4月13日（日）J2 第7節 水戸 vs 熊本（13:00KICK OFF/笠松）
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　「これからが厳しい戦いになる」。西野晃平は自分に言い聞かせるようにこう口にした。水戸は開幕から5戦を1勝2分2敗という結果で来ているが、相手がすべて「J1経験組」だったことを考えると上々の数字と言っていいだろう。ただ、これまでの対戦はいわば『格上』を相手に胸を借りる形で思い切って戦うことができたが、これからはがっぷり四つの展開が予想される。そうした状況でいかに戦うかという難しさがつきまとってくる。「これまでは相手が受けに回ってくれたが、これからはそうではない。勢いに乗って出てくる相手に対して受けに回ってはいけない。難しいゲームになる」と木山隆之監督は厳しい表情を見せた。

　木山監督が気を引き締めるのは昇格チームの強さを知っているからでもある。自身も水戸がJ2に昇格した00年にプレーし、昇格チームながらも40試合中15もの勝利を挙げた経験を持つだけに、「Jに上がってきたチームはモチベーションが高い。だから、アグレッシブにいいサッカーができる。僕らの時も勢いがあって15勝できた」と振り返り、「熊本はモチベーションが高いし、フレッシュな戦いをしてくる。勢いに乗られると怖い」と警戒を強めた。

熊本は過去の昇格チーム同様ここまでの戦いではアグレッシブな戦いを展開し、力を存分に見せている。だが、それは決して勢いだけではない。チーム全体で前線から激しくプレスをかける意思が統一されており、試合ごとに精度は増している。また、上村健一や喜名哲裕など経験豊富なベテランがチームを引き締めていることで、安定した力を出せるようになっているのに加え、「経験も能力もある。気をつけないといけない」と木山監督が注意する中山悟志と高橋泰の2トップはJ2屈指の破壊力を持っており、「他のチームと力の差はない」（木山監督）。水戸にとって「楽な試合にならない」（木山監督）のは当然。「今までと同じ気持ちで戦わないといけない」と平松大志も強い口調で語った。

しかし、水戸は先輩の意地を見せなければならない。毎年着実な前進を進め、力を蓄えてきた。そして今年は木山監督の下で攻撃的なサッカーを披露。過去5戦では「J1経験組」に対して互角以上の戦いに持ち込んでおり、「ここまでの戦いに自信を持っていい。結果以上の力を証明できたと思う」と村松潤が言うように、過去最高のチーム力を見せていると言っていいだろう。

ただ、だからこそ課題が目に付いてしまう。やはり問題は90分の戦い方である。2戦連続でリードしながらも「変な追いつかれ方をしている」（村松）。それだけに先週はリードした展開などをイメージしたシチュエーション練習に時間を割き、課題克服に努めた。「リードした時にプレスに行けなくなったらラインを下げることも考えている」と平松。そうした柔軟さが出てくれば、チームとして大きな前進をすることは間違いない。

とはいえ、それは熊本も同じ。序盤から激しいプレスをかける一方、終盤に動きが落ちる傾向が見られる。水戸が8失点中6失点を60分以降に喫しているのに対し、熊本も8失点中4失点を60分以降に喫している。その反面、得点も水戸は6点中4点を、熊本は5点中4点を60分以降に決めている。ともに運動量が落ちる終盤に試合は動きそうだ。90分を通した試合運びが勝敗を分けることとなるだろう。

この試合において水戸は絶対に勝たなくてはいけない理由がある。先週、不祥事による社長交代という事態が起き、サポーターをはじめ、関係者の信頼を裏切ってしまった。そうした信頼を回復するためにはまずピッチで結果を出さないといけないのだ。「今回の件と現場は関係ないと言われますが、同じクラブの一員としてしっかり受け止めてピッチの上で返していきたい。雨降って地固まるにしたい」と木山監督は前を見つめ、「こうした状況の中でも選手たちは必死にやってくれている。本当にすごいなと思いましたよ。そうした気持ちを前面に出して戦って結果を出したい」と必勝を誓った。「こういう状況だから明るい話題を作りたい」。11日の練習に訪れた沼田邦郎新社長は語った。ホーム笠松でサポーターとともに勝利の喜びを分かち合う。それ以上のクラブ再建の第一歩はない。このクラブを応援してよかった…その思いをもう一度呼び起こさせる勝利を、サポーターは待っている。

以上

2008.04.12 Reported by 佐藤拓也