奇跡のJ1残留のためには、彼の“大化け”も必要な要素となるとみている。
最終ラインは、右サイドバックに新加入の現役韓国代表・呉範錫(オ・ボムソク)、左に和田。中央をディフェンスの要である早川と、7月に行われたU20W杯代表に選出されるなど成長著しい太田が固める。そして最後の砦は、不動の守護神・菅野。これだけは何があっても変わらない。
以上
2007.08.08 Reported by 二本木 昭














