5月6日(火) 2008 J2リーグ戦 第12節
広島 0 - 1 仙台 (16:04/広島ビ/13,116人)
得点者:89' 中原貴之(仙台)
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右サイドには、仙台・手倉森誠監督が「職人」と表現した、佐藤由紀彦がいた。彼は中央で構える中原貴之の動きを見据え、高精度のクロスを入れる。スピード、コース共に文句なし。中原は広島DF森脇良太のマークを外して前に飛び込み、ヘッドでネットに叩き込んだ。この時、ロスタイム3分のうち、2分が経過。あと1分、時間は残っていた。しかし、極度の疲労に身体を蝕まれていた広島の選手たちに、1点を跳ね返す力は残っていなかった。
だがサッカーでは、試合内容と結果とはしばしば真逆をいくものだ。手倉森監督は試合後の会見で「本当に勝ったのか、という気がする。これ以上、しんどい試合はなかった」と正直に語った。一方の広島・ペトロヴィッチ監督は「ある意味では、今季一番の内容だった。それだけに、この敗戦は痛い」と唇を噛む。両将の言葉が、この試合の全てだ。
立ち上がりから広島は、ほぼ一方的にボールを支配する。仙台は前線からプレスをかけようとするが、広島の多彩で緩急のあるボール回しの前に、仙台はラインを下げざるを得なくなる。広島は、ストヤノフと森崎和幸の二人が起点となって試合を創り、高萩洋次郎は佐藤寿人を追い越して積極的にゴール前に飛び込み、左サイドの服部公太は、バー直撃の決定的なシュートも放った。
前半、仙台の決定機はゼロ。一方、広島は少なく見積もっても5回もの決定機をつくった。シュートも広島は8本、仙台は3本。しかし、広島が圧倒していた前半に得点できなかったことが、後半のドラマにつながる。
後半は広島の右サイドの李漢宰が、シュートレンジまで駆け上がる。彼が放った3本のシュートは、いずれも決定的。しかし枠を外し、DFやGKの好守にあい、ゴールネットを揺らせない。一方の仙台も、後半は右サイドからカウンターを仕掛ける。57分に放った梁勇基のシュートは、ゴールライン上で広島GK木寺浩一がかき出す。65分、梁のFKに平瀬智行がヘッドで合わせたシュートはバーに弾かれた。だが仙台の攻撃は単発で、試合を支配していたのはやはり広島。手倉森監督は中原と佐藤を相次いで投入し、右サイドを強化して打開を図るも、ある時間帯までは大きな変化を与えられなかった。
78分、ペトロヴィッチ監督は平繁龍一を投入し、2トップに変更。その平繁が83分、槙野智章のクロスを受け、決定的なシュートを放つ。しかし、そのボールは広島サポーターの悲鳴と共に、ポストを直撃した。
時間の経過と共に、広島の選手たちを「11日間で4試合」という連戦の疲労が襲い、動きは落ちた。サポーターの声援と勝ちたいという強い意志でカバーしていたが、このポスト直撃シュートの直後、紫の戦士たちの足はピタリと止まった。判断スピードも鈍り、セカンドボールも拾えなくなった。
一方、杜の都の勇者たちは、前節に試合がなく1週間を休養と準備にあてることができた。そのアドバンテージが、ロスタイムを含めた残り10分で意味を持ち始める。広島の攻撃を耐え続けたことは、選手たちに勝利への意欲と集中力を与えた。戦いの様相は逆転し、ロスタイムにドラマが生まれる。それは「チャンスを逃し続けたものには、相応の罰が下る」というサッカーの法則に照らし合わせれば、必然の結果だった。
我慢が身を結んだ。仙台の勝利は、この一言に尽きる。その立役者は、8年目にしてリーグ戦初出場を果たしたGK萩原達郎だ。林卓人の発熱を受けて抜擢された萩原は、16分に放たれた佐藤寿人のシュートをセーブすると勢いにのり、広島の猛攻に身体を張った。その懸命な姿が仙台の選手たちを燃え上がらせ、勝利に向かって結束させたことが、最後の10分間、広島とのコンディション差を自らのメリットとできた最大の要因だろう。
「選手はよく戦ってくれた」というペトロヴィッチ監督の言葉どおり、広島の選手たちは、熱い戦いを見せてくれた。「ネガティブになる必要はない」と木寺浩一や森崎和幸も語っているように、内容もよかった。
ただ、忘れてはいけないのは、ホームで仙台に敗れたという現実。本当の強さを持つチームは、コンディションに差があったとしても、勝点を積み重ねる術を持っている。そういうしたたかさが、J1復帰には絶対に必要なことだ。
東北楽天イーグルス野村克也監督の「負けに不思議の負けなし」という言葉は、サッカーにも通じる。敗因をコンディションや運に求めることなく、広島の選手個々が冷静に試合を分析し、この日の轍を二度と踏まないこと。それが、この「勝点0」を無駄にしない唯一の方法だと考える。
以上
2008.05.07 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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