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【J2:第37節 水戸 vs 札幌 レポート】まぐれではない! 水戸が勝つべくして首位札幌を撃破。約11ヶ月ぶりに笠松に歓喜が訪れた。(07.08.31)

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8月30日(木) 2007 J2リーグ戦 第37節
水戸 2 - 1 札幌 (19:04/笠松/1,779人)
得点者:'10 塩沢勝吾(水戸)、'11 ダヴィ(札幌)、'16 西野晃平(水戸)

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 「これまでなかなか笠松で勝てなくて(サポーターに)申し訳ない気持ちが強かった」。試合後、平松は安堵の表情を浮かべながら、そう口にした。昨年の9月9日以来の笠松での勝利。「正直、ホッとしましたね」と前田監督も胸をなでおろした。しかし、約11ヶ月前に挙げた勝利とは重みが違う。攻撃においても、守備においても、これまで積み上げてきたものを出し切って挙げた勝利であり、「結果は妥当」と三浦監督が認めたように、首位札幌を内容で上回っての勝利なだけに、大きな価値がある。「練習でやった通り。うまく相手がはまってくれた」と西野。水戸の掌で転がり続けた90分であった。

 「特別なことをやったわけじゃない」と小椋は言い切った。首位札幌から勝利を挙げたものの、水戸はこれまで通りのサッカーを完遂したにすぎない。ここ7試合でわずか1敗、そして失点4と、守備の安定によりチーム力は向上している。「いい攻撃はいい守備ありき」(西野)。リーグ序盤で培ってきた攻撃力と、本来の水戸の持ち味である粘り強い守備とが融合しつつあるのだ。それをこの試合で証明してみせた。

 「前の2人がアクションをしてくれた」(前田監督)水戸が序盤から攻撃を仕掛け、10分間で決定機を3回も作り出す猛攻を見せる。そして10分、右サイド鈴木和からのクロスを塩沢が頭で合わせ、先制。果敢で攻撃的な姿勢がゴールにつながった。そのまま波に乗るかと思われたが、直後のプレーで最終ラインのパス回しで痛恨のミス。それを中山に奪われ、最後はダヴィに落ち着いて決められ、同点にされてしまう。ミスからの失点という、今季の水戸の悪癖により、試合はわずか数十秒で振り出しに戻ってしまった。スタジアムには意気消沈の雰囲気が流れた。

 だが、そこからが水戸の本領発揮であった。「すぐに切り替えができました」とミスをした金澤はゴールネットに絡まったボールをすぐに取りに行き、キックオフへ。金澤だけでなく、チーム全体が前だけを見て再び走りはじめた。そして、5分後、左サイドで起点を作り、金澤が右足のクロスをゴール前へ。GKの前に走り込んだ西野が頭で合わせ、すぐさま勝ち越しに成功。「ミスから失点をしてもすぐに切り替えができたことが今までと違う。成長した部分」と鈴木和は胸を張った。

 だが、それができたのも「みんな自信を持ってプレーをしていた」(小椋)からである。今季の水戸は下位に低迷しているものの、これまで内容が悪いわけではなかった。過去2度の札幌との対戦でも「内容は悪くなかった。ウチがキープしながらできていた」と前田監督が言うように、上位相手でもアクションサッカーを貫いてきた。ただ、「オフェンスに気を取られすぎて守備をおろそかにしてしまった」(小椋)。昨季までの守備的なサッカーからの脱却に時間がかかってしまった部分が現状の結果を招いた要因である。

 それでも「結果は出てなかったけど、手応えはあった。ここに来て結果が出ているのはやり方を変えず、自分たちを信じてやってきたから」と鈴木和が言うように、一つの方向にチームが向かい続けたことでチーム力をつけていき、福岡や仙台を相手にしても互角以上の展開へ持ち込み、首位札幌をも凌駕する試合展開をすることができるようになったのである。この試合の一連の流れも決して偶然ではなかったのである。

 後半に入り、札幌のパワープレーに対しても水戸は見事な対応。「(89分に失点した第34節)福岡戦の苦い思い出があった」(前田監督)水戸はビジュを最終ラインに下げて、そして1トップ2シャドーに変更。さらにボールを奪っても慌てて蹴るのではなく、しっかりとしたボールキープで流れを断ち切った。札幌に押し込まれはしたものの、つなぎで上回った水戸は48分、55分、56分と決定機を築いていき、終盤にはサイドでキープをして札幌を焦らせるなど戦い方の巧みさを見せ、しっかりと逃げ切りに成功。攻守において札幌を上回った水戸が待望の勝ち点3を得ることとなった。

 パワープレー攻撃が実らず、敗戦を喫した札幌だが、連戦は続く。水戸に敗れはしたものの、「試合を重ねるごとによくなっている」とブルーノは語り、「連戦なので切り替えたい」と前を見つめた。これからの3連戦が昇格に向けての正念場となりそうだ。この敗戦を引きずらないためにも中2日で迫る愛媛戦は是が非でも勝ち点3がほしいところだろう。

 そして、水戸。11ヶ月ぶりの笠松での勝利。そして、首位撃破という嬉しい1勝だ。だが、「これで満足ではない」(西野)。水戸が目指すものはまだまだこんなものではないはず。そして、今やっているサッカーもさらによくなるはずだ。「下の順位で終わるつもりはない」と小椋も気持ちを強めたように、これからが真価が問われる時。この1勝を無駄にしないためにも残り14試合で、さらにパワーアップした水戸の姿を見せてほしい。

 今季の水戸は「1勝する難しさ」を知った。勝利のために妥協は許されないことも痛感をしたはずだ。常に全力以上のものを出した時に歓喜は訪れる。選手、スタッフ、そしてサポーター、水戸に携わるすべての人が、すべての試合で力を出し切れば何かが変わるはず。もっともっと変えられるはずだ。この日感じたすべてをこれからも出し切っていこう。
いざ、水戸ホーリーホック新時代の幕開けだ。

以上

2007.08.31 Reported by 佐藤拓也
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