3月23日(日) 2008 J2リーグ戦 第4節
広島 2 - 2 水戸 (16:04/広島ビ/6,677人)
得点者:55' 西野晃平(水戸)、67' 久保竜彦(広島)、79' 赤星貴文(水戸)、89' 森脇良太(広島)
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39分、高萩洋次郎退場。
54分、ストヤノフ退場。
広島は9人になった。しかも、55分に奪われた1点を追いかける展開である。
広島が負けたね。
客観的な立場なら、そう感じて当然だ。しかし、サッカーというスポーツは、ここから奇妙な運命を用意する。その要因は、広島の選手たちが噴き出した熱気だ。
中盤の森崎浩司・青山敏弘は、広いスペースを埋めるために全力で走った。盛田剛平と槙野智章は、水戸の2トップに泥臭く身体をぶつける。佐藤寿人は、時に最終ラインまで戻って守備に参加し、気持ちを伝え続けた。
一方の水戸は、2人の数的優位を保ちながら、広島の気迫の前に2点目が奪えない。後ろでゆっくりとパスを回して広島をじらすようなゲームコントロールができればいいのだが、異様な雰囲気に包まれた広島ビッグアーチが水戸の選手に圧力をかけ、彼らを追い込んだ。
67分、水戸が痛恨のミスを犯す。それはチーム全体が前がかりになりすぎ、2人だけになった最終ラインと中盤の間に大きなスペースを与えたことだ。そのスペースを、佐藤寿人が突く。相手のパスをカットした服部からパスを受け、ドリブルでボールを前に運ぶ。そして、その佐藤を追い越すランニングを見せた服部に、素晴らしいスルーパスを出した。
服部の視線の先には、久保竜彦。自分が欲しいボールの質とタイミングを熟知した服部のラストパスを、久保はいとおしむようにゴールネットに収めた。久保にとって2002年3月16日・対京都戦以来、約6年ぶりとなるビッグアーチゴール。竜巻のような大歓声が、スタジアムを揺らす。
だが、2人少ないという現実は消えない。水戸は技術のある赤星貴文を投入。ピッチに登場するや、強烈なシュートを放って広島を震撼させた若き司令塔を中心に、広島に圧力をかけた。さすがに運動量が落ちてきた広島は、クリアが精一杯に。そして一瞬、スキが生まれた。
79分、水戸DF小澤雄希が広島の縦パスをカット。西野晃平・堀健人とつなぎ、折り返しを赤星が詰めた。水戸、勝ち越し。深い霧で真っ白に染まった広島ビッグアーチの空気を、水戸サポーターの歓喜が切り裂いた。
さすがに、もう水戸が逃げ切るだろう。そういう空気が、一瞬流れた。
しかし、広島は諦めない。水戸のパスを佐藤寿人が必死に走って奪い、あわやというシーンをつくりだす。キャプテンの決意にあふれたプレーに、紫の戦士たちが、そしてサポーターが呼応して、再び広島が前に出る。その勢いが影響したのか、84分、水戸DF鈴木和裕が遅延行為をとられ、2度目の警告で退場。それでも水戸は1人多いのだが、流れは広島に傾き、水戸はパスをつなげない。ただ、水戸の集中は途切れず、広島に決定機は許さない。
4分のロスタイム。しかし、水戸の頑張りの前に、広島は3分間、シュートを撃てない。
森崎浩司、ドリブルで仕掛ける。クリア。スローインだ。この時、盛田剛平も槙野智章も、最前線にあがる。後ろにいるのは青山だけ。ボールを失えば、即失点である。
交代出場の森脇良太がボールを投げ入れる。森崎浩キープ。水戸のプレスをかいくぐり、縦パス。槙野だ。ジャンプ!ボールに触れない。
しかし、CKだ。
ユキッチが蹴ったボールはファーサイドへ。盛田が、体勢を崩しつつも中央へ落とす。
そこに、森脇がいた。広島屈指のファイターは、前に出る熱さを抑え、セカンドボールを狙っていた。
ワンバウンドしたボールを左足でトラップ。
ボールは顔に当たる。
しかし、彼は、ひるまない。
「強く振り切らないように」
そこだけ、森脇は意識した。
柔らかな弾道のシュートは、ネットに吸い込まれ、そしてゆっくりと落ちた。
サポーターに向かって、一目散に走るヒーロー。その横で、水戸の選手たちはガックリと突っ伏した。分け合った勝点1。しかし、まるで勝者と敗者のようなコントラストを描いて、この試合は終わった。
攻め込みながら得点できず、自らのミスからリズムを崩した前半の広島。2人の数的優位というアドバンテージの中、2度の勝ち越しを守りきれなかった後半の水戸。課題は共に、山ほどある。それは今後に活かされなければならない。
しかし、今はただ、激しい雨の中を全力で走り、戦った両チームの選手たちをねぎらいたい。苦しい状況の中でも大歓声で選手を鼓舞した広島サポーター、圧倒的なアウェイの雰囲気の中で声を枯らして選手を励ました水戸サポーターも、選手たちと同様に称えたい。
それが、このまれに見るドラマティックな試合を伝える者としての、最低限の礼儀だろう。
以上
2008.03.24 Reported by 中野和也
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