6月25日(水) 2008 J2リーグ戦 第22節
広島 2 - 1 徳島 (19:04/広島ビ/4,622人)
得点者:18' 米田兼一郎(徳島)、26' 高萩洋次郎(広島)、31' 佐藤寿人(広島)
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「後ろから攻撃を仕掛け、局面で数的優位をつくる」
これが、守備的な相手を崩すためにペトロヴィッチ監督が基本とする処方箋だ。しかしそれを行うためには、選手の能力に加え、周囲の相互理解も必要とする。
ドリブルを武器とする森脇良太や槙野智章、高いキープ力と精度抜群のパスで攻撃の起点となれるストヤノフや盛田剛平らは、周囲との連係にも問題ない。ただ、移籍したばかりの結城耕造は、オシム元千葉監督直伝とも言うべきタイミングのいいオーバーラップを見せてきたが、さすがに周囲との連係を合わせる時間もない。また彼については「強い守備で力を発揮するタイプ」だ、とペトロヴィッチ監督は評価していた。怪我のため、森脇や盛田が使えない状況、さらに徳島が守備的に闘ってくると読んだ指揮官は、後ろから攻撃を仕掛ける人材をどうしても最終ラインに置きたい、と考え、決断する。
ペトロヴィッチ監督は前日練習の前、森崎和幸を個別に呼び、状況を説明して右ストッパーでの起用を告げた。さらに森崎浩司も呼んで、ボランチへの配置転換を要請したのである。
チーム構成上に問題が起きると、ペトロヴィッチ監督は森崎兄弟に対して本来のポジションとは違う役割を与える場合が多い。それは彼らの技術とスキル、戦術理解能力の高さに対して、絶対的な信頼を寄せている証拠だ。実際、二人とも新しいポジションは何度も経験ずみである。
ただ、この広島の新布陣は、決して機能したとは言いがたい。
ペトロヴィッチ監督は試合後、「《ボランチのカズがいない》ことが、我々にとって足りなかったこと」と言ったが、まさにその通り。森崎和のように、最終ラインの前でバランスをとり、3バックを次々と攻撃参加させ、さらに試合の流れを読んでプレーの緩急をつけるタイプは、現状のチームにはいない。それがチームバランスにズレを生んだ。
18分、それまで一方的に押されていた徳島が見事な攻撃を組み立て、米田兼一郎の素晴らしいミドルシュートが決まって、広島は今季初めて前半にリードを許す。この失点も広島側から見れば、全体が前がかりになりすぎて中盤にスペースを与えてしまい、そこを米田と玉乃淳に使われてしまったことが要因。これまでの試合でそのスペースを埋めてきた森崎和は、この時相手の1トップ=菅原康太のマークについていた。
だが、確かにバランスはよくなかったものの、「アタマの中のクオリティが非常に高い」(徳島・美濃部監督)広島の攻撃は、徳島の守備を美しいパスワークで引き裂いた。その原動力は、「どんどん前に行け」と森崎浩に背中を押された青山敏弘の思い切りの良さだ。26分、青山はペナルティエリアの中まで飛び込み、そこでパスを受けて相手を引きつけて、走ってきた高萩洋次郎に決定的なパス。同点弾を演出すると、31分にはドリブルで徳島DFを引き出し、美しいスルーパスを供給して佐藤寿人の今季10得点目をアシストした。対徳島戦では2試合で4アシスト。「相性がいいのかも」という青山の言葉を実証した。
後半、ペトロヴィッチ監督は右ウイングバックに槙野智章をあげ、最終ラインを右から結城・ストヤノフ・森崎和という布陣に。前半は、ストヤノフと槙野が同時にあがってしまい、最終ラインに森崎和が一人残って菅原と1対1で対応する場面も少なくなかったが、後半は結城が守備を固め、ストヤノフもオーバーラップを自重。そのため、森崎和が前でバランスをとるシーンが増え、青山や森崎浩が前に飛び出す頻度も増加。得点こそ奪えなかったが多くの決定機の創出し、試合終盤の徳島の反撃時にも、決定機を創らせていない。バランスは後半の方が間違いなくよかった。
徳島も、ラインを上下にコントロールして、広島の攻撃に立ち向かった。しかし、失点シーンはいずれも広島のパスワークに翻弄され、結果として高萩や佐藤寿をフリーにしてしまっている。全員がファイトし、最後まであきらめない闘いは感動的だったが、「広島と徳島には、大きな差が存在する」(美濃部監督)のも厳然たる事実。大切なのは「その差を埋めるべく、続けてやっていく」という指揮官の言葉を、全員が胸に刻みこむことだろう。
広島の勝点は48、2位山形との勝点差を10に広げた。次節は、その山形との直接対決。「連戦や移動の疲れはあるが、それは言い訳にはならない」が最近の指揮官の口癖だが、ケガ人が多い現状もあり、チーム状態は万全ではない。ただ一方で、青山や高萩など、若い選手が勢いに乗っていることはポジティブな材料。徳島戦で露呈した課題を修正し、若さが生み出す勢いによって、広島をさらに加速させること。それが「J1復帰」という長い道のりを走りきるための、絶対的必要条件である。
以上
2008.06.26 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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