10月10日(水) 2007 J2リーグ戦 第44節
仙台 1 - 1 山形 (19:04/ユアスタ/15,614人)
得点者:52' 岡山一成(仙台)、89' 財前宣之(山形)
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現在の順位も、直前の体調も、試合を占う上での様々なデータも、開始のホイッスルが鳴ってしまえばすべて関係が無くなる。実も蓋もない言い方になるが、それこそがダービー…ということか。第1クールでは残り4分、第3クールでは3分での同点ゴールにスタジアムが揺れた今季のみちのくダービーを締めくくったのは、体調不良が囁かれていたものの、照準を合わせていたこのダービーでまばゆい輝きを放った男の、後半ロスタイムでの同点PKだった。
開始から10分間は双方がゴール前に迫る展開に。だがその後は、山形ペースに試合が流れていった。DFラインを高い位置に設定していただけに、ボールを奪う位置も比較的高め。そこから一度大きなサイドチェンジを絡めることで、サイドの選手、特に右サイドの佐々木の脅威をうまく引き出すことに成功していた。さらに仙台の注意が山形の右にばかり行けば、今度は左のSB石川が低い位置から効果的なボールを供給、26分にはその石川のアーリークロスが、ゴール前に飛び込みDF陣の隙間から足を伸ばした根本の足を捉えるなど、仙台にとって危険な場面を演出した。
だが仙台も決して、山形の攻勢を指をくわえてみていたわけではなく、反撃の手段を冷静に探っていた。試合後に監督が振り返って分析したように、トップに素早く当てるのを意識することで、27分にはペナルティアークで受けた中島が強引かつしなやかな突破からフィニッシュ。
そして何より最大の突破口として仙台が見出したのは、山形が敷いていた高いDFラインの裏。なかなかシュートまでは持ち込めなかったり、エリア内に入った後にDFともつれるがPKはもらえずという場面が続くものの、ライン裏を取れていることは紛れも無い事実。
その予感どおり、仙台はライン裏を狙い続けたことで先制点のきっかけを掴む。52分、岡山の右へのフィードを受けた菅井が、ダイレクトで山形CBの後方へボールを注ぎ込むと、前半同様に中島が飛び込んでくる。ここはDFのクリアに遭うが、このプレーで得たCK、梁のボールに頭2つ抜け出して合わせたのは、加入以降セットプレーからの得点が待たれていた岡山だった。最もユアスタを沸かせる男の得点で、仙台は勝利へ一歩、大きく踏み出す。
ところが、山形で最初に選手交代によって投入された一人の男が、仙台の勝利に向けて流れていた時間に敢然と逆らった。60分、宮沢に代わって左サイドハーフに入った財前は、まるで仙台の弱点を看破していたかのように、自分を捕まえづらい守備陣の隙間に入り込みボールを受け、そこから着実に仙台の守備を切り崩して行く。財前の周りに3人の仙台の選手がいるが、絶妙な距離感を保つ財前に対して誰もチャレンジにいけないという光景は、さながら財前の周囲にバリアでも張られているかのような錯覚すら感じさせた。
しかも、意を決して仙台の選手もボールを奪いに行けば、財前は華麗なステップでそれを翻弄。財前はこの日の仙台について「今年4度の対戦で一番悪い状態だったと思う」と語っていたが、仙台の側からしてみれば、財前が今年、いや、仙台在籍時代も含めた近年で最高の出来だったと思える。この日の財前は、本当に止められなかった。
この財前の輝きが、まさか仙台の選手たちの冷静な判断すら奪ってしまったのか。1点リードで終盤を迎えた仙台の戦いぶりには、例えば一人少ない中で開き直って守りを固めつつカウンターを伺う冷静さを貫徹した前節水戸戦のような、1−0逃げ切り時の張り詰めた空気が感じられなかった。攻めても守ってもどこか中途半端、ロスタイム直前に得たCKでは、時間を稼ぐために試みたショートコーナーを連携ミスで簡単に相手に渡してしまうなど嫌な空気が漂う中で、ロスタイムが2分を回った頃にそれは起きた。
ゴールに遠い位置ではあるが、ジョニウソンのプレスが勢い余ってファールとなり、山形にFKが。単純にゴール前に放り込まれたボールの処理に仙台はもたつく。それでも木谷が足元のボールをキックでクリアしようとしたところに、横山が頭で飛び込んだ。笛が鳴る。危険なプレーということか、ファール、そしてPK(ルールどおり解釈すれば間接FKになる気もするのだが…ちなみに同時刻の木谷への警告は、公式記録では「異議」でのものとなっている)の指示。ホームで2試合連続、相手にPKを与えてしまった形の木谷は天を仰ぎ、自らのシャツで顔を覆ってしまった。
このPKを、様々な思いをよぎらせながら財前が決める(財前はこの劇的なPKでのゴール後、大きなセレブレーションもなくハーフウェーラインに戻って行ったことを特筆しておきたい)。これが、例年にも増して劇的な展開が連続した今季のみちのくダービーを締めくくる一撃となった。
監督、選手のコメントからも伝わってくる通り、昇格がほぼ絶望的となっていた山形の選手たちにとってこのダービーは、己のプライドを賭けた一戦であり、その意地は山形、そして仙台のサポーターにも十分伝わるものだった。
今回はそんな山形に痛い目を見せられた仙台だが、次節以降、今度は仙台が、ここで踏みとどまって意地を見せる番である。
次節まで再び中2日。今回の結果に天を仰ぐ暇はない。今見るのは、前だけでいい。
以上
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