11月18日(日) 2007 J1リーグ戦 第32節
甲府 0 - 0 大宮 (14:00/小瀬/15,151人)
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J1残留に希望を繋ぐための決戦に8節ぶりの3トップで臨んだ甲府。対して、大宮は甲府の4−3−3も想定した4−4−1−1で対応してきた。一週間をかけて甲府対策を練ってきた大宮は、甲府が4−4−2なら両サイドハーフを上げて4−2−3−1というオプションも考えていた。共に、慎重な印象を与えた立ち上がりだったが、それぞれ理由は違った。冬の到来を告げる強風が吹き抜けた18日の小瀬。風下の大宮は、前半は受けて凌ぐことを直前に決めていた。風上の甲府は、風には関係なくリスクマネージメントの方法を変えることで大宮にカウンターを許さなかった。それはロングパスを選択する場面の多さだ。どちらも主導権を取れないまま進んだ試合の中で、甲府が中盤のパスをカットされてカウンターを受けるシーンは殆どなかった。そして、裏を狙ってくる大宮をことごとくオフサイドの網にかけてリスクを解除した。
甲府の選手たちは大木監督に自分たちの考えを伝え、話し合ってチームの苦境を打開しようとしていた。週明けのミーティングでGK・阿部が口火を切った。それはロングパスをリスクマネージメントの選択肢に入れるということ。大木監督も「選手たちは自分たちで判断してよくやってくれたと思う」と記者会見で話したが、選手はボールを繋ぐサッカーをベースに、リスクマネージメントしてロングボールを使うことを選択したのだ。井上は「長いボールが雑かなとも思ったけど、速攻でやられるのは嫌だから」と言う。クローズからオープンというサッカーのスタイルの限界ではなく、現時点では自分たちの判断、精度、連携が相手の対策を上回ることが難しいという判断だろう。このことに対して、大木監督が不本意に感じるところが全くなかったのかどうかは分からないが、チームという組織の求心力を維持するためには必要だったのかもしれない。
甲府のポゼッションと、同じくポゼッションをするための先発を組んできた大宮。マッチアップする中で、お互いに潰し合いを繰り広げた。甲府の中盤を大宮のダブルボランチはことごとく潰しにかかった。しかし、ファールの数は圧倒的に大宮が多く、甲府はセットプレーから何度もチャンスを掴むがそれがゴールに繋がらないままに前半を終える。後半は大宮が風上にたち、スピードアップする中で小林大悟のミドルシュートなどで序盤はヒヤリとさせられる。そして、ヒヤリで終わらせないために大宮はフレッシュな選手を入れながら、選手の配置と組織の質を変えていく。甲府は、ゴールを奪うために羽地、ラドンチッチと長身FWを投入していく。そして、均衡が崩れないまま88分に大宮の西村が2枚目のイエローで退場となり、人数の均衡が先に崩れる。終盤にチャンスを増やした甲府は、ロスタイムにはラドンチッチが大宮ディフェンスのクリアミスからこぼれたボールを拾い、GKと1対1の場面を作る。ここで決めていれば彼は救世主になれたのだが、そのシュートは希望を裏切りゴールの枠を外れて転がっていく。「ディフェンダーに腕を使って防がれた。飛行機から見ても判る」と話したが、ビデオを見返しても残念ながらどこからも腕は出ていなかった。そう感じたのなら、それはプレッシャーという目に見ない腕だったのだろう。
大宮の6本に対して甲府が放ったシュートは13本。直接、間接を合わせたFKは大宮の14に対して甲府は35。これだけの圧倒的な数字をゴールに結びつけることが出来なかった甲府。だからこそ今の位置にいるのだが、熱く膨れ上がった小瀬で勝てなかったことが残念でならない。広島は神戸と引き分けており、三つ巴に近い状況を作るチャンスを逃したことが悔しい。3チームが勝点1を積み上げただけで、その差が4のまま残る試合は「2」。広島、大宮の連敗と甲府の連勝しか希望が持てない状況に追い込まれた。今シーズンの連勝は3連勝が一度だけの甲府。相手の連敗以上に自分たちが連勝することの難しさは分かっている。しかし、シンプルで分かりやすい。残り2試合は勝利しかないという、ギリギリまで追い込まれたことで挑戦者のスイッチが完全に入るはず。そして、これまで大木監督の志向を受け入れるだけだった選手たちが、初めて押した自己主張というスイッチ。2つのスイッチがオンになった甲府。土壇場で飛び込んだ未体験ゾーンは、J1昇格のときのように、劇的な滑り込みで夢を繋ぐ出口に繋がっているのか。今は信じて戦うしかない。
以上
2007.11.19 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
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