5月11日（日）J2 第13節 熊本 vs 岐阜（16:00KICK OFF/熊本）
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　前節、身近な存在の先輩・福岡を下し、熊本は第１クールの九州ダービーを１勝１分で終えた。サポーター同士の声援と、そこに込められた『負けたくない』という思いがぶつかりあって醸し出された独特の雰囲気は、まさしくダービーマッチと呼ぶにふさわしい白熱したものだった。だが、福岡や鳥栖との因縁は、むしろこれから積み上げていくもの。その意味では、次節の岐阜との一戦の方が、熊本にとって九州ダービー以上に“負けたくないカード”だと言わざるを得ない。

「もちろん、一緒にJリーグに上がってきたチームですし、ライバルのひとつだから勝ちにこだわりたいと思いますけど…、周りがそういう風に見ているだけで、特別に意識しているわけではないですよ。現時点では相手のことを意識してサッカーをする段階ではなくて、チームとして目指すサッカーをいかにやれるかがテーマですから」。
　池谷友良監督はあっさりとそう話すが、見ている側の我々からすれば、両チームの間には、因縁が確かにある。

　ほぼちょうど１年前の５月20日、JFL前期第12節でホームの大津町運動公園球技場にFC岐阜を迎えた熊本（当時ロッソ熊本）は、セットプレーからの一発を浴びて敗れた。それから３ヶ月後、後期第8節の対戦も先制しながらPKを取られてドローに持ち込まれ、過去2回の対戦では岐阜に負け越している。つまり熊本は、岐阜に勝たないまま、J２の舞台にたどり着いたことになる。
　それだけではない。前期の対戦ではDF上村健一、矢野大輔、MF小森田友明の３人が累積４枚目となる警告を受け次節が出場停止となり、後期の対戦でも再び上村が累積４枚目となる警告を受けた他、DF有村光史が退場、さらに後半から出場したMF山口武士が５分間で２枚の警告を受けて退場となった。一方の岐阜も２試合とも退場者を出すなど、過去の対戦では共に遺恨を残しているのだ。

　だからこそ、お互いに上のステージに上がったチーム同士の“初対戦”として、フェアに、クリーンに戦ってスッキリさせてほしいという思いがある。

　熊本は前節、「今までやって来た事に自信を持って」（上村）臨んだ結果、アウェイでの初勝利を手に入れた。前々から池谷監督も話している通り、１シーズンを通して、それをやりきれるかという点がひとつのポイントになる。昨シーズンの2度の対戦を経験した選手は殆ど残っていることもあり、大敗を受けて臨んだ福岡戦以上に、メンタルは充実しているはずだ。

　対する岐阜は、ここへ来て開幕から続いた好調さが少し陰りを見せ始め、愛媛、鳥栖に無得点で連敗。とはいえ、山形や福岡を相手に見せた爆発力はやはり脅威で、左サイドの高木和正、ベテランボランチの梅田高志、そして佐川急便SC（これも因縁の相手だ）から今季加入した嶋田正吾など、中盤にも自由を与えると厄介なプレーヤーが揃っている。

　熊本としては、イマジネーション溢れるプレーでチャンスを作り出す片桐淳至、そして得点力のある片山真人への対応が鍵。特に片桐は、引いて受けたり外に開いたりと、シュートよりもその前のプレーで局面を変える力を持っているため、彼を自由にさせない、あるいはボールを受ける前の段階で出どころを潰して孤立させることが、岐阜の攻撃を凌ぐ上で必要になる。
　深津康太、菊池完、小峯隆幸ら守備陣も侮れないが、福岡戦での小森田のゴールのように遅れて入る動きや左右の揺さぶりに対しては脆さもあり、フィニッシュに持ち込むまでの工夫次第でチャンスを増やす事ができるだろう。

　第１クールも終盤、J１経験のあるチームとのゴールデンウィークの連戦を２勝２敗の五分で乗り切ってヤマを越えたようにも見えるが、実際にはこの試合が一番の関門だと見る。第２クールの対戦がちょうど１ヶ月後に控えており、ここは是が非でも結果が欲しいところ。
　全員で取りに行こう。１年前、ピッチの上に忘れてきた、ひとつめの勝点３を。

以上

2008.05.09 Reported by 井芹貴志