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【J2:第7節 広島 vs C大阪】レポート:流れを変えたオウンゴール。一人のミスを全員でカバーし、広島が強敵・C大阪を撃破。(08.04.14)

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4月13日(日) 2008 J2リーグ戦 第7節
広島 4 - 1 C大阪 (16:04/広島ビ/8,415人)
得点者:22' 高萩洋次郎(広島)、39' オウンゴ−ル(C大阪)、45' 佐藤寿人(広島)、59' 森脇良太(広島)、75' 佐藤寿人(広島)

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「交代させて欲しい。ここからいなくなってしまいたい」
生涯初のオウンゴールを喫した広島の若きDF槙野智章は、ピッチから逃げたかった。

相手のプレスがかかったわけでも、厳しいクロスに対応した結果でもなく、落ち着いてクリアすれば問題のないシーン。しかし、槙野がヘッドで外に出そうとしたボールは、GK木寺浩一の逆をつき、コロコロとゴールマウスの中に転がってしまった。あまりに決定的なミス。C大阪にボールを支配されながらも全員が必死で我慢し、その中で森崎浩司のドリブルから高萩洋次郎のゴールが生まれた。しかし先制点によって取り戻しかけた試合の流れを、自分のミスでぶった切ってしまった。槙野が逃げ出したくなったのも当然だろう。

しかしその時、チームメイトから槙野を否定するような言葉は出なかった。みんなが笑顔で「まだ同点や」と槙野に声をかけたのだ。「あの状況で、みんなが僕を笑わそうとしてくれた。それが気持ちの支えになりました」と槙野は振り返る。

「絶対に点をとる!」
オウンゴールから6分後、前半ロスタイム。敢然とオーバーラップした槙野は、強烈なシュートを放つ。GK相澤貴志の鋭い反応の前にゴールにはならなかったが、このシーンが他の選手たちの心も燃え立たす。

「これまでのマキだったら、ミスした後は声も出なくなり、プレーも消極的になっていました。それが今日は、気持ちをすぐに切り替えて、ミスを取り返そうという強い意志を感じました」(佐藤寿人)

ハーフタイム、森崎浩司が佐藤寿人にこう話しかける。
「失点してからムードが重い。みんなで盛り上げていくようにしよう」
その言葉を受け、チームリーダーが動く。全体に雰囲気を沸き立たせる一体感が生まれた。 

後半立ち上がり、C大阪のDFがボールを持ったところを、高萩が狙った。鋭いアタックでボールを奪うと、そこから服部・槙野・森崎浩・柏木と絡んでC大阪の守備陣を翻弄。服部の狙いすましたクロスに飛び込んだのは広島のエース。強烈なヘッドがネットを揺らした。

C大阪もジェルマーノを中心とするパス回しや、香川真司の突破を軸にゴールに迫るが、全員が守備に参加し、ボールを奪って速攻を仕掛ける広島の攻撃に圧され、次第にラインを下げざるを得なくなる。そこでできたスペースを広島は自在に使い、持ち前の速いパス回しでゴールに迫った。

59分、李漢宰のFKを森脇良太がヘッドで叩き込む。75分、柏木陽介が左サイドへ大きく展開し、服部がフリーでシュート。ここは相澤の素晴らしい飛び出しに止められるが、そのこぼれを狙っていたのは、生まれながらのストライカー・佐藤寿人。このゴールで、広島は勝負を決した。

思えば、前半はC大阪のゲームだった。前線からのプレスも効果的だったし、ジェルマーノが自在にボールをテンポよく両サイドに散らして、アウトサイドを起点に危険な攻撃を仕掛けた。ストヤノフを中心とした広島守備陣の踏ん張りの前に決定機をつかむまでにはいかないが、得点の香りは確かにあった。しかし、後半は状況が変わる。香川も柿谷曜一朗も「完敗」と語り、前田和哉も「相手の気持ちが上だった」と言うように、広島の特徴ばかりが出た試合となった。ショートパスをつなぎ、ロングパスで裏を狙い、サイドチェンジで相手を振り回す。スペースにどんどん選手が飛び出し、一つのボールに何人もがかかわって攻める広島のサッカーが、今年初めて出現した。一方のC大阪はガックリと運動量が落ち、プレーの連続性がなくなった。チームとしての一体感が消え、選手たちはピッチで立ち尽くしていた。そんな彼らに対し、サポーターから「気持ちを見せろ!」という叫び声が浴びせられていたのである。

「今週の練習で、しっかりとチームを立て直したい」と苦渋の表情を見せるレヴィークルピ監督。この厳しい状況から立ち直るには、選手個々がこの敗戦の意味を考えながら、もう一度奮起する他はない。個の力で決して広島と差があったわけではない。チームとして修正できる時間は、まだあるのだから。

それにしても、である。思えば、広島覚醒のきっかけは槙野のオウンゴールだった。このピンチをチャンスに変え、チームとしての一体感が得られたからこそ、後半の素晴らしさが生まれた。全員で攻守に関われる攻撃的サッカーを本当に思い出すことができたとしたら、この勝利は単なる「勝点3」以上の価値がある。それが本物かどうか、次の甲府戦で試されることになる。
「こういうサッカーが続けられるか。それが大切」
キャプテン・佐藤寿人の言葉を、全員で噛み締めたい。

以上

2008.04.14 Reported by 中野和也
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