11月18日（日） 2007 J1リーグ戦 第32節
磐田 1 - 3 川崎Ｆ　（14:03／ヤマハ／13,172人）
得点者：20' ジュニーニョ（川崎Ｆ）、41' 鄭大世（川崎Ｆ）、62' 前田遼一（磐田）、77' ジュニーニョ（川崎Ｆ）

----------

「しっかり守ってカウンターという以前の自分たちらしい形が久々に出たゲーム」と司令塔の中村憲剛が振り返ったように、勝った川崎Fにとっても、本来のサッカーができたとは言えない内容。だが、ゴール前の攻防では、攻守ともに川崎Fが上回っていたことが、3-1というスコアにつながった。

　出場停止やケガ、五輪代表などで多くの主力を欠く磐田は、3-5-2の形はこれまで通りだが、最終ラインに大井が入り、ボランチがエンリケと犬塚、トップ下が船谷、そして2トップの一角には第9節（5月3日）清水戦以来の先発出場となる40歳の中山が入った。対する川崎Fは、中盤が2枚のボランチ＋トップ下という形から「3ボランチに近い形」（河村）に変更。元磐田の河村がいわゆるアンカーのような形で後方に構え、その前に中村と谷口が並んで攻撃に絡むという形で、この試合に臨んだ。
　立ち上がりで主導権を握ったのは、ホームの磐田。川崎Fのほうに「ボールの取られ方が悪かった」（関塚監督）という面もあったが、「押し上げも早かったし、球際を厳しくいけていた」（中山）という磐田が、中盤で優位に立って川崎Fゴールに迫る場面を何度か作った。しかし、4分の前田のシュートは左に外れ、その後もラストパスが合わない場面が続いて先制ゴールには至らない。
　それに対して川崎Fは、20分にジュニーニョと鄭のコンビで強引にDFラインをこじ開け、DFが弾いたこぼれ球にいち早く反応したジュニーニョが決めて、最初のビッグチャンスできっちりと先制点を奪った。
　この一発で流れは一気に川崎Fに傾き、ポゼッションして反撃に出る磐田に対して、冷静に守ったところから鋭いカウンターを仕掛けて何度か磐田ゴールを脅かす。さらに41分には、2トップが起点を作って磐田の守備を右に寄せたところから、中村が左に展開して久木野がクロス。そこからニアサイドに鋭く飛び込んだ鄭が押し込み、速攻以外でもしっかりと崩して2点目を奪った。

　後半も、立ち上がりは前半と同様に磐田が攻勢に出て、3分にはうまく崩して船谷が決定的なシュートを放つが、ここはGK川島が反応良くストップ。ただ、それでも右サイドの太田を生かしてしつこく攻め続けた磐田は、17分の右スローインからDFの加賀が右からえぐってクロスを入れ、ニアに入った前田が流し込んでようやく1点を返した。
　これで勢いを得た磐田が、その後も川崎F陣内に押し込む時間を多く作ったが、ここは我慢の時間帯という意思統一ができていた川崎Fは、しっかりと守りを固めて付け入るスキを与えない。22分に左サイドの久木野に代えて井川を右サイドに入れ、右の森を左に回して、太田の動きに苦しめられていた左サイドの修正を図る。井川も、磐田の左からの攻撃をしっかりと抑え、この交代は守備の安定に大きな効果を発揮した。
　そこから「サイドで縦の突破を止めることができたので、（相手は）中に入ってきて、中での強さが発揮できるようになった。それでラインの設定もうまくできたし、カウンターが効くようになった」と箕輪が語った通り、川崎Fのカウンターが効き始め、それが追加点に結びつく。
　42分、河村の長いスルーパスからジュニーニョが左から一気に抜け出し、左足できっちりとゴール右に決めて、限られたチャンスから決定的な3点目を奪った。

　その後は、精神的にもゆとりが出た川崎Fが、さらに守りを安定させると同時に、攻撃でも中村が冴えを見せて磐田ゴールを脅かす。もちろん、磐田のほうも最後まで攻める意志を見せたが、高くて強いゴール前の壁を崩しきることはできず、川崎Fの流れのままタイムアップ。
　磐田が先に点を取っていればどうなっていたかわからない展開だっただけに、決定力の差と言ってしまえばそれまでだが、勝つために必要なことをチーム全体としてリアルに追求したのも、川崎Fのほうだったと言えるのではないだろうか。