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【J2:第50節 仙台 vs 湘南】レポート:勝利以外で昇格が消える湘南が、大観衆のアウェイマッチを制して希望をつなぐ。仙台は敗戦で一転、次節は「今季を賭けた一戦」に(07.11.18)

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11月18日(日) 2007 J2リーグ戦 第50節
仙台 2 - 3 湘南 (14:04/ユアスタ/18,313人)
得点者:14' 加藤望(湘南)、18' 石原直樹(湘南)、29' 岡山一成(仙台)、64' 加藤望(湘南)、88' ロペス(仙台)

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勝負を分けるポイントは、いきなりキックオフ直後から現れていた。
湘南の狙いはシンプル。右サイドバック山口のコメントを借りれば「(鈴木)将太の特長を活かすなど、チームとしてやることがハッキリしていた」。攻めのキーマンであるアジエルが不在の中で、右サイドで快足を飛ばす鈴木将太の縦への突破から、とにかくフィニッシュ、最低でもセンタリングで終わること。ポジション上は左のサイドハーフになっていた加藤も、ほとんど第3のFWとして主戦場をゴール前に求めていた。

そんな勢いのある湘南に対して、仙台のゲームへの入り方は今季最悪の部類に入るもの。湘南と違い、戦前に狙っていたはずの湘南DFライン裏を使う意図を遂行できず、周りの動き出しも若干遅いことから、攻め全体にスピードが欠けていた。攻守の切り換えにおいてもメリハリがなく、前節東京V戦後半のように、相手に押し込まれた上での攻撃を跳ね返した後、一旦切るのか攻めに出るのか曖昧なまま、中途半端なクリアを湘南に拾われてさらなる波状攻撃を招く場面もしばしば。そして守勢の際も、鈴木将太が仙台の左サイドで何度も危険な香りを放っていたにも関わらず、彼に対し複数でケアするでもなく、磯崎に1対1での応対を強いていた。スピードを恐れた磯崎が、鈴木将太に対して距離を置くポジショニングを取ったのも必然である。

こうした状況から生まれたのだから、湘南の先制点を偶然と捉えることは出来ないだろう。14分、鈴木将太がマークを抜ききらない態勢からニアへ柔らかいセンタリング、GK林とボールの間に入り込んだ形の加藤が大きくない体からバックヘッドを放つと、ボールは見送る林をあざ笑うかのような軌道で、ファーのサイドネットへ吸い込まれた。さらに18分には、仙台のペナルティーエリアにあったボールに対し、林と磯崎が交錯、側にいた石原が無人のゴールマウスへボールを「運び入れる」。仙台にとって2失点は、0−3で敗れた第34節の愛媛戦以来14試合ぶり、前半での2失点となると、第22節の京都戦(1−5)まで遡らないといけないほどの非常事態だった。

それでも梁のFKを岡山が頭で合わせて1点差とした29分から60分ほどまでは、仙台もペースを取り戻す。思い出したかのように、木谷を中心に最終ラインから湘南のDFライン裏を狙う長いボールが放たれると、失点で混乱していたのか湘南の守備はロングボールで下げられるDFラインと呼応を欠き高い位置に残った中盤との間にギャップを作ってしまった。そこに突破口を見出し始めた仙台は後半に入りさらに攻勢を強め、多少のリスクを負いながらも湘南を攻め立てる。
だが、得点の匂いを感じあえてメンバー交代をせずに試合を続けた仙台ベンチの期待は、59分にフリーで放った中島のシュートがバーを越えたシーンに代表されるシュート精度の低さ、そして64分に湘南にもたらされた角度のない左サイドからゴール前の全選手の頭を越えてファーサイドに突き刺さる加藤の美しい直接FKによって無に帰した。
再び2点差とされたことも背中を押したか、仙台は69分にファビーニョ、78分には中原と田ノ上を同時投入する。しかし残り時間が決して多くなかった湘南ベンチは高さ対策に松本を入れるなど冷静に対応。仙台の逆襲をロスタイムのPK1本に失点を抑え、今季3戦全敗を喫してきた相手に対しての、アウェイでの強烈な「復讐劇」を完結させた。

仙台の視点でこの試合を見れば、後半立ち上がりの1点ビハインド時に、攻撃陣を組み替えるか否かという分岐点があった。そこで仙台ベンチが採ったのは「変えない」という選択肢。
この試合に勝たなければ昇格がほぼなくなる湘南の方が、いざという時に賭けに走る決断が容易であるのは確か。しかしよく考えてみれば仙台もまた、上位との勝点、そして勝点で並んだ時の得失点差を考えれば、積極的な賭けをし、ゲームをかき乱してでも勝利を求めるべき状況におり、少なくとも湘南が動かないからといって、仙台が様子を見る必要はなかった。こうしたレポートで「たられば」論は不毛かもしれないが、加藤のFKが決まる前に、止みかけていた追い風をさらに強めるための一手を打てていれば、という思いが残る。

だが次節、そのような迷いが存在する余地はなくなった。仙台は京都との直接対決(11/25・13:00@西京極)。勝てば自力で3位の可能性を残してホームでの最終節を迎えられる。しかし負ければ、今季の昇格の可能性が消える。
一方、湘南は次節、平塚で福岡を迎えてのホーム最終戦。今節は「賭け」の場面がなかったが、次節で仮にそうした局面を迎えれば、その時はホームの大声援を受けて、躊躇なく捨て身の攻撃を繰り広げるだろう。
ちなみに、現在6位の湘南(勝点77)から見て、3位京都(同82)との勝点差が5で、4位仙台(同80)との勝点差は3。つまり湘南が次節、福岡に勝利を収めたと仮定しても、万が一京都が勝利を収めた場合は残り1試合で勝点差5が詰まらないことになり、湘南の昇格もなくなる。今日の敵は明日の友。湘南は自分たちのチームと共に、次節だけは仙台を応援することになる。

来週の今頃、誰が「勝者」「敗者」になっているかなど、現時点で知る由はない。ただ今は強く思う。仙台と湘南の両クラブがシーズンの最終節まで共に、この苦しくも痺れる快感を伴う闘争を戦い続けられていることを。

以上
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